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ランドマイン  作者: 淡月 涙
21/50

『小さき者』

※一部、グロテスクな表現が含まれます。

透韻の後に続きながら地下から出るとまた長い廊下に戻ってきた。透韻は場所を確認しながら進んでいく。異様な空気に耐えられなくなったのか、イズは麗夢の腕にしがみついた。

「君達は強いね」

不意に透韻が話しかけた。

「強い?」

「仲間を助ける為にこんな異様な所まで来たんだ。其に怖くても逃げない所がね」

「・・・逃げたかったのは、過去の自分だ。俺は皆に出逢って強さを知った。だから、絶対助けたいんだ」

麗夢は揺るがぬ意志を伝えた。

「うん――。凄いと思うよ。大切な仲間って、きっと偉大なモノになる」

「あんたにはいないのか?」

そう聞くと透韻は少しだけ哀しげな表情を浮かべた。

「・・・ぼくらの強さは欠片に過ぎなかったからね・・・。」

「えっ・・・」

その時、一際響く足音が聞こえた。不安定なリズムで近付いてくる気配。麗夢達はその場で警戒した。

「――おや?これは手間が省けたな」

その声に透韻は動揺した。まさか、あちらから出向いてくるとは想定外だった。

「何だ、3人か」

現れたのは久住だった。辺りに他の気配は無い。透韻が二人を守るようにして前に出た。

「久住・・・」

「此方へ来い、透韻。お前は此方側だろう」

「誰が・・・!ぼくはお前の道具じゃない!」

「その姿を保っていられるのは誰のお陰だと思ってる?私が君の願いを叶えてあげたんじゃないか」

「願い・・・?何の事だ?」

「あの日お前は打ち明けただろう?人はいつか死ぬ。だが、この世界を知る為には自然現象に沿って絶える訳にはいかない。自分には世界の変化を見届ける義務がある。ずっと生き続けられる能力があればいいのに・・・と」

「そ、そんなのただの理想だよ!ぼくは本当に望んでた訳じゃない。可能性の話をしただけだ」

透韻は必死に弁明した。

「そうは思えなかったがな」

久住は意味深な笑みを返した。

「おい!あんな奴の言う事本気にするな。あんたを利用しようとしたんだろ!?」

戸惑う透韻に麗夢が声を掛けた。

「君が、戒に助け出された子だね」

久住は視線を麗夢に向けた。

「だったら?」

「君の罰は、誰が払ったと思う?」

「・・・何で罰を払わなきゃいけねぇんだよ。俺らは無理矢理此処に連れて来られたんだ。逃げ出して何が悪いんだよ」

「その威勢もいつまで持つかな」

意味深な笑みを浮かべながら、久住は一つの部屋に手を伸ばし、ゆっくりと扉を開けた。

「私の楽園へようこそ」

その光景を目にした彼らは言葉を失った。

「・・・んだよ・・・これ・・・」

麗夢は恐怖に震えた。イズはもう耐えられず意識を失った。透韻も静かに目を臥せる。

「たす・・・けて・・・」

紅く染まった手が、麗夢の脚を掴んだ。その生暖かい感触に麗夢は小さく悲鳴を上げた。

「何なんだよ・・・」

彼の目に映るのは、辺り一面、血の海に沈んだ滑稽な幾つもの死体。中には、胴体だけのものまで浮かんでいた。まだ瀕死の者は不気味に蠢いている。

「この子達は嘗て君達と同じ箱の中にいた子どもだよ。能力を持っていたクセに全く役に立たなかった。だから、死ぬより辛い罰を与えたんだ」

「・・・狂ってる」

「そうだね。私はもう人間じゃない。ヒトが死んだって何とも思わないんだよ」

「だからって・・・こんな事許されない・・・」

「誰が裁くって言うんだい?此処は隔離された場所。知っている君達さえ消えれば誰にも解らない」

久住は余裕綽々で言葉を返す。麗夢はもう何を言っても無駄だと判断し、口を閉ざした。

「久住。こんな場所、子どもには受け付けない。早く部屋から出して」

透韻がイズを抱えながら久住を睨んだ。

「君達の行く末を見せてあげただけなんだけどね。否定するなら、もっと良い場所へ案内しよう」

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