遺跡攻略作戦
早朝すぐに、エドリックは目が覚めると、荷物をまとめ樹海に入っていった。樹海の木々はどれも背が高く、一番低い物でも目測10mはあった。木々は疎らに生えているというよりは誰かに管理せれているように整列されて生えている。
「おかしい……」
樹海に入ってから約一時間、先ほどから何度も何度も同じような分かれ道が続いている。左を何回行っても、右を何回行っても、左右を交互に行っても、分かれ道から抜け出すことはできなかった。
「んー?」
エドリックは試しに地面にバツ印を書き、再び分かれ道に入っていった。案の定分かれ道に再びつくと地面を見た。地面には先ほど記したバツ印がついていた。このことから今までこの道をループしていたことが分かった。
「まじか、どうしよっかな……。それっぽい目印なんてどこにもないし」
こういった遺跡などの古代の人が残した物にある魔法や技術などのギミックは当時の人たちがわかるような目印や法則などがあると勉強したことがあるが、この分かれ道にはそういったものが見つけられなかった。
「んー……。ん?」
分かれ道の真ん中に生えている大きな木の幹によく見るとうっすらとマルとバツの印が描かれていた。エドリックはある疑問を感じ、剣で同じように印をつけた。
「傷のでき方がほとんど一緒だ」
傷をつけた部分の中身が今付けたものと付いていたものでほとんど同じだった。前から付いていた印の傷は木自身による修復が行われておらず、それはつまり最近ここを通り、遺跡に向かった人がいるということになる。
「まぁ何はともあれ、これで遺跡に迎えるはず。……ありがたく使わせていただきます」
エドリックは印をつけた誰とも知らぬ人に感謝を告げるとマル印の方へ進んだ。分かれ道に出ると地面を見る。今度は地面にエドリックが付けたバツ印は描かれていなかった。どうやら先に進むことができたようだ。木の幹を再び見ると、同じようにマルとバツの印がついていた。エドリックはマル印の方へ進み続ける。道中何となく木に分かれ道を超えた回数を付けながら進み続けようやく分かれ道を抜けるころには木に付けた数字も50を超えていた。
「あー、やっと終わった……これマルバツを付けた人って、これをごり押ししたってことだよな?とんでもねぇな」
先人の胆力と根性に感心しつつ、前に向き直ると巨大な遺跡が見えた。
「これが女神さまの言っていた遺跡か」
遺跡はほとんどが倒壊しているような状態で、あちこちん衣破片が転がっている。どれがどの部分であるのかも分からないほどだった。しかしその名kで唯一四角い建物を見つける。外から中の様子をうかがうと地下に向かって階段が伸びていた。
「暗くてよく見えないな」
エドリックは懐から石を取り出した。メーフ村で購入したもので、衝撃を加えれば蓄えていた光を発する衝光石と呼ばれるものだ。エドはそれを遺跡の適当な石で叩き光らせた。
「うわまぶしっ……!」
目を半開きにしながら石を持っている手を前に突き出し地下へ続く階段を下りていく。階段はエドリックが思っていたほど長くなく、2,3分ほどで一番下につきそれ以降は一直線に続く長い廊下になっていた。廊下を奥にまっすぐ歩いていくと、定期的に台座の上に蛇のようなものが置かれた石像があった。どれくらい歩いただろうか、だんだんと後ろと前の感覚がなくなっていき、自分がどこにいるのか、進めているのか、目を開けられているのか、分からなくなっていく。気が狂いそうになっているとき、どこからか苦しんでいるような声が聞こえ、正気に戻った。
「だ、誰かいるんですか?」
元々、予想はしていた事だ。ただいざ対面するとなると緊張感が体を強張らせた。恐る恐る声のする方向へと向かっていく。手に持っていた衝光石のおかげで少しづつ声の主の輪郭があらわになった。声の主は石像に体を持たれかけていた女性だった。黒髪を後ろで纏め一束にし、服は少し露出の多い動きやすそうなものを着ている。肌は褐色で、頭からは特徴的な獣耳が生えている。おそらくネコ科の獣人族だろう。腹部からは血を流しており虫の息の状態だった。エドリックは急いで獣人の女の安否を確認する。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ろ、ぇぉ……」
彼女は小さな声で何かを伝えようとしていたが、うまく聞き取ることができない。
「何ですか!?」
「ぅ、しろ……」
「後ろ?」
振り向くと目の前に壁があった。壁は上下左右の壁まで隙間なくできており、台座に置かれている蛇と同じ蛇が蜷局を巻いている絵が描かれている。
「な、なんだ。ただの壁じゃ……な!?」
突然、壁がエドリックたちに向かって少しづつ動き出した。エドは急いで獣人の女を担ぎ来た道を戻った。
「うぉぉぉぉおおおおお!死ねるかぁ!!」
壁は台座を破壊しながら向かってくる。幸い動きは遅く獣人の女も比較的軽かったので逃げられた。しかし、
「なんで、こっちにも壁が……!」
出口側のはずの通路にも行く手を阻むように同じ壁ができていた。正面に壁、反対側にも迫りくる壁、まさに絶体絶命だった。
「なんでこんなことになってんですか!!」
担いでいた獣人の女を下ろし、肩を揺さぶってそう問いかけた。
「しら、ん……!ただ、奥の部屋、でこれを取ったら、急に、だ!」
そう言って彼女は青く輝くオーブを取り出した。
(蒼玉!!どのみちこうなってたのかよ!)
エドリックは出口側のけべに向き直ると剣を引き抜いた。
(完全に止める方法は分かんないけど、勇者の剣なら穴をあけるくらいできるはず……)
「気を、付けろ……!」
壁に穴を開けようと攻撃のための一歩を踏み出したとき、後ろからそう声がかかった。それに反応する間もなくエドリックの横っ腹を鞭のような一撃が襲い掛かった。
「ぐふっ!?」
そのまま壁に打ち付けられる。朦朧とした意識の中、頭から流れた血で右目が見えなくなりながらも攻撃された方向を見る。そこには触手のようなものがうねうねと動いているのが見えた。
(いや、あれは触手じゃない……。尻尾だ!)
尻尾の付け根は先ほどまで迫り来ていた壁から生えておりうねうねとこちらの様子をうかがっている。反対側、出口側の壁を見るとそこから何かが生えてきていた。
「!?」
壁から生えてきていたのは大蛇だった。大蛇は台座に置かれていたものと同じ姿形をしていた。
「こいつはここの守り神ってとこか!」
失いかけていた意識がようやく戻り、改めて大蛇の姿を観察する。大蛇の体は尻尾の先と頭から上半身あたりまでがそれぞれ壁から生えてきている。首の横からは襟のようなものが生え左目の部分は削れたようにくぼんでいる。
「頭の、頂点に、私が付けた傷がある……。そこをねらえ……!」
獣人の女は血反吐を履きながらエドリックにそう言った。頭の頂点部分をよく見れば、確かに割れたような日々の入った傷ができている。とはいえ傷は地面からかなりの高さのところについており、あれを狙うのは相当骨が折れそうだった。エドリックは足をふらつかせながらなんとか立ち上がる。さっき食らった一撃でかなり限界を迎えていた。大蛇はお構いなしに再び尻尾で薙ぎ払ってきた。今度は剣で受け止めるが力負けし、壁に追いやられてしまう。
(痛い、尻尾と壁に挟まれて圧死しそうだ……!)
大蛇はらちが明かないと判断したのか一瞬尻尾を緩め、エドリックに向けて再び勢いよく叩きつけた。しかしエドリックもそれを見逃さず、うまくその場にしゃがみ込み攻撃を回避した。尻尾は壁に埋め込まれ抜け出せなくなっていた。
「今だ!」
エドリックは走り出し、大蛇の体をつかみよじ登った。大蛇はそれを嫌がるように上半身を暴れさせエドリックを振り落とそうとした。エドも負けじとしがみつき、何とか大蛇の頭頂部へたどり着く。
「これで、終わり!」
思いっきり剣を頭の傷に刺すが、なんと弾かれてしまった。さらにはパキンッ!と音を立て剣の刀身が折られてしまった。
「はぁ!?」
大蛇は頭を大きく振りエドリックを地面に落とした。地面にたたきつけられたエドリックは痛がりながらもすぐに立膝の状態に起き上がり、大蛇と剣を交互に見た。
「そんな、勇者の剣が……!」
傷がついている部分でさせ剣を折れるほどの硬度だ。全身はとてつもない硬さであることが分かる。大蛇は怒り狂ったように暴れまわりながら攻撃してきた。エドリックは蛇の攻撃を必死に避け続けながら何か弱点はないか探していた。攻撃を避けているさなか横目に大蛇の窪んだ左目が映った。エドリックの脳内にある考えがよぎった。
「すんません!その持ってる玉、この蛇の左目ですよね!」
エドリックは台座裏に隠れている獣人の女にそう質問した。彼女は瞑っていた目を開けると弱弱しく答えた。
「あ、ああ……」
「それ!こっちに投げて下さい!」
「!?だめ、だ……!やっと手に入れたんだ、渡せるか……!」
「死んだら元も子もないでしょ!……早く!!」
獣人の女はしぶしぶエドリックに蒼玉を投げた。カランッコロンッと地面を転がりながら数回バウンドしてエドリックの足に当たった。エドはそれを拾うと、蒼玉を剣の刃に近づけた。刃は蒼玉に触れると、まばゆい蒼色の光を放った。光が消えると、エドリックの構えていた折れたはずの剣には、蒼色の刃ができていた。"勇者の剣"は"勇者の蒼刃剣"に進化した。
「これなら、斬れる……!」
大蛇は剣の変化にかまうことなく再び尻尾で攻撃をしてきた。エドリックはそれを躱すと、そのまま剣で大蛇の尻尾を切り落とした。尻尾は先ほどまでの硬さが嘘のようにいとも簡単に切断された。大蛇はさらに怒り、今度は自身の牙を剥き出しエドリックめがけて突進した。エドリックは剣を両手に持ち、自分の前に構えるとグッと足に力を込めた。大蛇はそのまま剣に突進すると、剣と触れた部分から半分に割けるように切れ、両側の壁に激突しそのまま動かなくなった。
「はぁ、はぁ……」
エドリックは息を切らしながら獣人の女のもとへ向かう。彼女はの意識を失いかけている眼は蒼い剣と自分を助けた少年の慌てたような顔が映っていた。
5話目です。
小説書くのむつかしいね……。




