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父の転移が多すぎて、困っています  作者: アカホシマルオ


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第6話 父の転移が多すぎたので、高校デビューになった

 


 高校に入学後すぐに行われた学力テストの結果を嫌々ながら両親に見せると、爆笑されてしまった。

「絵里の目指していた高校デビューって、こういう意味だったのかぁ」

「いかんぞ、魔法を乱用しては」

 違うんだー。


 私だって、これが自分の実力だとは少しも思っていない。けれど、魔法でズルをした覚えもない。何かおかしなことが起きているということしか、分からないのだ。

 意識してインチキしたわけでもないし、魔法を使ってもいない。はずだ。

 金城さんみたいに、シーフの力を使ってカンニングしたりしていないし。


 そう、彼女はちょっとだけやらかしていた。でもその気持ちは、私には痛いほどよく分かる。金城さんも私と同様に異世界の洗礼を受け、きっと普通の学校生活を送れなかった人なのだろう。


 どんな事情があったのか知らないが、この年齢でジョブレベルが38に達する人なんて、異世界でもほぼ見かけない。天才秀才と言われる子でも、その半分くらいだった。私だって、つい最近までレベルゼロだったし。


 きっとそれはどこかの異世界で、命がけで得た力なのだろう。それをほんの少しだけ使ったとしても、私が何か言える立場にはない。

 だってこの世界でなら学校なんて行かずに、簡単に大金を得られるほどの能力があるのだから。



「もしかして、私のステータスも他の人から見えるの?」

 両親を睨みつけて尋問する。

「絵里のレベルだと、私たち二人以外に見える人は誰もいないでしょうねぇ」

「俺たちにも全部は見えていないから、安心しろ。賢者の防御力は誇っていい」

 確かに安心したけど、そんなの誇りたくないんですよ。


「じゃ、あの校長先生は?」

「ああ、あの人は特別なの。でも私たちの味方よ」

「近々、直接話す機会があるだろう」



 で、その特別な人と二人で話す機会が、意外と早く訪れた。

「何故ここに呼ばれたのか、分かっていますよね」

 私は担任の先生に言われて昼休みに一人で校長室に来たのだけれど、その理由はさっぱり分からない。でもこういうのは、放課後にしようよ。食後すぐは消化に悪い。


 私は日ごろから努めて清く正しい高校生活を送っている。そのつもりだ。だから、入学早々に校長室へ呼ばれるような、大層なことをした覚えはない。


「あなたの両親とは懇意にしていますけれど、ルールを破るのは許可できません」

 何の話でしょうねぇ?

(思うに、これは絵里の失態を責められているのでは?)

 こんな時に、ややこしい奴が出て来る。

(いや私だって、叱られていることくらいはわかるよ。でも、何を?)

(……)


「その顔では、理解していないようですね」

 そんな怖い顔をしないでよぉ。

(おーい、AIの人、何かアドバイスを……)

(……)

 本当に、何の役にも立たない。やっぱり名前を付けないから、怒っているのかな?

 私は立ったまま腕組みをして、考え込んだ。実際は、足が震えているんだけど。



「さすが異世界帰りの賢者様は肝が据わっていますね。でも、この世界のルールは守ってもらわねばなりません」

「えっと、どういうことですか?」

 はっきりと言ってほしい。


「学力テストの日、あなたの教室で魔法が使用された痕跡を検知しました。そしてテストの結果は、あなたも私も知る通りです」

 そうかぁ。あの時の、金城さんの魔法かぁ。


「さて、あなたの処分を決める前に、何か言っておきたいことはありますか?」

「いいえ。あ、一つだけ聞いてもよろしいですか?」

「ええ。一つと言わずに、気の済むまで聞いてください」

「では、その魔法の痕跡とやらは、どうやって検出したのですか?」

「?」


「仮にもし本当に、この世界に魔法というものがあったとして、それをその魔法以外の能力で検知できるものなのでしょうか?」

 知らんけど。


 そもそも、校則に魔法の使用禁止というバカげたルールはないし、この世界での魔法使用倫理問題については、お互い様だ。両親から、この人は味方だよと言われたけど、ちょっと疑わしい。


 魔法以前に、カンニング行為が悪いのは十分知っている。でも希薄な証拠で私が疑われているのなら、それは腹が立つ。というか、私がどうやってあの点数を取れたのかは、こちらが教えてほしいよ。



「なるほど。証拠が無いと言いたいのですね」

「違いますよ。うーん、意図的ではない、と言ってもダメですか?」


 結局、校長の目の前で,私は昨年の有名大学の入試問題を幾つか解く羽目になった。その間に感じたのだけど、集中して見守る校長から漏れる魔力が、ぐっと増えた。

 私もたぶん、魔法で校長の魔力を検知しているのだろう。でもそれなら、あんただって私の目の前で魔法を使っているじゃないかぁ!


「全問正解。しかもあなたからは、魔力が検知されませんね」

 そうなのか。でも私としては、これが全問正解になってしまう理由が知りたいのですけどね。

「本当に、教室で魔力が検知されたんですか?」

「確かに、非常に微細な痕跡でしたが……」

「今は、校長先生の魔力が沢山漏れていましたよ。いいんですか、先生は魔法を使っても?」


「……さすがは賢者様、か。お友達には、今後は控えるように言っておいてほしい」

 もしかしてこの人、全部知っていて私を試したのか。

「……さすが校長先生、ですね。でもそのお友達に、私はどう言えばいいんでしょうか?」

 私からは言えないよ。そっちの方が、大問題だ。



「そう、確かにそれは私の仕事ですね。あなたを巻き込んでしまい、申し訳ありません。あの子には、この世界での倫理観と魔法使用の規制について再教育しましょう」

 げげ、そういう話になるのか。

「何か処罰が?」

「今回は厳重注意のみとしますので、心配要りませんよ」

 良かった。結果的に私がチクった雰囲気になっていて気持ち悪い。


 こんな状況なので生徒会長の周辺など、気になることを質問するどころではなかった。でもどうにか、私自身は無罪放免で乗り切ったぞ。

 ただ、校長室に呼ばれたことが他の人に知られていなければ良いのだけれど。


 でもそんな心配は不要だった。

 校長に呼ばれるとか生徒会関係者にマークされるとか、小さいことを気にする余裕もなくなる。


 いつしか廊下を歩けば、皆が振り向きちらちらと私を見る。ほら、あの子が全国一位の新入生。そういう声が方々から聞こえる。賢者の地獄耳だ。

「うわぁ、絵里って一躍、話題の中心じゃない」

「金城さん、声が大きい」

「だから、美晴って呼んで」

 彼女は全く気にしていないが、私は挙動不審になる。



 自分のクラスへ戻ると、さすがに露骨な注目を浴びることはない。

 そして放課後に校長室へ呼ばれていたらしい美晴が、割と元気に戻ってきた。

「あれ、絵里は待っていてくれたんだ」

「だって、一緒に部活の見学に行くって……」

 私も好きで待っていたのではない。


「私、部活動どころじゃないかもしれない……」

 珍しく、美晴が暗い顔をする。

「ねぇ、絵里。私に勉強を教えて!」

 本当に、ど直球な女だな。


「じゃ、放課後に図書館に行って……」

 私も放課後の部活動には興味がない。美晴に付き合って見学するだけのつもりだった。だって、どうせ幽霊部員化するに決まっている。

「学校だと恥ずかしいから、絵里の家に行ってもいい?」

 美晴にも、恥ずかしいという感情があったのか。家に来るとか、図々しいけど。


「あ、俺も教えてほしい」

「なら私も」

 後ろでいちゃついていた男女が、割り込んできた。あ、カップルはお断りですが。

「あれ、ミナミとタツヤも入る?」

 うん、その名前だと二人は幼馴染だな。


「だから、私はミナミじゃなくてラン」

「俺はシンイチだ」

 あ、そっちのペアだったかぁ。ドイツ帰りは情報が古い。



「絵里、江戸川君たちも一緒にいい?」

「だから俺は、江戸川じゃない!」

「コナン君はちょっと黙っててっ!」

「コナン君でもねぇ!」

 私の意見も聞いてほしいのですが……


「急に絵里ちゃんの家に行くなんて迷惑だから、学校の図書館にしましょうよ」

 ランちゃんは常識人みたいだけど、私が勉強を教えるという前提が既に間違っているぞ。

 そもそも、私に勉強を教えられるのか? その資格があるのか?

 全国の真面目に勉強している高校生の皆様に、深く謝りたい。


「じゃ、明日の放課後からね」

 美晴が、渋々二人にそう言った。

「おう、それで頼む」

「あんた、お願いするのにその言い方はないでしょ」

 ランちゃんに言われて、コナン君が私に頭を下げる。もう断ることなどできない。



 どうしてこうなるのか?

 夕飯の席でこの話をすると、また両親に爆笑されてしまった。

「でも、三人くらいならいつでも家に来ていいわよ」

 暇な両親がいつも家に居るから、友達を呼びたくないのだ。分かってほしい。


「それで、校長先生はどうだった?」

 どうもこうも、だよ。

「近くでじっくり観察させてもらいました」

「で?」

「あの人のジョブは導師ですね。それに、アメリカ国籍だった」

「おお」

「だって、私のステータスにもマーサの弟子、という項目が加わっていたし」

「うん。頑張って卒業してね」


「入学して弟子になったから、ステータスが詳しく見えなかったとか?」

「そうね」

「隠していたでしょ」

「そうね」

 うーん、自分で選んだ学校のつもりだったけど、仕組まれていたか。


「お父さん、さっきから何も言わないけど、まだ何か隠してるの?」

 何気なく言った私の一言に、母の顔色が変わる。

「あ、あなた。まさかマーサさんと……何か隠し事でも?」

 ちょっと待って。何この修羅場一歩手前感。でも、校長マーサ後藤はたぶん両親より十歳くらい年上のおばさんだぞ。美人だったけどさ。


「そ、それは子供の前でする話じゃない」

「じゃ、後でゆっくり聞かせてもらいますからね」

 ここまで思いっきり子供の前だぞ。もう耐えられない。

 私はいたたまれなくなって、二階の自分の部屋へ逃げた。



「ほら、これ以上マーサの話を絵里に問い詰められたら困るでしょ」

「だからって、あんな言い方をしたら誤解されるぞ」

「だってあの子、私たちに騙されたって怒っていたわよ」

「でも、本当に騙したからなぁ……」

 えっと、二階からでも、賢者の地獄耳で全部聞こえていますがぁ……

 あなたたちって、本当に勇者と聖女なの?


 私は、世界で一番人間不信に陥っている賢者です。



 終




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