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離別と覚悟

 

 (34)離別と覚悟


 光の強さは昼間の太陽のようで、思わず手をかざして薄目で光の発現場所を見る。木々の向こうに見える光は、真っ直ぐ上空にも伸び円筒状に光を放っていた。……そして跡形もなく消えた。


「………くそっ」


 知らずに緩めていた手綱をもう一度強く引き、キーヴァと風を切って駆けていく。



(頼む、間違いであってくれ!)


 もはや、ダグラスには確信めいた予感があった。何度もよぎるその予感を無理やり追い払って、すぐに光が消えた場所へたどり着いた。


 飛び降りるようにキーヴァから降りて、何かが転がっているそこへ走り寄る。そこには地面に広がる小さな水たまりと、横倒しになった木桶が一つ、転がっていた。



「嘘だろ? ミリア?」

 桶は山小屋にあった物だろう。水たまりのすぐ横には、くっきりと大きな犬の足跡が残っていた。


「……アッシュ」


 情けなくも震えそうになる体を叱咤して、キッと顔を上げた。彼女達が居たであろう場所をじっと見つめる。よく見ると桶を中心に丸く円が描かれたように、そこだけ小石もなく綺麗な丸になっていた。



(森に現れた時と似た光。…だが、今度は)



「…アッシュが傍に居る。ミリアは一人じゃない」

 ぐっと拳を握りこんだ。爪が手の平に食い込むがさらにきつく握った。



(大丈夫だ、アッシュがあいつを守っている)


 地面に転がる木桶を見つめる。ダグラスはその場に立ち尽くした。すっかり夜の帳が辺りを覆いつくしても、彼はそこにいた。心配そうにすり寄ってくるキーヴァの鬣を撫でてやる以外、動こうとしない。そのまま朝をむかえるまで彼はそこに居た。


 徐々に白んでいく空に顔を上げると、一度目を瞑り、再び瞼を開いた時には覚悟を決めた。



「俺は…あいつを守ると、約束した」


(あいつが自らの意思で、何も告げないまま姿を消すとは思えない。…だったら、俺がやることは一つだ)



 歩み寄って来たキーヴァの首筋を撫でてやってから、彼は少し開けた場所を探し、そこに大きな陣を描き始めた。己の魔力を注ぎ込んで描く、術式魔法である。この国でも彼とリーアムの他には、数名しか発動させることができない。その数名以外の殆どが発動する条件すら満たしていないのだ。ダグラスも練習以外で初めて発動させる。集中したまま迷いなく陣を描いていく。


 全てを描き終わると、ダグラスは軽く息を吐きだした。そして指笛を鳴らした。さほど待つことなく舞い降りたハリーに餌をやり、持っていた残り全て拾いあげた木桶に入れて地面に置いた。森においてハリーが餌に困ることはないだろうが、しばらくは狩りをせずとも過ごせるはずだ。



「ハリー、よく聞いてくれ。ミリアとアッシュが消えた。俺は皇都へ行って情報をかき集めて来る。お前は、ミリア達が戻って来た時のために、ここで居てくれるか。もし、あいつらが現れたらすぐに皇都へ知らせて欲しい。わかるな?」


 ハリーはじっとダグラスの目を見つめた後、くるっと首を回した。了承の合図だ。ダグラスはハリーの背中を撫でおろすと、空に放った。そのまま木の上高く舞い上がり、はるか上空で旋回をしている。



「頼んだ! ハリー」


 キーヴァと描いたばかりの陣の中心に立ち、もう一度ハリーに声をかけると、甲高い声が返って来た。ダグラスはキーヴァの手綱を持ち、転移魔法を発動する。描いた陣から光が上へ浮かび上がる。足元から青白い光に包まれていき、彼らの姿をうっすらと覆っていく。光の消えた後は、彼らも陣も跡形もなく消えていた。



物語が動き始めます。

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