小さな天使は
「えー、転校生を紹介します」
そんな定番の転校生紹介が始まったのは、朝会の時のこと。
バカ教師のせいで、その転校生との親睦を深める会、が始まった。
実際は、ただのレクリエーション大会。生理と偽って、私は休む。
実際、気分が優れない。
彼の名前は、南 誠一。私達と同じクラス、同じ年齢。
まるで小さな番町のように、額に絆創膏があるのは、あの傷のせい。
幸い、血も止まっているし、直りかけている。
何故あんなところにいたかは、よくわからないそうだ。
「あの、笑麻さん」
気がつくと、目の前には――
「南君、どうしたの」
ニコリと微笑みを湛えたその顔は、まるで無邪気な子供のようだ。
「あの、僕を見つけてくれたのは、笑麻さんなんだよね……」
気が進まないが、嘘は無いので頷く。
「あの、ありがとう」
満面の笑みを形作って、ペコりと頭を下げる。
そんな姿も可愛らしい。
「いいよ、別に。見かけただけだしね?」
思ったことを率直に言う。いままではこれがなかなかできなかったのだけれど……、
南君に対しては、何故かすらすらと出てくる。夢のせいかしら。
「笑麻さんって、笑ってた方が絶対いいと思うよ」
いつの間にか、笑っていたらしい。
ギュッと唇を閉めると、南君は残念そうに肩をすくめて見せた。
「南くーん、早く!!」
クラスの男子が、大声を出して呼んでいた。
確か、肝試しで一緒の班だった奴。
「うん、いまいく!! それじゃあね、笑麻さん」
そういって、小さな南君は小走りに駆けていった。