プロローグ
二度目です。
link-32番目の物語
世界には、ルール(秩序)がある。
魔法使いであるアリスは、そのことを十二分に理解していた。
そして、世界というやつは存外に堅物であり、僅かな誤差すらも許さない厳格な執行者でもあるーーーーということも。
・・・・・・それらを知った上で、彼女はそれらを蔑ろにすることに決めたのだ。その結果が、詐欺だ。嘘をつくこと。あるいは、騙すこと。それが、矮小な彼女の、ささやかな抵抗であり、誰かさんとの大切な絆だったのである。
世界には、秩序がある。
魔法使いであるユーダイクスは、そのことを本の僅かに感じていた。
そして、世界というやつは思ったとおりの堅物であり、僅かな誤差にもケチをつける器の小さいモノであるーーーーということも。
・・・・・・そんな風に思いながらも、彼はそれらに従うことに不満がなかった。その結果が、箱庭だ。庭園である。あるいは、囲うこと。それが、強大な彼の、傲慢な容赦であり、誰かさんとの大切な絆だったのである。
世界には、現実がある。
天使の王族であるオルロは、それは秩序が強いたものだと理解していた。そして、それらは往々にして重苦しく、味気ないものであることも。
・・・・・・それらを知った上で、彼はそれらに従うことに不満がなかった。その結果が、12本の翼だ。6対の力である。あるいは、引き継ぐこと。それが、責を担う彼の、精一杯の誠実であり、誰ともなく誓った信念だったのである。
世界には、現実がある。
無翼の天使であるソフィアは、それが護るべきものであると理解していた。だからこそ、彼女は今日も地上から空を見上げるのだ。
・・・・・・・そのことに不満は無かったが、それは彼女に苦痛を与えた。その結果が、無翼の天使だ。放棄の末路。あるいは、絶対の守護。それが、咎人である彼女の、精一杯の誠実であり、誰ともなく強いた懺悔だったのである。