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鬱々としています。
「おい、エミリオ。お前大丈夫か?」
「・・・何がだ?」
「最近飯くってるか?と言うか何だそのクマは。色男が台無しじゃねぇか。」
「・・・・・・」
「今日はもういい。お前にぶっ倒れてもらってはこっちが困る。帰って休むんだ。」
「いや、まだ帰れない。この研究が終わるまで休めない。」
「はぁー・・・お前が仕事とは別に何かに打ち込んでるのはわかっている。まぁ、お前が大切にしていた猫関係なんだろうが。他の案件は取り敢えず一週間は免除してやる。その間に名一杯打ち込め。」
「・・・すまない。」
「た・だ・し!今日は今から寝るんだ。研究は明日からだ。」
「だめだ。時間がない。こうしている間にもモナに危険が迫っているかもしれないだろ。」
「いいや、だめだ。お前の体は限界だ。ちゃんと休まないと考えれるものも考えられんだろ。悪いが強制的にスリープしてもらう。」
「!まってくれ!!」
「またん。」
くそっ・・・強制的に落とされた。休んでいる暇などないのに。
モナがいなくなった。首輪にかけてた探索魔法を追ったが、首輪だけが森の木にかかっていてモナの姿も足跡すらも見当たらない。
朝隣にモナがいない。食事を美味しそうに食べる猫の姿がないだけでいつもの半分も食欲がでない。一緒にいると騒がしいと感じる事すらあるのに、今はその騒がしさが恋しくてたまらない。長らく続けていたはずの一人暮らしが耐えられないほどモナの存在が大きいことに気づいてしまった。
毎夜仕事が終わってから探すが見当たらない。何故森なんかに行ったんだ。獣に連れ去られた?いや、血痕も他の獣の足跡も首輪の近くになかった。盗賊に連れ去られた・・・?
とにかく手掛かりは首輪しかない。
探索を逆から紐解けるよう術式を解いて組み立て直す。だが、なかなか上手くいかない。
「・・・くそっ・・・絶対に許さない。絶対に・・・絶対にみつけてやる・・・モナ・・・」
*
「まぁ!エミリオ様!!今日はどうなされたの?いきなり会いに来られるなんて。嬉しいわ!!」
「本日は伺いたいことがありまして参りました。姫様は何を尋ねたいかお分かりですよね?」
「・・・一体何のことでしょう・・・?皆目検討もつきませんわ・・・」
「私が大切にしている猫が行方不明になりました。猫につけていた首輪の軌跡を逆に辿っていった所、森へ行く前にここの部屋へ長らくとどまっていた。更に言えばこの部屋から森への首輪の振動幅が明らかに猫ではなく人の歩く幅だった。何を言いたいかはわかりますよね?」
「・・・っ何故?何故なの?そんなにあの子が大切なの?」
「姫様はあの猫が人間だとご存知なのですね。」
「えぇ、お兄様から伺いましたわ。ですが、私が彼女を隠したわけではございませんわ。彼女がエミリオ様から離れたがっていらっしゃったので協力したまでのことですわ。」
「もしそうだったとしても、あいつはきちんと俺と話し合うべきだ。人間に戻るための術式は完成した。モナの所へ案内していただけますね。」
感情のおさえかたがわからない。一国の姫に対する態度ではないことは重々承知している。しかし、後には引けない。彼女は居場所を必ず知っているはずだ。例え姫様の言う通りモナが俺から離れたがっていたとしても、離してやれる気がしない・・・絶対連れて帰る・・・
・・・モナ・・・
会話ばっかり・・・