主人公など害虫にすぎん
「諸君、ついに作戦まで一週間を切った、もう一度作戦確認のため説明する。この機を逃せば、我々の未来、いやこの地域に未来はないのだ!」
俺は集まってもらった我々、「次元主人公抹殺部隊」25機を前に大声で告げた。
俺たちにこの地域の未来がかかっているというプレッシャーもあったが、ようやくこの地域の不安の種、いや、この地域ごと汚す爆弾を排除できると思うと胸が高鳴った。
「ジョック隊長、時間です。作戦の説明、お願いします」
「我々のミッションはターゲット一名のみの殺害だ、他の者に一切の被害を出してはならない。たとえ我々の任務が隠密であっても、ターゲットの関係者、および一般人に目撃されたからといって一切の手出しも許されない。
これが最重要だ。これだけは必ず守ってもらう。」
我々の任務は絶対隠密行動、だが今回のターゲットが相手ではそううまくはいかないはずだ。
「次にターゲットの殺害方法だがメインは銃による狙撃とする。だが狙撃を行う場合はターゲットの付近に我々の部隊の者から一般人まで近くにいないことを確認してからでないと使用は認められない。」
最初に説明した通りターゲット以外には絶対に被害を出してはいけない。
「この作戦は最長三日かけて行う。初日は12時から3時までの夜中、ターゲットが自宅で就寝中のところをα部隊が狙撃任務にあたる。ここで一発で決られるのが最も理想だ。だが初日の任務が失敗した場合、二日目にβ部隊がターゲットの帰宅時の五時から七時にかけての夕方、ターゲット付近に誰もいないことを確認後ターゲットを誘拐する。
だがこの時、関係者、および一般人に目撃された場合、即刻殺害に当たれ。三日目は間違いなく警戒されてしまうだろう。ここまで来ればほぼ任務失敗だ、小細工は一切通用しないだろう。だから俺が出る。」
この発言にこの場の者が全員喉を鳴らして息をのんだことだろう。
「隊長、申し訳ありませんが作戦会議初日、免許を取りに行っていて欠席してしまった者です。資料によればこのターゲットは普通の学生のようですしこの地域に害を出すほどの人物だとは思えないのですが」
「免許は取れたのか?」
「無事にとることができ、新車を買わせていただきました。」
「それはよかった。ふざけたことで休んだ罰としてお前の新車は俺のサンドバッグにする。質問の答えだがこいつは___
___主人公だ。」
「しゅ……じんこう……」
質問した隊員も予想すらしていなかったあまりの大物ターゲットに足を震わした。
「こいつの名は雨伊 空喜、能力バトル物の主人公だ。ヒロイン予定と思われる女一名に加え、今後仲間になると思われる女が合計六名というふざけた関係に加え、
ラッキースケベ属性を持った最強能力者になる予定の糞野郎だ。我々の50回目のターゲットとして最高だろ?」
「ハーレムパーティーに加えて、ラッキースケベ属性だと……?」
周りがざわつき始め、中には発狂するものさえいた。
「今のこいつの能力は肘と顎をつけられる人間として周りからちやほやされているような奴だが十日後、「付近にいる人間の感情を操る能力」に目覚めるはずだ、つまりこの作戦期間中に仕留められれば事なきを得るのだが、
問題はこの糞野郎には能力者の幼馴染がいる。三日目、俺が出撃しなければならないことになったらこの糞女は気分次第で殺す予定だ。」
「え?た、隊長、被害はターゲット以外ださないという話では?」
「ほかに質問は?」
今すぐにでも殺しに行きたいというような空気の中、一本だけまっすぐに手が伸びていた。
「ん?なんだグラント隊員?」
「β部隊司令官のグラントです。この学生もそうですが、なぜ主人公を殺さねばならないのか自分には理解できません。」
「何……?」
俺はこの生意気な隊員の言ったことに聴覚機能の故障を疑った。
「この者たちはこの地域に対して一切害を犯していません、なのになぜ?」
「グラント君よぉ、君は講義中は寝ていたのか?主人公はどれだけ害がある存在かは12時間かけて講義で説明してくれた教官さんがいるだろ」
「講義は理解できませんでした」
「じゃあもう一回俺が説明してやろうか!主人公というやつの存在がどれだけこの世に不必要かを!!」
「お願いします!」
俺がこれだけの大声を出してもひるまないやつがいるとはな。正直こいつは顔すら覚えていないやつだったが意外と度胸があって使えるやつかもしれない。
「いいだろう……説明してやる。」
脳の血管がぶちぎれそうなほどイラついたが、使えそうな奴は作戦当日までに使えるやつにしておくに越したことはない。
「主人公は様々な次元に存在する、大きいくくりにするのであればバトル物と日常ものだ。他にも探偵、刑事ものやカードバトル系のものまで幅広い次元に主人公は存在する。
作中こいつらはまるで英雄のように扱われている。だがよく見てみろ。こいつらが存在する場所では必ず大きい事件がある。」
「それを解決するから英雄になれるんじゃないですか!主人公そのものが事件を起こしているわけでは_」
「その考えが甘いんだよ、グラント君。よく見てみろと言っただろう、こいつらは確かに解決している、だが主人公たちが見ているテレビ番組なんかにはその主人公が存在していない地域で事件があった
などというニュースは一切やっていないんだよ。テレビをつければ、すべて主人公がかかわっている事件ばかり。テレビにならないような身の回りのちんけな事件しか解決できない主人公はテレビをつけない、これが証拠だ」
「主人公がいなければ、事件は起きない……と?」
「そうだ、我々が殺害しなくていい主人公などはもはや健全なスポーツばかりやっている脳みそがカビた連中だけだ。」
「であれば、日常系の主人公は関係ないじゃないですか!」
「ああそうだ、その主人公が女の子であればな」
「なっ!?」
「主人公が女の子であり、付近にも女の子しかいないのであれば我々の管轄外だ。だが男が主人公、もしくは女主人公の付近に男が存在するのであればその男主人公、男重要キャラは殺害しなければならない。」
「なぜ!?」
「ESCORTTARGET」に触れるからだ」
我々にとってなんとしても守らなければならないのが最重要護衛対象だ。これはこの部隊に属しているものならだれでも知っている。
「やつらは転ぶとき、友人に押されたとき、女の子をかばうとき、高確率でESCORTTARGET を汚す! これは必ず阻止しなければならない!それはもちろん知っているな?」
「……はい」
「ならば簡単だろ?殺すだけだよ」
「しかし!なぜそこまで!」
「わからないのか!!!」
「ッ!」
「俺以外の幸せになる男すべてが憎いからだよ」
俺はグラントにそっとそうささやいた。
「よし!各自!明日の訓練に向け今日は解散!」
俺は立ちすくむグラントの肩に手を乗せ
「お前には罰をやらねばならない、いや……訓練か」
そのままグラント隊員はほかの隊員に連れていかれた。
俺の指示に従いグラントは三日間、心を汚すために笑いなし、感動なしの鬱ゲーを睡眠もとらず三日間やり続けさせられた。この拷問のかいもあり
グラントはまるで別人のようなゲス隊員となり作戦に向けて忠実に訓練に励む立派な司令官となっていた。
作戦結構までが楽しみだ。
なんだかんだで主人公ってみんな憎い




