第一章:夢-side:ユーダイクス—天使の都
天使の都とへと、魔法使いは踏み出します。
第一章:夢-side:ユーダイクス—天使の都1
一歩を家を出て、ユーダクスは空を見上げた。
視線の先に広がる空ーーーそこは、通勤・通学の天使で溢れていた。
そんな光景は、珍しいと言えば、珍しいものだ。
空を飛ぶこと自体、ユーダイクス自身にも可能だ。
しかし、それはアナログ世代の魔術であり、空間転移が普及した今となっては、空を飛ぶことは児戯の一端でしかない・・・・・というのが、ユーダイクスの世界の常識。しかし、この次元に限って言えば、それは通用しないのだろうと、ユーダイクスは思う。
「・・・・・本当に、ついてくるんですか?」
かけられた声に導かれ、ユーダイクスは視線を空から地面に下ろした。
そこには、昨晩自分が夜這をかけたーーーーわけでは決して無いのだが、結果的にそうなってしまった対象の少女が心底嫌そうな顔でユーダイクスを見つめている。
「・・・・・・本当に申し訳ありませんが、あなたについて行きたいです。ダメなら、多分、僕は死にます」
情けない声を上げ、ユーダイクスはウルウルと泣き落としにかかった。
これに対し、少女は再びをため息を吐く。そこには、多少の困惑と同情が見て取れた。
「学校までは、私の一存であなたとご一緒出来ます。けれど、学校の敷地内となると、先生から許可を頂かなければなりません・・・・・・・もし、先生があなたの訪問を拒んだ場合、あなたには学校の門で一日中、私の帰宅をお待ち頂くことになります。それでも、よろしいですね?」
凛とした、少女ーーーーソフィアの声に、ユーダクスは「もちろん」と応える。
それから、しばしの逡巡。時にすれば、一刻も無かったはずだ。
それだけの時間をかけ、ソフィアは踵を返し、学校へと一歩を踏み出したのだ。
見知らぬ少年ーーーーー異世界から来たと主張する、正体不明の「モノ」を引きつれて。
※
第一章:夢-side:ソフィア—異世界の少年1
自分の後ろを申し訳なさそうにトボトボと歩く少年ーーーユーダイクスの存在は、ソフィアにとっては、混沌・混乱のそれでしかなかった。
なにぶん、彼と初めて合ったのは前日の昨晩で、しかも、自分のベットの中だ。
何の脈絡も無く少年はソフィアのベットに現れ、彼女のマウントを取った。その後は、本当に地獄絵図だった。自分と母親が泣きじゃくる中、怒れる父親が一方的に少年をボコボコにするという・・・・・・・・それだけでもお腹いっぱいなのに、さらには。
(さらには、あの人は空を渡った。「飛ぶ」のでは無く、「渡った」んだ。それは、王族にのみ許された秘技のはずなのに・・・・・・・それを、あの人は「無翼」で行った)
「空を飛ぶ」のでは無く、「空を渡る」という、秘技。
8対の翼に至ったモノだけが成し得る、空間跳躍という奇跡。それを、少年は目の前でやってのけたのだ。しかも、一平民の拳を避けるためだけに。
(空渡りを、あの人が行ったことは確かだし・・・・・でも、翼を展開していなかった。なのに、あの人は空を渡った・・・・・・・それは、あの人が異世界の人だから?)
あり得ない秘技を、あり得ない状況で見せつけた少年。
空間転移を行えるのは基本的に王族のみと言われているため、彼を殴った父親は当初、血の気が失せて死にそうだった。とうより、自分はどうなっても良いから家族だけはと懇願までしていた。これに対し少年は、殴られても仕方がないことをしたのは自分ですと、返しに頭を下げる始末。
そこからは、頭の下げ合い。
結局、夜が開けるまで父親と少年は、私と母そっちのけで頭を下げ合っていたわけで・・・・・・そんな現状で少年を理解しろという方が余程異常だと、ソフィアは思う。
次回は、嘘つきと王子様のお話