表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第七章 ワーズ(二)
106/368

第七章 ワーズ(二)(9)


 ユキが共感してくれて嬉しかったのか、【be子】は、手元の竹筒に束になって入っていた、自分たちが食べ終えた焼鳥の串から一本引き出すと、串の根元を軽く指でつまんだ。そしてユキの手前にいる杏児に向け、手首のスナップを効かせて、串をクイッと前後に動かす素振りをした。


「彼も酔ってたからそんな風に言ったのかも知れないんだけどね。でも、売り言葉に買い言葉、ついにあたしもカッとなってしまって、串をプスリと、こう……」


「『プスリと』って、刺したんですか!」


 串先を向けられた杏児が素っ頓狂な声を上げる。


「あたしも、仕返しに刺されたわよ」


 【be子】は笑いながら、髪の上から自分の頬に串を刺すようなジェスチャーをした。

「ほ、本気で?」


 【be子】は笑いながら、そんな馬鹿な、と手を振った。


「ふふふ、昔の話よ。やめておくわ」


 しかし、杏児はユキを振り返って感慨深げにつぶやいた。


「なんか、誰かさんと同じ匂いを感じるなあ」


「な、何よ!」


 ユキは、眉を吊り上げて杏児に喰ってかかった。


「終わったことを蒸し返すんなら、割り箸ででもペンででも、また刺すわよ」


 ユキはそう言って、再び手にしていたペンを顔の横に立てて握って見せた。依然眉は上がっていたが、いくばくかの笑顔が混じっている。


「やめてくれ。僕にとっては、嘘が上手い女より、刺す女の方が怖い」


 【be子】とユキは声を揃えて笑った。


 反対側から万三郎が訊く。


「じゃあ、もう何年も経った今でも【do麻呂】先生は【be子】会長に嫉妬を?」


 【be子】はため息をついた。


「分からない。今日のあの態度。どうなんだろう。今もまだ、そうなのかしら……。もし、そうだったら、あたし、どうしたらいいのか、分からない……」


 そうつぶやいて、【be子】は寂しそうに微笑みながらカウンターに頬杖をついた。


 万三郎は、そんな【be子】越しに杏児やユキと顔を見合わせた。


――【be子】会長、まだ【do麻呂】先生のことを……。


 昼間の派手な振舞いからはおおよそ想像がつかない、【be子】のウブで一途な側面に触れて、三人は痛感していた。


――ワーズたちを深く知るには、しっかり語り合うことが必要なんだ……。


 そこへ五郎八がビールを持ってきた。


「【be子】さん、おまちどおさま」


「あ、五郎八ちゃん、ありがと」


 【be子】は表情から寂しさを消しきれないまま、五郎八を振り返って礼を言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ