初セーブと絶望
3人は魔導士と魔法剣士の夫婦の3つ子として生まれた。
母はハーフエルフ、父は人間だったためクオーターエルフとして生まれた。
ハーフエルフは特徴としてそのほとんどが耳が純血エルフより短い、そしてクオーターエルフになると耳は通常人間の同等となる。
しかし3人のうちアオイ以外の二人は純血のエルフと同じ耳の長さがあった。
極めて珍しい現象である、父親の遠い親族にエルフがいたのかもしれない。
アオイは魔力量の少ない男の子
リサとレイジは魔力量の多い一卵性双生児へと生まれていた
レイジは思った
なぜ自分だけ性別が変わっているのかと
アオイの名前はそのままアオイ
リサはリサ
レイジはレイラと名付けられた
夫婦は3人に同じ痣があることに気付いたがそういうこともあるのだろうとあまり気にしてはいなかった
子供たちは言葉を覚えるのが早かった、1歳になるころには魔法の本を読み始めていた
そしてその世界の言語のほかに日本語も使っていた、夫婦は不思議がったが何を言っているのかわからないため追及することもなかった。
数年後
3人は6歳になっていた、相変わらずリサとレイジは仲があまりよろしくない
同じくアオイとレイジも多少ギクシャクしている様子だ
しかしながら互いに力を高めあっていた
リサには魔法の才能があった、魔力量もさることながら複数の魔法を同時に展開することもでき様々な属性の魔法を使うことができた
レイジは魔法剣士として才能を開花させていた、剣に魔法をまとわせたり、トラップ魔法などを駆使し敵を翻弄することができた
そんな中アオイは魔力量が少ないため魔導士としても、魔法剣士としてもうまくいっていなかった
彼には闇魔法が使えたが闇魔法には攻撃系の魔法が少ないため戦闘には不利である
アオイには現実世界で武術の心得があった、アオイは一度見たことのある動きをトレースできる能力があった、サヴァン症候群と呼ばれる一種の病気である。
無論体格の違いや関節の可動域などでトレースできない場合もある
アオイが一番得意としていたのはマジックキャンセル
相手や自分が使った魔法を消すことができる闇魔法だ
魔法が使える世界で魔法を打ち消すことができるのはかなりのメリットだ
ただしマジックキャンセルは同時に2回しか使用することが出来ないため複数人との戦闘ではあまり役に立たないかもしれない。
アオイはある提案をする
アオイ
「ここで一度セーブポイントを作っておかないか?」
他の二人は意味が分からなかった
続けてアオイは話し出す
アオイ
「つまりこういうことだ、セーブポイントを今この場所にしておけばもしこの先の未来で死んだとして、6歳に戻れる、これはかなりのメリットだと思うんだがどうだろう」
二人は意味を理解した
二人
「わかった、やろう」
三人は自害した。
TM
「やあ、6年ぶりですか、早かったですね」
アオイ
「御託はいいセーブポイントへ戻してくれ」
TMは少し笑いながら三人をセーブポイントまで戻した
アオイ
「これで万が一何かあったとしてもここに戻ってこれる、死ねる回数が1回減ったとはいえこれは絶対にかなりのメリットになるはずだ」
二人もアオイに賛成した
そして8年間修業を続けた
リサは魔導士としては既に上級魔導士レベルへと達していた
レイラは魔導剣士として既に父親を超えていた
アオイは武術の鍛錬や暗器の開発、武器の開発もして二人に合った魔道具を渡せるレベルになっていた
この世界にはゲームのようにHPやMPを回復できるアイテムなどは存在しない、生まれ持ったものを使用し、食事や睡眠で回復する必要がある。
魔力量の少ないアオイは攻撃魔法を乱発することはできない。
三人の14歳の誕生日
成人式である小さな村で育った三人はまだ外の世界へと出たことはない、村の周辺で弱い敵と戦ったことがある程度だ。
デスペラードの所在は分かっていた、世界で一番大きな国の王の城に住んでいる
今の3人では到底勝つことはできないだろう。
まずはTMから得た情報を基に一番弱いとされるボスへと向かうことにした。
父と母は笑顔で見送ってくれた。
レイラ
「よっしゃ、俺たちの旅はここから始まるんだな!」
リサ
「あんた一応女なんだからもう少し気を使ったしゃべり方はできないわけ?」
レイラ
「あのなあ、体は女でも頭の中は男なんだから無理に決まってるだろ」
アオイには二人が痴話喧嘩しているように聞こえた
14年経ち3人はすっかり仲良くなっていた
アオイ
「近道はこっちだな」
アオイは地図を見ながらそう言った、そこへリサが口を出す
リサ
「ちょっと待って、こっちはエルフがいるからやめといたほうがいいって母さんが言ってたじゃない」
確かにそういっていたのをアオイは覚えている、しかしそもそもリサとレイラは見た目はエルフである、しかしアオイの見た目は人間だ
この時アオイは楽観視していた、本物のエルフの強さを知らなかったのだ。
そして事件は起こる
エルフが住む森の中で三人は一人のエルフに見つかってしまった
エルフ
「何者だお前たち、エルフ二人と人間の組み合わせ、奴隷商か!」
アオイは訂正する
アオイ
「僕たちは兄弟です」
エルフ
「馬鹿を言うな、純血のエルフと人間が兄弟であるはずがないだろう!」
アオイ
「だからそれには…
次の瞬間アオイの首へと剣が振られる
アオイ
「キャンセル!」
「ブースト!」
アオイの蹴りが空を切る
エルフ
「人間にしてはやるじゃないか、本気で行く」
次の瞬間アオイの心臓が矢に貫かれていた
全く見えなかった、何をされたのか全く分からなかった
アオイ
「キャン…ゼル…」
アオイは絶命した
エルフの寿命は500年ほどとされている、対峙したエルフは大人だったためおそらく300歳前後であろう
ここまで力の差があるとは思っていなかった、アオイにとっての誤算はそれだけじゃなかった
死んだのが自分一人だけという状況だ
つまりレイラとリサは生きている
アオイは一人TMの部屋で待つ
二人は自害して帰ってくるであろうか、それとも…
エルフ
「大丈夫か二人とも」
二人は突然の出来事に言葉が出ない
生まれてから死ぬ気で修業した、そう思っていた
甘かった
デスペラードどころかただのエルフに全く歯が立たない事実を知った
レイラが小声でリサに喋りかける
レイラ
「戦うか?」
リサ
「無理よ、勝てる気がしないわ」
レイラ
「じゃあどうするんだよ」
リサは考えた
リサ
「あの、助けていただいてありがとうございました、お願いがあるんですが私たち二人に修行をつけていただけませんか」
リサはエルフへと頼み込む
レイラは小声で話しかける
レイラ
「アオイはどうするんだよ」
もっともな意見だ
リサ
「次私達が死んだらどうするか決めたでしょ、6歳に戻って修行しなおすのよ、そのために今よりもっと強くなっておく必要があるわ」
エルフは耳がいいがさすがに日本語を理解できるわけではないので二人の会話の内容は全く分からない。
エルフ
「修行か、良いだろう少し実力を見せてみろ」
エルフはそう言うと剣を構えた
数分後
エルフ
「話にならんな、なぜ貴様らその年でそこまで弱い」
エルフは二人を純血のエルフだと思っているため年齢を勘違いをしているようだ
だがそれを訂正することはできない
実際のところ14歳のエルフとしては二人は強すぎるレベルだ
場面はアオイへと移る
アオイ
「TM、この空間で修業するのはありなのか?」
TM
「ありですがこの空間は魔法は使えませんよ」
アオイ
「そうか、それはちょうどいいかもしれない」
そう言うとアオイはひたすら動体視力を鍛える訓練をした
心臓を貫かれた瞬間実は何も見えなかったわけじゃない、一瞬だが光が見えた
おそらく光魔法だろう
様々なトレーニングを何年も続けた
場面は現実へと戻る
エルフ
「私の名前はレイド、貴様らにこれから毎日修行をつけてやろう」
修行の日々は続いた
しかしリサとレイラ順のエルフではないとバレるのは意外と早かった
2年後
レイド
「貴様ら少し成長が早すぎないか」
これは訓練の成長ではなく見た目の成長の事を指していた
そう、クオーターエルフは見た目の成長スピードは人間とほぼ同等なのである
二人
「実は…」
レイド
「ふむ、そうか、私を騙していたのだな、兄弟を殺された相手に修行を申し込むなど外道の極み、すまないが今日は本気で行かせてもらおう」
レイドの殺意が二人へとびりびりと伝わってくる
3年間修業したとはいえ本気のレイドとやりあったことは一度もない
勝負は一瞬だった
ものの数分で二人は殺された
そしてTMの元へ飛ばされる二人
アオイ
「意外と早かったな」
2年間修業をしていた二人にアオイはそう言い放った
2年間も何もない空間にいたアオイに申し訳ないと思っていたがどうやらアオイは微塵も気にしていないようだ。
アオイ
「あのエルフに殺されたんだろ?」
アオイは何があったかなど知るすべはなかったが大体の予想で喋っていた
リサ
「そう…よ」
TM
「それではどのセーブポイントからやり直しますか?」
アオイ
「決まってる、6歳の時だ」
アオイはそう言った後にまた話し始めた
アオイ
「それと一つ聞きたい、僕が死んだのは14の時だが最新のセーブポイントである16歳は使えるのか?」
TM
「可能です、その場合この空間で育った肉体が継承されます」
アオイ
「6歳に戻った場合はどうなる?」
TM
「肉体は6歳へ戻りますが脳内や覚えた魔法等は継承されます」
アオイ
「そうか、それはよかった」
そう言うとTMは6歳のセーブポイントへ3人を戻した
三人が同時に自害したあの日の10分前
アオイ
「まずはあのエルフを倒すのを目標にしよう、あくまで殺すのではなく倒すのが目標だ」
二人
「分かった」
アオイは二人からあのエルフの情報を聞き出した、使用している魔法や魔法の使い方、魔力のコントロールの仕方、父と母とは比べ物にならない情報が聞けた。
アオイ
「このセーブポイントはもう使えない、残りの残機が3、なるべくなら自害はやめたいと思うが二人はどうだ」
リサ
「そうね、子供の体じゃ色々と限界があるから自害するにしても成人してからのほうが私はいいと思うわ」
レイラ
「俺はどっちでも構わん」
アオイ
「じゃあ二人の修行のせいかとやらを見せてもらおうか」