夢との遭遇
肝試しは、旧校舎の3階女子トイレの、一番奥の個室に、線香をたむけるという、
いたってシンプルなルールだった。
空が、憂いを帯びた雲に覆われ始める。
仄暗い闇が、あたりを囲み、第一班の帰りを待っていた。
「神野達遅いねぇ……」
美恵がつまらなさそうに言う。ここは旧校舎前の校庭。
鉄棒が、昼を待つように静かに、佇んでいる。
美恵は、鉄棒に背を預けて、地面に座っていた。
旧校舎の階段の辺りに、蝋燭の灯りが見えた。
そして、
「ただいまー」
旧校舎の玄関から、神野達が手を振っていた。
「おかえりー」
美恵が出迎える。神野と、しばらくの抱擁。
そして、私たちの番。私は、歩き出す。たった三人の仲間と。
「頑張ってねー」
私は振り返らずに進んでいく。前を歩くクラスメイトは、美恵に手を振った。
校舎への入り口。異世界に続く仄暗い道。
「うっわー。暗いねー」
「お前逃げるなよぉ?」
前にいる、話したことも無いクラスメイト達が、和気藹々とこの異世界を楽しんでいる。
私は完全に取り残されていた。私の正体すら知らぬクラスメイトたちに。
階段を上る、軽快な足音と、一番前に立ち進む、真鍋が持つ蝋燭の灯りだけが頼りだった。
キョロキョロしながら、ただ進む。3階に向かって。トイレに向かって。
そして――
「ひっ……」
――いた。
あの人が。夢に出た、あの場所、あの空、あの状態そのままに。
「いやぁー―――――!!」
無論、クラスメイトは、夢の通り逃げ出した。私を置いて、そして私は、
夢の通りに、腰を抜かした。
全ては、夢の通りに。




