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別れは突然だった。


この前エミリオ様と仲良さそうに話していたお姫様が私が人間であることに気づいたのだ。


「あなた、おかしな雰囲気だと思ったら人間の女なんですってね?お兄様から聞いたわ。しかも、平民の女だとか・・・いつまでエミリオ様の側にいるつもりかしら?」


美貌を歪めこちらを冷ややかに見下ろすお姫様は心臓がすくむくらい怖かった。思わず後 退りするも、すぐ後ろに壁がありこれ以上さがれない。


「エミリオ様は魔術もさることながら、頭脳明晰、剣や馬術の力量も高く、この国の宝と呼ばれているお方。あなたはそんな彼のそばでなにができるのかしらね?そうそう、あなたがそれでも側にいたいとお思いならば構いませんけど、私と今度婚約いたしますの。私たちの仲を引き裂こうものなら容赦はいたしません。私たちを見るのが辛いとお思いならばあなたの居場所を特定している首輪をとって差し上げますからどこへなりと行きなさい。きっとお優しいエミリオ様ですもの、いなくなったら一応あなたをお探しになりますものね。あなたのような毛並みの美しいねこならばどこででもやっていけるわ。」


そう言うと震える私を片手で持ち上げ目線を合わせさせられる。


「それでもエミリオ様のそばにいたいなら10秒数える間に逃げなさい。逃げなかったら了承したとみなすわ。・・・1・・・」


『どうしよう、どうしよう』


「・・・2・・・」


『婚約者・・・エミリオ様が優しい目で彼女をみつめるのにたえれるかしら・・・』


「・・・3・・・」


『無理だわ、想像するだけでたえられない。だけど、側にいたい。お話したい。撫でてもらいたい。』


「・・・7・・・」


『だけど、私のせいで変な噂がたったり、二人の仲が悪くなったら?私のせいでエミリオ様が不幸になったら?それもたえれないわ。そもそもお姫様がおっしゃるように私とエミリオ様じゃ釣り合わない。きっと傷の浅いうちに離れた方がいい・・・いずれ離れる日はくるのだから。』


「・・・9・・・10・・・」


「覚悟は決まったようね」


「ニャーォ」


「ふん、賢明ね。一応あなたが不自由なく生活できるよう家を紹介します。人に戻る手段も研究するわ。待ってなさい。」






首輪をとられ、馬車に乗せられた。馬車で3日かかるほど遠くへ連れてこられた。家の人には優しくしてもらっている。食事も人間の食べ物を頂いているし、お風呂へも毎日いれてもらえる。だけど、景色が色褪せてみえる。ご飯の味がしない。エミリオ様と居るときは感じなかった猫であることをいやでも感じる。いくら優しくしてもらっても、人としての尊厳はない。モナというアイデンティティーはどこにもない。


あぁそうか、人間だと思うから辛いんだ。人間としての感情があるから辛いんだ。「嬉しい」「悲しい」「憎い」「愛しい」


辛いだけなら忘れてしまおう。何も考えたくない。私は猫。ここに住み着く猫・・・・・・




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