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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第七章 ワーズ(二)
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第七章 ワーズ(二)(18)

十八


 ユキはカウンターの椅子にへなへなと座り込んだ。万三郎と杏児はそんなユキを両側から気遣いながら言う。


「ユキ、君すごいなあ。勇気ある行動だったよ」


「ああ。【be子】会長の危機を救ったんだもんな」


 【so太】がそのユキや万三郎たちを交互に見ながら言った。


「驚いた。あんたたち、ETだったんだ」


 【do麻呂】は、その【so太】の前に立って、着崩れたスーツの上着をただしてやる。


「【so太】、さっきはありがとう、助けてくれて」


 【so太】は頭を掻く。


「いや、せっかく数年ぶりに【do麻呂】と【be子】のよりが戻りそうなのに、邪魔立てする奴は許せなかったんだよ」


 今度は【do麻呂】が【be子】の方をちらりと見て頭を掻いた。その時、自分がかぶっている黄色い烏帽子に気付き、【do麻呂】はそれを外した。


【be子】は、【bad!】たちがからんでくる前に【do麻呂】との間に起こっていた会話を思い出したようで、彼に向かってどういう態度を取ればよいのか分からず、その戸惑いを誤魔化すように【so太】の方を向いて言った。


「そ、それにしても、ザックリ派手に刺したわね」


「まあね。だけど見かけほど深くは刺さらないもんだって」


 そう答えた【so太】に付け加えるように、杏児が【be子】に笑いかける。


「【be子】会長は体験的にそれを知ってるはずですよね、【do麻呂】先生とのバトルで」

 万三郎とユキが思わず顔を見合わせ、ユキが後ろから杏児のスーツの裾を軽く引っ張って声をひそめて杏児を諌める。


「ちょっと杏児、余計なことを……」


「なんだ、ひょっとして【be子】から、昔のケンカの話を?」


 【do麻呂】はちょっと驚いた風だったが、【be子】に向き直って言った。


「あのときの痛みはまだ癒えてないよ」


「え?」


 顔を上げた【be子】に【do麻呂】は寂しそうに笑いかけた。


「いや、心の痛みのことだ。だって、あの時から今日まで、僕の気持ちはずっと変わっていないから」


「だったら!」


「だったらなぜあの日、離れていったのよ! と、君は訳が分からず、僕を恨んでるんだろう?」


 【be子】は下唇を噛んで上目づかいに【do麻呂】を睨んだ。


「【be子】、聞いてほしい。君も僕も勘違いしていたんだ」


「勘違い?」


「君には、もうひとつの人格があるんだ。君は、僕と同じ、助動詞でもあるんだ」


 【be子】は睨んだ目を次に大きく見開いて、それから悲しそうに目を伏せて頭を横に振った。


「それは……ないわ。あたしの後ろには、動詞の原形は来ないもの」


 すると【do麻呂】は、【be子】の両肩を抱いて言い聞かせるように訴えた。


「いや、助動詞の君は、ただの助動詞じゃない。現在分詞や過去分詞の前に座ることができる、『特別な』助動詞なんだ(1)」


「……」


「進行形、受け身形は、君じゃなければ完成しない。進行形が君の役割になったから、僕は君への対抗意識もあって、受け身形の役割を狙っていた。僕は若くて何も知らなかったから、自分は何でもできると無邪気に信じられたんだ。そうしたら、総会の前夜、もう引退していた親父が僕に言ったんだ。


「【do麻呂】、お前、明日の総会で受け身形制作委員会の委員に立候補しようと思ってるだろう」


「えっ、親父、どうしてそれを?」


「我がせがれの考えることなど、おおよそ見当がつく。いいか【do麻呂】、よく聞け。お前にはあの仕事はできん。立候補はあきらめろ」


「な、なんでだよ、そりゃ僕はまだ若いよ。だけど、そんなの、やってみなけりゃ分かんないだろ!」


「いや、そうじゃない。お前の能力の問題じゃないんだ。今から俺が大事なことを話す」

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