2人で
合唱コンクール。
そう。クラス対抗で歌の上手さを競い合う、学校大3イベントの一つがやってくるのだ。
私はテンションマックスで大声を出した。
「みんなー!1位目指すよー!」
「うっしゃー!」
このクラスがテンションとノリがいいのだけが取り柄だ。
私は気づいたら指揮者になっていたので、思いっきり仕切っていた。
「ここ!フォルテだからもっと出して!」
「ちーーーがーーーう!感情込めて歌わなきゃ!」
「こらー!音が違うんだよ!」
「お前らどこの国の人だよ!日本語で歌え!歌詞がさっぱり聞こえない!」
みんなは私に文句を言うことなく、真剣にハーモニーを奏でる。
中学校生活最後の年。1位をとることにみんな必死だ。
「じゃあ明日はここの小節から行くねー!家で練習してこいよー」
「はーい」
・・・・・・疲れた。
放課後の30分間の練習が終るころには、みんなの顔は青白くなっていた。
「お疲れさまでしたー」
みんな解散して帰りの用意を始める。
私はヘトヘトになって自分の机に突っ伏した。
今すぐバッグを持つ気力はない。
「ってか、鈴‥‥キャラ違う。」
席にバッグをとりにきた優斗が私に言う。
「へ?」
「お前そんなに熱血だったっけ?」
「うるさいなー」
私は優斗の背中をボンっと叩く。
「イテ。」
気づけばもう7月。
かれこれ優斗とは3ヶ月間も隣の席をやっている。
席替えはしないのだろうか。
まぁこの窓際の席を手放すのは惜しいので、しなくてもいいのだが。
「でもお前は男勝りだよ。うん。」
「それって褒めてんの?」
「褒めてる褒めてる。」
「嘘つくなぁー」
思ったよりも声がデかかったようで、教室にその声が響いてしまった。
「響いたね。」
「うん。」
「ってかもう俺らしかいなくね?」
「うそ。」
私は教室を見回す。
しーん。
いつの間にか誰もいなくなっていた。
「‥‥‥‥帰りますか。」
「一緒に?」
「‥‥ダメ?」
「いいんじゃない?」
こうして私と優斗は一緒に帰ることになった。
私と優斗は席以外の場所で話したことがない。
いつもとちょっと違うシチュエーションに、ドキドキしてしまった。
それに私は男子と2人で下校するなんて初めてだ。