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勇者エドリックの伝説  作者: ゆるゆる
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魔王七大悪魔登場!

クロエは歩きながら、ふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、あのヘビの頭に攻撃した時、その勇者の剣って折れたよな?」


エドリックは振り返ることなく、軽く肩越しに答えた。


「そうですね、それが何か?」


クロエは腕を組み、歩調を緩めながら考え込むように続ける。


「いや、私の持ってる短剣、勇者の剣と同等の名刀って訳でもないんだが、あのヘビの頭にヒビを入れるくらいは出来てたのに、それが折れるのはおかしくないか?」


一度足を止めたクロエに気づき、エドリックも立ち止まった。軽く首を傾げた後、彼は小さく指を鳴らして答えを思い出したように言った。


「多分、蒼玉のおかげですね」

「……あのオーブの?」


クロエが目を細め、訝しむような視線を向ける。エドリックは真剣な面持ちで頷き、少し声を落として説明を続けた。


「はい。あれには、あの超硬かったヘビすら簡単に一刀両断できるほどの鋭さを与えてくれる力がありました。勇者の剣の能力は、オーブの力を100%引き出すことだと思います。だから、ただオーブを所持していたクロエさんには……蒼玉の、20%か30%くらいの力が流れてたんじゃないかなぁって」


エドリックの言葉は、確信を帯びていた。

クロエは驚きと納得が入り混じった表情を浮かべ、しばし無言でエドリックを見つめた。

二人の間には、先ほどまでの戦いと、それを振り返る静かな余韻が流れている。


「なるほどな……」


クロエはポツリと呟き、エドリックの腰についた剣を見た。


「つまり、私がヘビに一撃入れられたのも、私自身の腕前ってわけじゃなく、そいつ――蒼玉の力のおかげだったってことか」

「いえ、クロエさんの腕も確かですよ。蒼玉の力があったとはいえ、それを使いこなせたのは、クロエさんだからです」


素直な賛辞に、クロエは少し照れたように鼻を鳴らした。


「ま、ありがとな。でも……過信は禁物ってことだな」

「はい。それでも、とっさの状況でヘビに一撃を入れたのは本当にすごいことですよ」


穏やかな会話に、二人の間の空気は少し和らいだ。そのまま、彼らは並んで歩き始める。

道はしっとりと湿った土の匂いを漂わせ、森を抜けた風が木々を揺らしていた。空にはまだ夜の名残があり木々の隙間から朝焼けが頬にあたる、遠くで鳥がさえずり始めていた。どこかこの世のものとは思えない雰囲気を纏っている。


「はーい♡勇者クン♡」


甲高く、場違いな甘ったるい声が、森の中に響き渡った。二人は同時に足を止めた。

そして次の瞬間、目の前に現れたのはとんでもない格好をした痴女だった。桃色の髪のツインテールに、肌を露出しそれをタイツで包んだ、きわどい派手な衣装。さらに、背中からは悪魔のような小さな黒い翼が生えている。エドリックはその衝撃的な見た目に顔を赤くしながら手で口元を抑えたが、クロエは対照的に短剣を抜き目の前の女を警戒した。


「知り合いか?」


クロエは痴女の方を見ながら目を細め、低い声でエドリックに質問をした。


「い、いえ。……クロエさんこそなんでそこまで」

「バカッ!あいつは淫魔(サキュバス)、敵だぞ!」

「えっ!?」


エドリックの間抜けな声と同時に、痴女――サキュバスは嬉しそうにくすくすと笑った。


「半分正解♪アタシはただの淫魔じゃなくてぇ……。最上級淫魔(ロードサキュバス)、そして魔王七大悪魔が一人、"色欲"のレイン様よ!」


その場の空気が凍り付いたように静まり返った。エドリックとクロエはレインを困惑したような表情で見つめた。


「え、なに……。もしかして知らないの?」

「クロエさん、知ってます?」

「私もそこまでは」

「な、なによ!せっかくちょっとカッコつけてみたのに台無しじゃない!」


レインは顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。


「まあ、いいわ!ならどれだけあたしが凄いか教えてあげる。そうねぇ……」


「うーん」と悩みながらレインは人差し指を頬にあてながら悩んでいる。「あっ!」となにか閃いたように声を上げ、話し始めた。


「この前、アンタの国にいーっぱい魔物が来てたでしょ?あれ、私の部下の一部って言ったらどう思う?」


挑発する様にニヤつきながら言ったレインの言葉に、エドリックは先程までの緩んだ気分を引き締め目の前の相手に敵意むき出しで警戒した。


「クロエさん、アイツめちゃくちゃヤバいです!」

「ああ、そうらしいな!」


(マ、ホントはあたしの部下でなんかじゃないけど……)


警戒するふ二人をよそにレインは内心舌を出しながら笑った。


「エド、気をつけろ。淫魔は男を魅了して精気を吸い取って相手を殺す。狙われるならお前の方だ」

「はい……!」


二人はレインから更に引くように間合いをとるが、レインは決して態度を変えず話し始めた。


「そうやって間合いを取っているようだけど、意味ないわよ。」

「?」

「だってぇ……、勇者クンはもう、アタシの術にハマっちゃってるもん♡」


レインは人差し指と中指でエドリックに向かって投げキッスをするような仕草をしながら魔法を唱えた。


「チャーム・コール」


レインの魔法がエドリックに向かって飛ぶ。エドリックは避けきれず魔法にかかってしまうとその場で苦しそうに身もだえた。


「エド!」

「アッハハ!コレで勇者クンもあたしのモノ!これからたーっぷり可愛がってアゲル♡」

「あああああっ!」


エドリックは体の内側から何かがグツグツと湧き上がってくるような感覚に襲われた。五感全てが熱く、脳が飛びそうになる。今すぐにでも目の前にいる淫魔に飛びかかりグチャグチャにしてしまいたくなった。その本能を抑えきれず足を前に踏み出した時───


"美味そうな魔力……、イタダキマスッ!"


「あああ!あああ?……あ、あれ?」


急に先程まで昂っていた感情が無くなり一転、嘘みたいに爽やかでスッキリとした感覚になる。三人はその場で固まり、しばらく静まり返った空気が流れた。


「ん?え、エド……?」


様子のおかしいエドリックを心配し、クロエが恐る恐る声をかける。


「あ、あれ?何とも、ない?」

「は、はぁ!?そんなわけ……!"チャーム・コール"!!」


レインは先程の時とは打って変わってやけくそ気味に放った。エドリックは再びその魔法を食らってしまう。


「ああああ!!」


しかし今度は先程よりも効果が薄く、あっさりと魔法が消えてしまった。


「ああああ、あぁぁ……あれ?」

「……もしかして、魔法……効いてないのか?」

「なんで効いてないのよ!アンタ、あの時ちゃんとワイン飲んだわよね!?」


レインはエドリックに言い放ったあと、くるりと周り姿を変えた。エドリックには彼女のその姿に見覚えがあった。レインが変身したのは紛れもなくあの村の酒場の店員だった。


「え!?あの時の!」

「そうよ!あの時飲ませたワインに私の血を混ぜて、相手に飲ませれば絶対に服従させられるはずなのに!」


レインは地団駄を踏みながら、二人にあたった。


「もういい!アッタマ来た!!帰る!」


レインが指をパチンと鳴らすと、彼女の後ろに彼女と同じ大きさくらいの黒い渦のようなものができる。


「じゃあねー。今度は絶対に堕としてあげる♡」


レインが黒い渦の中に入っていくと、プツンと渦が消える。その場には武器を持ったまま固まっていた2人だけが取り残されていた。


「なんだったんだ今の」

お久しぶりです。

ゆるゆるです。

投稿が遅くなってしまいすみません。

これからもこんなことがあるかもしれないのであしからず。

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