犯行現場
とある安アパートの一室で男の死体が発見されたとの報告を聞いて、鬼椿貞男警部とアグネス滝本刑事のふたりは、その現場へと向かった。
古いアパートの一室の前に到着して、その中に足を踏み入れると、万年床の上に下着姿の小柄な男がうつ伏せになって倒れているのが見えた。男は両手両足を大きく開いた状態で倒れていて、肘と膝の関節は直角に折れ曲がっている。その姿は、まるで叩き潰された虫のようであった。
部屋の中は閑散としていて、ほとんど物も置いていない。万年床と小さなちゃぶ台があるだけで、壁にはミヤコ〇々のポスターが貼られている。
「死体を発見したのはアパートの大家で、今朝の7時頃とのことです。男の名前は、大家によると『狗佐為珍滓』だそうですが、偽名でしょうか、警部」
「そうとしか思えんが、もう少しましな名前はなかったもんかね‥‥‥‥おや、これは何だ。死体の指の形がおかしいぞ」
鬼椿警部が、死体の両手に不審な点があるのを発見した。死体の両手は開いた状態であったが、中指と薬指が内側に折りたたまれていて、頭部から少し離れた左右の位置に置かれている。
「これをどう思う、滝本くん」
「さあ、まるで〇〇留〇〇の漫〇に出てくる殴り飛ばされた男みたいですが‥‥‥」
鬼椿警部も滝本刑事も、意味が分からずに頭を捻っていた。
「見てください、警部。ちゃぶ台の上にノートが置かれています」
今度は、滝本刑事がちゃぶ台の上に置かれた一冊のノートを発見した。
「もしかしたら、遺書かもしれないな。早速中身を見てみよう、滝本くん」
ノートを開くと、手書きの文字が並んでいるのが見える。ふたりは緊張した面持ちで、それに目を通した。
ゼンラマンの歌
どこの辺りから勃ってきたのか不思議
大麻吞んでる ジュオンジュオンジュオン
朝までイケる
あれはゼンラマン 性器の守り神
あやつる玩具 ゼンラライオン
ムケててステキ!
蕎麦と寿司と蒲鉾で年を越え
ゼンラマン (キンタマホールド)
ゼンラマン (ピアスリング)
働け ゼンラマン
「‥‥‥何だね、これは」
「下品な替え歌のようです、警部」
「もういい、帰るぞ」
頭のおかしい状況に我慢がならなくなった鬼椿警部は、滝本刑事を連れて犯行現場を後にした。
その後、事件は迷宮入りした。