『繋がった想い』
「戒?何してるの?」
檻に触れながら一生懸命粘っている彼に愛理衣が声を掛けた。
「以前みたいに壊せないかなって。でも、さっきからやってるのに全然利かないんだ」
「溶けないの?どうして・・・」
「其になんか、力が入らなくて・・・ 」
「えっ」
そう言われて愛理衣も檻の柵に触れた。特に何も感じない。
「少し休んだ方がいいよ、戒」
「・・・うん」
鎖は外れている。大した仕掛けもしていない。なのにどうして・・・。戒は何故、能力が使えないのか不審に思っていた――。
商店街から少し離れた男の子の家にリン達は移動していた。麗夢とアスカの傷は創葉が治してくれた。次第に体力も回復すると言う。
「あなたの能力は治癒なの?」
「此れは生まれつき持ってた能力なんだ。ボクの能力はまた別」
「そうなんだ・・・」
何も知らない兄の事をリンは少しでも知りたいと思った。
「いいなぁ。創葉にこんな妹がいて」
リンを見ながら佐月が羨ましがった。
「二人を傷付けた事は謝るよ。ごめんね」
「あっ・・・いえ・・・。傷もすぐ治ったし・・・」
「優しいね」
褒められてリンは頬を赤らめる。
「其で?佐月はどうするの?」
「どうするって決まってるじゃない。創葉と一緒にいるよ」
「それは解った。このまま一緒についてくるの?ボクらは廃墟に行くけど」
「だったらぼくが案内するよ」
「平気?久住にバレたら・・・」
「うん・・・。ただじゃ済まないね。でも、大好きな君を守れないよりかは、一緒に闘って想いを果たしたい」
「佐月・・・」
彼がそんな風に想っていたなんて知らなかった。創葉が何か言おうとした時、麗夢とアスカが目を覚ました。場所が変わっている事に戸惑いを感じたものの、二人はすぐに順応した。
「・・・リン」
アスカはすぐに少女に気付いた。
「アスカ・・・」
「無事だったんだな・・・。良かった」
彼は安堵した様子で肩の荷を下ろした。
「アスカ、腕の怪我は大丈夫なの?」
「あぁ・・・。大した怪我じゃなかったよ」
カナンに治して貰った事は伏せておいた。
「ごめんね・・・。あたしの所為で・・・」
「お前の所為じゃない」
アスカは優しく笑ってみせた。
「リンの友達?」
話を変える様に創葉がアスカに声を掛けた。
「そう・・・だけど、貴方は?」
「ボクはリンの兄です」
「えっ・・・!?」
アスカは驚きながらリンを見た。
「あたしも知らなかったの。まだ小さかった時に別れたから・・・」
「そうなんだ・・・」
初めて知る事実にアスカは戸惑うばかりだ。
「隣の君は?」
急に振られて麗夢は反応が遅れてしまった。
「・・・麗夢。アスカとはこの街で知り合った」
「どうしてそんな格好をしてるの?」
「・・・仲間を助ける為に、抜け出してきたんだ」
「――囚人?」
創葉に当てられて麗夢は口をつぐんだ。
「隠す事ないよ。もう君を連れ戻す人達は此処にはいない」
「えっ・・・でも・・・」
麗夢は視線だけを佐月に向けた。
「あぁ、彼ならもう敵じゃない。ボクの友達なんだ」
「友達・・・」
「さっきは悪かったね、二人とも。ぼくは佐月。創葉とは昔馴染みなんだ」
「ホントに・・・?何か企んでんじゃない?」
「疑い深いね。――大丈夫だよ。ぼくは創葉に恩がある。だから、彼を裏切る行為はしない」
「・・・そうかよ」
まだ完全には信じきれなかったが、半ば安心もしていた。麗夢は少しだけ佐月から離れた。
「此処ってお前の家なのか?」
話に付いていけない男の子にアスカが振った。
「そうだよ」
「一人暮らしか」
「まぁね。慣れたし、色々楽だしね」
「へぇ・・・。そういえば、お前、名前は?」
「イズだよ」
その名を聞いて麗夢が反応した。
「お前、イズっていうのか!?」
「あぁ」
「遊音って知ってるか?」
「・・・兄さんを、知ってるの?」
イズは驚いた様子で聞き返した。
「俺は遊音や仲間を助ける為に出てきたんだ。でも、遊音は家族は殺されたって・・・」
「・・・ぼくだけ助かったんだ。でも、あの時は意識が朦朧としてて・・・」
「――お前も、一緒に来るか?」
突然の誘いにイズは戸惑いを見せた。
「麗夢。危険なんじゃないのか?まだ、子供だし」
アスカが意見を述べる。
「子ども?何言ってんだよ。そんなの関係ねぇだろ。子どもだって戦える」
「だけど・・・」
「そうだね。目的があるのに、進まないのは良くないな」
創葉が麗夢に同意した。
「でも、君が決める事だから。」
「・・・行きたい。一緒に行ったら兄さんに会えるんだろ?だったら、連れてって」
イズは強い意志を表した。その瞳に迷いはない。
「OK。皆を助けに行こう」




