6話 無知
晴天下、心地よい微風が俺の緊張和らいでくれる気がした。俺は今、【ゴッドウォール】と呼ばれている人類最後の希望の目の前に立っている。
大きく息を吸って吐く。すると、不思議と心が落ち着く。とにかく今俺は興奮状態の自分を落ち着かせよしていた。落ち着けないのにはちゃんと理由がある。それは、これからガチの殺し合いをするからだ。俺は世界を救うため、女神様から力を授かりこの世界に来た。なら、敵である魔族と戦うことが俺に与えられた使命。故に俺はこれから戦うのだ。喧嘩もまともにしたことない男が、戦うのだ。命をかけて。
頬を2度叩き右手をパー、左手をグーにして、グーの手をパーの手の中心に当てた。
「よし、やりますかね」
ようやく覚悟ができた俺はゴッドウォール向かって歩きだした。ゴッドウォールは魔族以外の者は出入りできる壁になっており、簡単に通りぬけられる。しかし、魔族に対しては魔王でさえも通さない程の力を持っているらしい。
ゴッドウォールを通り抜け、俺は敵陣に足を踏み入れた。
ゴッドウォールから出たはいいが、いきなり俺は身動きが取れなくなってしまった。もしや、もう敵の攻撃ははじまってる!? だとしたらヤバイ。力をどんなに入れても身動きが取れない。俺は咄嗟に下を見ていたのだが、視線を感じ前を向いた。
「お前が新しい転移者か・・・はぁ、期待外れだな」
白のツンツン髪に褐色の肌。耳がエルフのように尖った、全身に鎧を装備している男はそう言った。
若干詰みっぽくて力が抜けてきた時、目の前が白炎に染まった。相手が攻撃してきたのだろう。しかしどうしたものか、勝ち筋がまったく思いつかない。
「神から貰った力で安堵してるところだと思うが、一つ教えておいてやる。俺は後2分も経たないうちに、俺の剣はこの白炎を貫通し、お前の心臓を貫くことができる。2分はあるんだ、じっくり打開策を考えるんだな」
死の宣告をされて、俺の心臓は呼吸困難になりそうな程早く鼓動しはじめた。
俺はありったけの力を全身に入れるが、まったくびくともしない。感覚的には見えないコンクリートの壁で閉じ込められている感じだ。
アニメだったら本気、怒りなどでどうにかなるのに、どうしてならないんだよ! 動けよ! 何でだよ!? こちとら、女神から能力貰ったんだぞ! どうにかならないわけがないんだよ。
「あ、もう一つ面白そうだから伝えとくわ。俺、既に4人、お前と能力は違うけど、倒してるんだ。お前は5人目ってことだな」
「あ、完全に心折ちゃったか。じゃ、ご苦労さん転移者」
既に4人の転移者がコイツに負けてる? 冗談悪いぞソイツはよ。あ、そっかだからあんなハーレムなんて用意していたのか。俺が死ぬ可能性の方が高いから、せめての娯楽か・・・死ぬのか俺、2度目も童貞のまま。いや、関係ないか。いや、最後くらいカリナさん抱きたかったな。多分許してくれたよこの感じ。
頬に熱い液体が流れていくのがわかる。痛みというより、意識が薄れていくのを感じる、眠くなってきた。
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