魔道具
(30)魔道具
この国には魔力を動力源とした様々な魔道具がある。森の家の家財道具はひと昔前のもので、魔道具がまだ一般家庭まで普及していなかった時代の旧道具だった。そんな魔道具の中には、ダグラスが休暇に入る前まで日常的に使っていた物もあった。
ウィローでミリアが男に声をかけられたのをきっかけに、町で魔道具をいくつか購入することにした。さらにミリアと皇都へ行くと決めてからは、簡易コンロや、地面に置くと枕サイズから自動で膨らむ、簡易ベッドなどを旅支度品として買い足した。
この簡易ベッドを店で手にしたダグラスが、人知れずがっくりと肩を落としていた。ちなみに簡易ベッドの上に寝袋を置いて使用するのだが、寝心地は通常の寝具に引けを取らないと旅支度品として大人気商品である。
魔道具を買うに当たって、気になっていたミリアの魔力値を、ウィローの教会で測定した。結果は一般的な数値の半分以下で、かなり少ないことが判明した。その数値の低さもあり、旅道具の魔道具は必要最小限に抑えて、その他のほとんどを昔ながらの道具で揃えてある。
たとえ魔力を使い切っても命に別条はないが、酷い倦怠感に襲われる。万が一魔力が枯渇してしまうと、しばらくはその場から動けなくなるほどだ。休養で徐々に回復するとはいえ、魔道具の使用禁止を選択するには十分な理由だ。
厳選して購入した魔道具の中の一つに、魔玉石がある。一見普通のガラス玉だが、そこはれっきとした魔道具である。玉は革紐に吊り下げられているのが一般的で、日常的に手首に巻いて使う。この魔道具は一対になっている。
その使い方は簡単で、利用者が何かアクシデントに見舞われた際、玉を紐から引き抜いて割る、という方法だ。乱暴に見えるがこの道具の開発理由が、「緊急時の連絡用」なので、よく普及している魔道具の一つだ。
どちらかの玉が壊されることで、玉が割れた場所の情報を対になっている玉に送られるのだ。子どもや年頃の娘に持たせる親が多く、最近ではアクセサリーと見まごう造りの、指輪やネックレスになっている物もある。
そして何より重宝がられている理由は、玉の精製時に魔力を込めるため、使用時に魔力を必要としない点である。魔力をうまく使いこなせない小さな子どもでも、安心して利用できるのが人気の理由だ。
非力な子どもや女性でも確実に割れるようにと、紐と玉を結ぶピンが外れるだけで玉に細かいヒビが入り、そのままにしておいても割れる仕組みの物が最近開発された。少し割高だがダグラスが買ったのはそちらの方だ。
その魔玉石をダグラスは二回目のウィロー訪問時に購入してすぐ、ミリアの手首につけさせた。対の玉を付けるのはもちろんダグラスだ。
一般的な魔道具を使用する際は、己の魔力を起動部分に注いで動かすものが多い。幼い頃より魔力が体内にあるのが普通で、魔力を使うのが当たり前の世界で生きてきた者は、そう難しいことではない。
だが、魔法の存在しない世界から来たミリアは、自分の体内にあるという魔力を感じることがまず出来ない。魔道具を使わせないのも、制御どころかまるで魔力の一端を感じ取ることができていないのが理由だ。
便利な魔道具も制御できないまま魔力を注ぎ込むと、時には暴発を引き起こすことがある。今でも年に数件、幼い子どもが起こす事故として報告があがっている。この旅は、ミリアが魔力制御出来る様になることも、大きな目的の一つになっている。
読んで頂いてありがとうございます!




