第七章 ワーズ(二)(16)
十六
「もちろん、君を信じてる」
【sinister】はおどけた調子で【do麻呂】のセリフを真似した。そして、「やさ男が。調子こいてんじゃねえぞ!」と言って、【evil】に後ろから羽交い絞めにされて身動きの取れない【do麻呂】になぐりかかろうとした。
「あっ! あいたたた……」
次の瞬間、【sinister】は脚をかかえて床に転がった。【sinister】と【do麻呂】の間に素早く割り込んできたのは、【so太】だ。彼は一人、焼き鳥を喰っては串立てに立てていた串の束を持って、ピンチの同僚ワーズたちにそっと近づいてきていた。そして【sinister】が【do麻呂】になぐりかかるタイミングで、姿勢を低くして【sinister】にタックルするように飛び込み、串の束を、奴の踏み込んだ太ももに思いっ切り突き立てたのだ。串の束は、脚に刺さりこそしなかったが、奴のズボンの下では、少なからず血がにじんでいることだろう。
「さっきのお返しだ」
「野郎!」
【do麻呂】の拘束を解いて、【evil】が【so太】の襟首を後ろから引っつかまえた。
拘束を解かれた【do麻呂】は、数歩、前に駆けて、勢いでサングラスの男に体当たりして、突き飛ばそうとした。だが、男は素早い身のこなしで【do麻呂】の体当たりをひらりとかわす。バランスを崩した【do麻呂】を万三郎が抱き留めた。
「待って!」
本能的に次の反撃アクションに移ろうとする男の前に【be子】が真っ直ぐ手を横に伸ばし、手のひらを広げる。
「うっ……」
サングラスの男の動きが停止する。同時に、【so太】は、襟にかかった【evil】の手を振りほどいた。
【be子】が手のひらを広げたまま、男から目をそらさずに言った。
「杏ちゃん、万ちゃん、ユキちゃん。【do麻呂】と私が一緒に働ける、数少ないケースが、今よ!」
「はい?」
【be子】がまさかこんなところでさっきの自分の質問に答えるとは予想しておらず、杏児はきょとんとした。
【be子】のセリフを聞くと、黄色い烏帽子をかぶった【do麻呂】も【so太】も、サングラスの男の方に向いて並び立った。そして【do麻呂】が、次に【be子】が、さらに【so太】が順番に口を開いた。
“Don’t be so …”
最後は三人が口を揃えた。
“bad!”
【do麻呂】の扇がバサリと全開し、ポーズが決まって「日本一!」の文字が映えた。




