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長谷田ユウイチの悲しき日々(学習塾編)

作者: 永彼方
掲載日:2013/01/10

とある大学生の哀しくもいじらしい半生を描いた物語です。

コメディーです。

一話完結型の物語なので、気楽に読んでもらえれば幸いです。


僕の名前は長谷田ユウイチ。

見た目は下の上、性格は陰気。

アニメとゲームが大好きなごく普通の大学生。

そんな僕の人生は、決して不幸では無かったけれど実に哀しいものだった。


僕が中学三年生のときの出来事だ。僕は中学一年のころから塾に通っていたのだが、その塾には同じ学校の男子が4人、違う学校の女子が5人いた。けれどもそこは中学生、お互いに変に意識してしまった結果、男女の交流はほとんど無かった。


けれど僕はこっそりと女子のTさんに憧れていた。

Tさんはスタイルが良く、スラリと伸びた手足に僕はいつも目を奪われていた。小さな顔にぱっちりと開かれた目、活動的でにこやかに笑うTさんはまるでテレビに出てくるアイドルのようだった。Tさんは頭も良く、部活はテニス部で運動神経もバツグン、当時の僕にとってTさんはまさに理想の女の子だった。(ちなみにTさんがテニス部という情報は盗み聞きで入手した)


他にも「あれ?『千と千尋の神隠し』の豚役で出てませんでした?」と聞きたくなるようなチャーミングな女の子がいたのだが、今回は関係ないので無視しておく。


高校受験が間近に迫ったある秋の日のことである。その事件は起こった。


僕は友達のM君と一緒に塾から帰っていた。M君は僕の親友で、サッカー部のエースだった。中学生のクセに髪を伸ばし、学校ではいつも女の子とイチャイチャ楽しそうに話をしているそんな親友だった。


「ユウイチはさ、○○北高校に行くんでしょ?」

「ん、まあ…はは、そうなるかな」


塾が終わるころには外はもう暗くなっており、吹き付ける北風に身を震わせながら僕らは家に向かっていた。


「そういえばTさんがさ…」


M君の不意打ちの発言に、僕の心臓がキュイッ!と締め付けられた。

なぜこのタイミングでTさんの話をするんだ?

まさか僕に関係することなのか?


驚きと期待で心臓がバクバク言っていた。あまりにもバクバク言い過ぎて、心臓がヒップホップを踊っているみたいだった。


平静を装って僕は聞いた。


「え、ええ?え?ティティTさんがどしたって?」


自分でも気持ち悪いなと思った。


「いやさ、この前メールで志望校の話してたらさ…」

「あ?え、ああメール。そうだよね、そりゃあねぇ…メール!?」


二人がメールをする仲だという事実にショックを受けながらも僕はあくまで冷静に話を聞いていた。我ながら素晴らしいポーカーフェイスだったと思う。


「Tさんも○○北高校行くの?って聞いたらさ、『○○北高校ってユウイチ君が行こうとしてるとこでしょ?』って返ってきてさー」

「ふ!ふぇ~しょ、しょうなんだ~、まあそんな興味なぁいけぢょねー」


驚きのあまり変な声が出て、Mクンが怪訝な顔をしていたがもう気にしていられなかった。Tさんが自分のことを知っている!しかも自分の志望校まで覚えているなんて、これはもう何か起こるに違いない!というかぶっちゃけ僕のこと好きだろ!これ!

心臓が期待でバクバク言っていた。バクバク言い過ぎてタップダンスみたいだった。


しかし、その後のM君の発言は僕の想像を超えたものだった。

「『ユウイチ君がいるんだったらやだな~、毛深いじゃん?あいつ』だってさ、マジ笑えるよね!」


パニック状態だった。確かに僕は毛深い。体育の授業で短パンを穿いたら、女子が首を痛めてもおかしくない速度で僕の足とすね毛を二度見するぐらい毛深い。

けれど僕が付き合ってくれとか、友達になってくれと言った、そういう話ならまだ分かる。


しかし同じ高校に進むことすら拒否されるとは思わなかった!

毛深さが原因で!!

夏でもずっと長ズボンを穿いていたのに!!!


「ああ…そうなんだ…それ笑えるね…」

「あれ?泣いてる?」

「泣いてねえよ!むしろあんなブスこっちから願い下げだよ!」


僕はM君をその場に置きざりにして走って帰った。涙が止まらなかった。泣きながら走るから全然息が吸えなくて、数メートルで吐きそうになった。


帰ってから僕は一心不乱にすね毛を引きちぎった。家族に心配された。

次の日、引きちぎったすね毛が普通に元通りになっていた。

そんな中学三年、秋の日の思い出。


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