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世界の均衡

ぼちぼち更新です。

 

 (57)世界の均衡(きんこう)


「黒い奴ってダグラスのこと? 影響ってどういうこと?」


 ミリアはエリンの思わず漏れた言葉を聞き逃さなかった。自分に降りかかった現実味のない話よりも、そちらの方がよほど重大である。



「えーっと、だからミリアが落ちた世界はさ、少し前に馬鹿な奴らが俺様達のお気に入りの土地を台無しにしちゃったとこなんだよ。それ以来、あそこの世界の均衡がさー、崩れちゃってるんだよね。まぁ、俺様に言わすと自業自得なんだけどね!」


「…エリン、自業自得って、まさかダグラス達…、彼の国が何かしたの…?」


 ミリアはふとよぎった疑問を口にする。それにエリンはくるっと回ってから、小さな指を立てて横に振った。



「あいつらの国ではないな。腐臭がする国の奴らがいきなりやって来て、全部焼き払っちゃったんだ」

「焼き払っ…、なんて酷い…。――でも別の国なら、彼らは無関係ね」

「でも、同じ人間だろー」

「そ、それは…」


 エリンにキョトンとした顔で返されると、反論しようとした言葉も引っ込んでしまう。



(確かに妖精と人間という括りなら、エリンの言う通りだわ)


「それにさ、あそこ以外にも世界は一杯あるけど、精霊が関わってる所は多いんだよー。じいさんの居た世界はほとんど精霊が居なくなったけど、代わりに不思議な道具がいっぱいあって、それはそれでうまく均衡がとれてる珍しい世界なんだ」


 ミリアにもエリンの言わんとしていることは、何となくわかった。科学が発展した世界では、精霊の力に頼らなくても、様々な道具を使うことでうまく回していけるのだろう。ふと自分の手を見て思い出した。



「もしかして、魔法って精霊の力なの?」

「んー、ちょっと違うけど、自然の力を使うから力の源は一緒かな!それに精霊の力が弱くなると、魔族が力を付けちゃうんだー。魔力と無関係って訳でもないよ」


 ミリアは魔族の言葉に、はっと息を飲んだ。ダグラスの仕事は魔獣討伐だと言っていた。魔獣と魔族が無関係とは思えない。影響が出ると言われた意味が少しずつ頭に染み込んでくる。


(でも、私に魔獣を倒す力はないもの…)


 ミリアが眉根を寄せて考え込んでいると、目の前に座るおじいさんがミリアの頭をポンポンと撫でてくれた。いつの間にかうつむいてしまっていた。



「わしがエリンを保護したのも、ミリアが落ちた世界と関係があるんだよ」


 遠い昔、精霊の愛していた美しい土地を、愚かな人間が己の欲の為に、焼野原にしてしまった。そのせいで、精霊に力を与えてくれていた美しい国土は失われ、その地に居た精霊の力も失われてしまった。


 エリンはその事件に巻き込まれ一時大きく力を失い、世界を渡って逃げた先が子供の頃のおじいさんの元だった。



「わしは小さい頃から石集めが好きで、無意識に力のある石を見分けていたようでの。彼らに力を与える石をたまたまたくさん持っとったんじゃ。その石の気配をたどって、エリンがわしの所へ落ちて来たんだよ。死にそうなエリンを見つけて、焦ったわい」

「そうそう。あの時はさすがに消えちゃうかと思った」


 精霊は力の源がなくなると、徐々に力を失い、最後には消滅してしまう。エリンの仲間の精霊たちは、それ以来散り散りになってしまい、未だに姿が見えない子も居るという。



「エリンは石の妖精さんだったのね」

「そうだよ! だから、俺様のとっておきをあげたミリアのことも、お気に入りだよ!」


「確かに人間は酷いことをしたわ。謝って済む問題ではないと思う。だけど、悪い人間も居れば、良い人間も居るの」

「じいさんみたいなのも居るしさ、それはわかってるよ。だから、王様もミリアをあの世界に落としたんだと思うな」


(そこで私の話に繋がる…ということは)



「……私は何をすればいいの?」

「そう来なくっちゃ!」


 ミリアは覚悟を決めて、まっすぐにエリンを見つめた。


(私が人間になって、あの世界に落とされたのには理由があったのね。もし手助けとやらを失敗したら、人形の体に戻されるのかも。……どちらにしても〝死ぬ〟のと同じ意味だわ)


 一度人間として生きる喜びを味わってしまうと、再び人形として生きる未来はうまく想像できなかった。


(…いつのまにか、贅沢な望みを持ってしまっていたみたい)


 己の立場を理解して自嘲したように笑ったミリアを、おじいさんは心配そうな顔で見つめていた。



読んでいただいてありがとうございます。

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