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「まったく、どうするんだよ。」
すたすたとエミリオ様がこちらへ歩いてきて、ぐわしっと首をつかまれる。
「シャーーーッ!!(なにすんのよーーーっ!!)」
手足をばたつかせて暴れてみるもののむなしく、つかまれた首を基点に、ブーラン、ブーランと体が揺れる・・・・・・ズーーーン・・・・・・(´д`|||)
落ち込んでいると、くるっと裏返されお腹をさすられる。
「こいつ、メスだな。チッ・・・女か、面倒くさい・・・」
「フニ゛ャァーーーーーーッッ!!」
メンドクサイって、オナカ、カラダさわって、オンナって、メンドクサイって!!!!
も~~~~何を言いたいのか、わからなくなってきたけど、この人、やっぱりきらぁぁぁいっ!!
*
あのバカ王子が、ちょっかいをかけてくるのが煩わしく、猫にでもしてしまえと魔法を放った。が、野性的な判断でかわされた。そこまでは想定の範囲内だったのだが、よりにもよって扉近くにあった魔道具の棚をなぎ倒し、いくつかの魔道具を巻き込んで術が展開されてしまったようだ。その中には、術を固定するものも含まれていたように思う。さらに悪いことに、扉近くにいた誰かを巻き込んでしまった。
光がおさまり、視界がひらけると一匹の黒猫がいた。間違いなく面倒な術のかかりかたをしている。術を解読して元に戻すのには時間がかかる。しかし、今は難しい案件がたて込んでおり、研究に時間をさく余裕がない。自分の短慮でしでかした事だが、思わず頭を抱えてしまう。
「にゃーにゃーとよく鳴く猫だ。」
裏返して腹をみると、どうやらメスのようだ。
「こいつ、メスだな。チッ・・・女か、面倒くさい・・・」
「フニ゛ャァーーーーーーッッ!!」
どうやら怒っているようだが、とりあえず煩いので服に突っ込んでおくか。うろうろされて、他の猫と見分けがつかなくなると面倒だ。
破壊された扉の近くに封筒が落ちており、宛名をみてみると、孤児院から俺宛だった。手紙の内容は、今年16歳になるモナ・アンジェリコの就職先を王城に推薦してくれないか、という内容だった。
おそらく、たまに変な顔をして動物を追いかけまわしている、黒髪の少女の事だろう。この封筒がここに落ちているということは、受付の誰かだろうとめぼしをつけ、受付まで足を運んだ。
「はぁーーー・・・忙しいのも、面倒なのもあのバカ王子のせいだ。」
ポケットに突っ込んだ黒猫は、いつの間にか大人しくなっている。ポケットから出してみると、のんきにねむっている。
「こいつ、暖かいな。」
能天気な猫の姿に頬がゆるむ・・・
*
その日、美しいが氷のように表情が動かない、エミリオ・チェザリスが猫を抱えて微笑んだという、嘘のような噂が侍女達の間で瞬く間に回ったとか・・・