中の人
短編です
この角を曲がって、二つ目の部屋、ココだ。
ドアを開けて中を物色する。綺麗に整頓されていたはずの棚は、なんだか少し乱雑だ。でも気にせずに、棚に並んでいる目的のレシピを探す。
最初は名前順に並べていたはずなんだけど、所々順番がばらばらだ。困ったなぁ。
「お、あった」
プリンと書かれた冊子を取り出して中を見る。材料のところ、卵と、牛乳と・・・あとなんだ?ぼやけていて読めない。作り方の欄もなんだか変だ、虫食いみたいに穴が開いていて、作り方がわからない。以前はこのレシピを引きだして、すぐに使えたのに。
次の指令が入る。今度はシフォンケーキか、プリンの冊子を戻そうとして、場所がわからなくなった。あぁ、またこれだ。最近どこに戻せばいいのかもわからなくなってきた。一旦、プリンの冊子を床に置いて、ケーキの冊子を探す。
ケーキ、ケーキ・・・こ、れか?手に取った名前の擦り切れた冊子を取り出すと、ケーキではなくゼリーの冊子であることが解った。今はコレじゃないんだよなぁ。
あれ、今どこからゼリーの冊子出したんだっけ?あぁ~もう面倒だ。
新たな指令が来る。ケーキはもういいのか?
今度は料理の棚に行けと。最近ヒト使いが荒いぞ?まぁこれがジブンの仕事だから仕方がない。
料理の棚も相変わらずバラバラだ。
指令を確認すると、ポトフとローストチキンのレシピを要求された。
一定の時期に定期的に来ていた指令だ、よく覚えている。確かここに・・・ない。もう、どうして最近探し物が見つからないんだろう。誰だ、乱雑に置くのは!と誰かを叱責したいけど、ここで仕事してるのはジブンだけだから、この現状を作ったのはジブンだ。くそう。
地面をけり上げようとしたときに、足元にポトフを見つけた。幸い、このレシピは穴が少ない。良かった。
急いで指令を送ってきた部署にポトフのレシピを送る。やれやれ、今度はローストチキンだ。
ら、り、る、れ、ろ・・・ろー・・・す、とあった!・・・あ、違う、ポークだ。・・・なんでポークの次にビーフがあるんだよ・・・。あ、あった。ローストシリーズでまとめてたみたいだ。
ローストチキンのレシピも送って、ひと段落。
最近こうやって、探し当てられないレシピが増えてきた。でもそれを片付けようという気力も起きない。そう言えば、記憶管理課のアイツも言っていたな、最近記憶を引きだすのに時間がかかるようになったって。俺もレシピを探し当てるのに時間がかかるようになった。以前は指令が来てもすぐに返事できていたのに。困ったもんだ。
少しくらい片付けるかな・・・。記憶管理課から、記憶の整理の依頼も来ていたはずだ。その業務も進めなければ。
「おばあちゃん、ケーキは買ってくるから大丈夫だよ」
「ごめんなさいねぇ、最近歳のせいか記憶力がねぇ」
「ポトフ美味しいよ!ありがとう」
「そう?それならよかったけど」
レシピ処理をしていたら、記憶管理課から、紐づけ資料が送られてきた。
その資料をコピーして、ポトフとローストチキンの冊子に挟む。
この辺の冊子はだいぶ厚みが増してきたなぁ。
さぁて、片付け再開だ!
——記憶管理課、レシピ部——
レシピ、最近はスマホですぐ検索できて良いですよねぇ。




