第三話 天邪鬼
スワ国へ来て10日。
完全にこのスワ国での暮らしに俺は馴染みきっていた。
俺はミナカタの薦めで主に狩りを仕事として行うグループに所属となり、仕事は日が昇り始める頃合いから始め日が傾き始める頃には仕事を終えるという超絶ホワイトぶり。ひたすら獲物を追いかけるという仕事内容なので溜まりに溜まった運動不足が仕事の中で改善している事に喜びを感じていた。
仕事を終えた後はスワ国の人達に弓の射る方法や獲物の解体方法等ここでの暮らしを学びつつ、幼女から与えられた能力の解明に勤しんでおり、そんな中でとある一つの仮説が生まれた。
それは『想いを力にする能力』
猪に跳ねられた際に無傷であった点がまず一つ、そして運動能力底辺の俺が狩りという体力仕事についていけてる点、この二つの点から俺は無意識的にも能力を使っているんじゃないかと考え、勝ちたいという想いを抱きながらミナカタに腕相撲で勝負を仕掛けた……があっさりと負けた。
最強能力だと勝手に思い込んで無茶する前でよかった。ってかそうだよな!俺別に自己実現能力高くないしな!!
じゃあ一体ツクヨは俺の何を見出して力を与えてくれたんだろうか……と落ち込んでいても仕方ないので他のスキルアップをしながら一年に一度スワ国で行うとされる祭り、オントウ祭に向けて俺は準備を手伝っていた。
そして、準備も大詰めで祭りを明日に迫ったスワ国にとある来訪者が現れた。
「我はアスラ様、日の巫女様代理の下参上せし者なり。この地に現れし異邦人をマヤ大国まで連れて参れとのお達しである。すぐに異邦人を差し出せ!さもなくば無駄な血が流れる事になろうぞ」
おいおい……あいつが言ってるのって俺の事だよな?……しかもかなり物騒だし……
でも俺が出て行かなきゃ無駄な血が流れるって……
俺は住居の中から出て行こうとする……と住民は俺の手を握り首を横に振り「スワ様を待て……今君を守れる者がいない状況で出ていくのは得策ではない」と制止した。
しかし今ミナカタは近隣の森に魔物退治に出かけている。異なる者が彼の土地に入ってきている現状きっとこちらを優先してスワ国へ向かってくれているとは思うが……
さっさと俺なんか突き出せばいいのに、異邦人である俺の為にスワ国の皆はだんまりを決め込む。
その様子に痺れを切らした使いの者は「しらばっくれるつもりかこの下民共。ならば貴様らの命を以てオントウ祭の贄となるが良いわ!!」とそう言って近くにいた親子の親の腕を掴みながら鞘から剣を抜き振り翳す。
子は泣き叫び、親は子を近づけまいと必死に制止する。
なんでだよッ!!ここまでされてなんで誰も俺の居場所を言わないんだ!!あの親子だって俺の事を話しちまえば助かるだろうに!なんでなんだよ!!こんな展開……絶対に嫌だ!!
そう否定した時一瞬意識が遠のく様な感覚に襲われ、親を失った子の活力を失った姿が目の前に映った。
これは未来の……あの子の未来か……?
ツクヨが……ツクヨの力がこれを見せているのか?……
だとすれば今ここで行かなきゃな。また彼女に出会えた時に顔向けできないよな。
『また会おう……誠』
彼女の言葉を胸に俺は静止する腕を振り払った。そしてそれと同時に奴は親の首目掛けて剣を振り下ろす。
俺は親に向かって飛び出していき勢いを殺さず突き飛ばした。しかし振り下ろされた剣は止まる事なく俺の首に食い込み、そのまま身体と頭を二つに分けて頭はゴロゴロと転がっているのがわかった。
グエー死んだンゴ……
間違いなく死んだわ。遠くに俺の首チョンパされた身体が残っとるもん。
ああ……でも断首されてもしばらくは死なないとかなんか言ってたな誰かが……きっとこれは段々と意識が遠のいてっていつの間にかっていうパターンですな……
意識が遠のく前にオントウ祭について解説していくぜ?ゆっくりしていってね
オントウ祭とはこのスワ国で一年に一回この時期に行われる祭りで最大の見所といえば鹿や猪などの頭と魚や雉、食べ物を神様に生贄としてお供えする所なんだぜ。俺が狩りのグループに薦められたのもこの祭りに向けて人手が足りなかったかららしいんだ。今回まさか自分の首がチョンパされちゃうとは思ってなかったけど俺の首は捧げずちゃんと身体と一緒に土に埋めてほしいよな
なんて意識を保っていると誰かが俺の頭を拾い上げて俺の顔を見る。
ミナカタだった。