『終末への一歩』
残酷描写が少し入ってます。
ご了承下さい。
さぁ、ラストまで頑張ろっ☆
爆煙が晴れ、静けさが戻った。だが、其処に彩弓の姿はない。大きな穴だけがやけに目に付いた。
「彩弓・・・」
愛理衣は膝をつき、泣き崩れる。誰もが、死んだと思った。あんな間近で地雷を踏んだらひとたまりもない。其と同時に地雷の恐ろしさを思い知った。リンはあまりの出来事に事態を把握しきれていなかった。
「一発目で当たるとは不運だったねぇ。次は慎重に動かないとね――遊音」
不意に指名された遊音は肩を震わせた。
「にぃさん・・・」
イズが彼の手を握った。
「行かないで・・・!」
「イズ・・・」
遊音は決意が固まらず、動けずにいた。
「待って!」
制止したのは、戒だった。
「僕が代わりに行くよ。だから、遊音には手を出さないで欲しい」
「戒・・・」
「君に辛い思いさせちゃったから、その罪滅ぼし」
戒は笑みを向けながら言った。
「其に、もう能力も使えなくなっちゃったし。君達には幸せになって貰いたいんだよ」
「でも・・・戒が犠牲になることなんて・・・」
「いいんだよ。覚悟は出来てたから」
戒は鉄柵を飛び越えた。
「良い覚悟だ、戒。君に居場所はもうない。せめて、死んで詫びれば悔いもないだろう」
久住が追い込むような言い方をした。
「戒!」
麗夢が叫ぶ。だが、もう彼は手の届かない場所にいる。止めるには手遅れだ。
戒は天を仰いだ。青空が綺麗に見えた。
仲間が欲しかった。ずっと一緒にいてくれる仲間が。やっと手に入れたんだ。あの子達には幸せを与えたい。こんな所で死んだら駄目なんだ。僕の事は忘れて生きて欲しい。久住の欲望を満たす道具ではなく、一人の人間として、自由に・・・。
「だから・・・」
終わらせる。こんな事無駄だったって後悔すればいい。
「戒・・・」
最後に、神流と目が合った。泣きそうな顔をしている。
そんな表情しないで。君には、笑ってて欲しい。今まで、僕を支えにしてくれてありがとう。
「―――」
戒は小さく呟き、一歩を踏み出した。土が柔らかく巧く歩けない。どこを歩いても当たりそうだ。
怖い・・・。
今更、そんな感情が溢れてきた。だけどもう後戻りなんて出来ない。死を、恐れるな。今までだってそうやって生きてきた。大丈夫だ・・・。
カチッ――
「・・・これで・・・終わる」
淡い光に包まれながら、戒は安堵した微笑みを浮かべた――。
彩弓の時と同様、大きな爆音と地響きが起こった。
ドサッ――
神流の前に降ってきた片腕。紅く染まった片腕を神流は呆然としながら、拾った。薬指には、銀色の指輪がはめられていた。
「戒・・・!」
神流は指輪を抜き取り、大事に胸に抱き締めた。
「さようなら」
戒が最後に言った言葉。
そんな事言わないで・・・。
ただ、側にいて欲しかった・・・。
あたしは、もう皆の所には戻れないけど、戒は、また仲間になれたんだよ・・・。
「ごめんね・・・」
神流は震える声で呟いた――。
彩弓に続いて戒までも、地雷の犠牲になってしまった。リン達は何も出来ず、立ち尽くしたまま。こんな事、絶対間違ってる。そう思うのに、久住には何も言えない。楯突いて次に当てられたら嫌だ。
「愛理衣」
久住が神流と話している隙に麗夢は愛理衣を呼び、小さな声で囁いた。
「お前の透視で、あと幾つ地雷があるか解るか?」
「うん・・・。視てみるよ」
愛理衣は皆の後ろに隠れるようにして、透視を始めた。土の中に埋まっている地雷がみえる。なんとかして、被害に遭わずに撤去だけを成し遂げたい。
「見えたか?」
「えぇ。数は多くないわ。でも、複雑に埋められてて一歩踏み間違えれば死ぬわ」
「・・・ちっ。厄介な代物だな」
「アタシね、彩弓には教えてたんだ。此処に着いた時から地雷の場所。でも、彩弓が踏んだ地雷だけは見えなかったの。比較的、数が少なかったからあの畑を選んだんだけど・・・。」
「見えなかったって・・・じゃあ、彩弓は何を踏んだって言うんだよ」
「解らない。もしかしたら、地雷じゃなかったのかも。ごめん。透視の時って物は白黒に見えるから同じにしちゃったんだと思う」
「・・・そっか。ありがとな」
二人の話を近くにいたアスカが聞いていた。
「リン」
「なに?」
「お前の歌声で、彼奴を混乱させられないか?」
「えっ?」
「脳に刺激を与えるだけでいい」
「・・・うん。解った」
アスカには何か考えがあるのだと悟り、リンは深呼吸してから歌い始めた――。




