一通のメール
掲載日:2014/12/28
『誕生日おめでとう』
午前零時きっかりに届いた、一通のメール。
歳を重ねる毎に希薄になっていく、誕生日の特別感。
もう何年も、誕生日が待ち遠しいと思ったことも無ければ、何か特別な事をするわけでもない。平凡な毎日と何ら変わりの無い、死ぬまで続く、色褪せた灰色の日常。
でも彼女のメールを見た時、僕の世界は、いつからか失っていた色彩を取り戻した。
僕の誕生日なんて、覚えていないと思っていた。
いつもは早く寝てしまう彼女が、睡魔と闘いながら零時を待つ姿。
想像しただけで、たまらなくいとおしかった。
傍にいたなら抱きしめて、ありったけの『ありがとう』を伝えたい。
だけど、地獄の底で生きる僕は、空を見上げて彼女を想うだけ。
たった一通のメールは、時に人を幸せにさせる。
平凡な一日を特別な日に変えてくれる。
過ぎ行く時間の中、そのメールは今でも色褪せない。
会えなくなった今でも、僕の心に刻まれた彼女からのメールは、こう締めくくられていた。
『今日が貴方にとって良い日になりますように――』




