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閑話(2) 寂れた皇宮にて・後


  閑話(2) 寂れた皇宮にて・後



『僕を誰だと思ってる? 自由を手に入れても、体が動かなかったら話にならないじゃないか』

『やっぱり……。きっと怒りますよ、あいつ』

『怒るかな? でもきっと笑って許してくれるよ。だって、僕の息子だもん』


『六十のおっさんが「だもん」とか言わないでください。気持ち悪い』

『だからまだ五十九だってば。気持ち悪いってひどいなぁ。……じゃあ、作戦会議と行こうか?』

『ええ、いいですよ。――あ、パット今日のこの後の予定は? っていうか、お前もこっち来い。そこじゃやりにくい』


 これまで微動だにしなかった彼は、その言葉にさっと長椅子へ移動してきた。



『では、失礼して。…この後の予定は、若手議員との会食が入っています。ちなみにこれまで当日延期を五回しています』

『うーん、正直どうでもいいんだよな…さすがに六回目はまずいと思うかい?』

『さぁ、私の口からはなんとも』


『五回も六回も十回も変わらないよ。今日である必要のない予定には変わりない』

『確かに。よし、無期延期にしよう』

『はぁ……、わかりました』


 同席したばかりのパットがそれを伝えるべく、腰を上げかけた所でオーエンが止めた。



『ああ、うちのを使えばいいよ。――聞いてたよね? あっちの宮に連絡入れておいて』

『御意』


『わっ、いつの間に』

『この方が、オーエン様の…』


 音もなく現れたと思ったら、あっという間に姿を消した。



『あいつだけじゃないけどね。顔は覚えても意味がないよ。いくつも顔を変えられる』

『すごいな。僕も作ろうかな…』


『僕が死んだら君に仕えるよう言ってある、そのうち君のものだ。まぁ、あと三十年は生きるしまだ先の話だけど。使いたい時は貸すよ。あそこまで育てるのに十年じゃ無理だから』


『九十まで生きるつもりですか!』


 確かに実年齢より若く見えるが、長い歴史を紐解いてもそこまで生きた皇族はほとんどいない。近親婚の多かった皇族は短命の比率が高い。



『だてに研究に人生つぎ込んでいないさ。息子の嫁と孫も見ないといけないし、うまくいけばひ孫もこの腕に抱けるかも。それにアイーシャの分も生きるって、決めてるから。そうだな…、無事に百歳超えたら隠居してもいいかな』


『百歳まで現役?!』

『まさか研究ってそっち系…?』


『やる事やりきったら、もう少し早く隠居してもいいかな。アイーシャの故郷も訪ねていきたいし。だから、新しい戸籍はもう手に入れてある。ちゃんと僕の息子と同じ苗字にしたよ。あの子が居ない間に、新しい生活基盤も整えないとね。あ、皇城の適当な部屋をいくつかもらうよ。いいよね』


『好きにしてください。……作戦会議より、今の話の衝撃の方が大きいな』

『同感です』


『さ、おしゃべりはこの辺にして、やろうか。()()()作戦会議』


 この日、明け方近くまで部屋の灯りが消えることはなかった。


次話からようやく時間軸が現在に戻ります!長々と語ってすみません。

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