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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第七章 ワーズ(二)
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第七章 ワーズ(二)(13)

十三


 次第に店は平穏を取り戻していった。テーブルによっては笑い声が出るなど、何事もなかったように喧騒が戻りつつある。


 荒くれ男たちは時折り会話を交わしながら飲食をしていたが、彼らの話す内容はその喧騒に埋没して万三郎たちには聞き取れなかった。


 口からの血が止まった【pity】は、今夜はケチがついたからと、心配してくれる【babester】を伴って先に店から帰って行ったようだ。一方、【evil】に胸ぐらをつかまれた【so太】は、そそくさと逃げるように店を出るのが嫌らしく、意地になってテーブルにひとり残って、もくもくと焼鳥の串をしごき、酒をあおっている。


「五郎八ちゃんは、まだ?」


 丸めた背中が幾分まっすぐになってきた【be子】が、万三郎に訊く。


「はい、伝票は持って行きましたけど、計算する時間がまだないみたいですね。このお店はKCJ指定店じゃないんですか」


「違うわ。だからこそ昔は【do麻呂】と密会できる店だったの。KCJ指定の店では、ワーズIDから、誰といたかが人事部にばれてしまうでしょ」


 杏児が、このテーブルも気分を一新しようと、わざとポンと手を打って【be子】の関心を引いた。


「そうそう、思い出した。【be子】会長、さっき話が途中で止まっていました。会計が済むまでの間に教えてください。どんな時に【do麻呂】先生と一緒に仕事ができるのですか」


 【be子】が口元に人差し指をあてて杏児の方を向く。


 その時、五郎八が、一人で入店してきた新しい客に声をかけた。


「いらっしゃいませ。あっ、【do麻呂】さん!」


「【do麻呂】さんだって?」


 杏児が思わず驚きの声を発する。


【be子】はぎくりとして入口の方を向き、入口に立つ【do麻呂】と目が合った。【do麻呂】は、頭に黄色い烏帽子をかぶっている。昼間は黒だったが、色違いを常に携帯しているのだろうか。酔っているようだったが、何か、思いつめたような深刻な表情だ。


「ド、【don’t】……どうして?」


 【be子】は驚いた顔でつぶやく。


 驚いたのは、万三郎たち三人のETも同じだったし、五郎八も思わず入口に駆け寄って行って、【do麻呂】に伝える。


「【be子】さん、あそこに来られていますよ」


「ああ」


 【do麻呂】は、思いつめた表情のまま、つかつかとカウンター席の【be子】に歩み寄った。カウンター席もいっぱいなので、ユキと杏児は、自分たちが【do麻呂】のために席を空けなければと、席を立とうとする。それを【do麻呂】は手で制して、【be子】の前まで来て、立ったまま【be子】に言った。

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