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5話 腕試し

 頬が何かに2度優しく突かれた。意識が覚醒し、眠っている状態に近いが夢から覚めたのは確かだ。

 再び頬を2度優しく突かれた。まだ起きたくない俺は、何か心地の良いもの手の感触で見つけ、抱き寄せた。抱き寄せたものはとても暖かく、感触もよく、いい匂いがした。

 その抱き心地があまりにもよく、俺の意識はまた消え去った。


「い・つ・ま・で、寝てるのー! 2人ともー!」

 アニメの幼なじみを思い出させてくれるような元気な声に俺の意識は無理やり現実へともどされた。最高の抱き枕の感触はまだあった。

 俺をお越しに来たと思われる人物の足音が近づいてきた。

「ほら、起きてください!」

 布団を取られ少し肌寒くなり、俺は布団をめくった犯人の方を向き、目を開けた。目に映ったのは頬を赤く染めたレノアさんだった。そういえば、異世界にきたんだったな俺。

「すみません、邪魔しちゃいましたね。いや、でも時間なんです。朝食の時間なんです」

 何をそんなに気にしているのだろうか、そんな変な事てなかったと思うけど。

「お、おはようございます真那様。すみません、私も急な事で焦ったのですが、その、気持ちよくて2度ねしちゃいました」

 胸元で声がした。カリナさんの声だろう。何故、確定でないかと言うと確定しちゃうと色々とやばいからだ。それも何故か? 簡単だ、俺の胸元いや、近くに今あるのは抱き枕だと思っていた何かだから。カリナさんではない何かだと信じているからだ。

「レノア、わざわざ起こしに来てくれてありがとうございます」

「いえ、そのお邪魔しちゃってごめんなさい」

「気にしないで大丈夫です。私に非がありますから」

 カリナさんとレノアさんの会話が入ってこないほど今俺の頭は混乱している。

 そんな時ふと、足を少しだが、絡めるように柔らかい感触の何かが動いた。わかってはいるものの俺は、意を決して抱き枕かそれではない、何かと信じたいものの方を向いた。

 俺が抱き枕だと思い、抱き寄せたものそれはカリナさんだった。顔を真っ赤にしたカリナさんがここにいるのだ。

 胸、太もも、足が完全に俺と密着しているカリナさんがいたのだ。紛れもない事実。言い訳ができないほどの現実。いっそ、夢の方が現実味あるリアル。


「その」

 カリナさんはさらに体を寄せ、俺の服を手で掴み、何処か名残惜しそうな顔だった。

 ヤバイ、心臓の鼓動の早さが尋常じゃない程早い。落ち着きが足りない程早い。

「起きなきゃですね、真那様。今日は予定もありますし、朝食も冷めてしまいますし、レノアを待たせていますし」

 そうカリナさんは言っているが、カリナさんからは微塵も離れる気配を感じなかった。俺は咄嗟にまず腕をカリナさんから離した。

「うん、おはようカリナさん。いきなり、変なことしてごめんね。朝食冷めちゃうと作ってくれた人に悪いし行こっか」

「はい、かしこまりました」

 カリナさんは俺の言葉を聞き終えると起き上がった。俺は離れていった温もりをもう少し感じていたかったが仕方ない。俺と2人は朝食を食べるため食堂に向かった。






 朝食を食べ終え少し休んだ俺は、朝当番のレノアさんとカリナさんに決闘場まで案内してもらった。そこから少し説明受けた後俺はついに、この国最強の騎士と戦うことになった。


 謎の緊張感を感じながら決闘場に足を踏み入れた。こんな緊張は入試試験ぶりだろう。

 お相手さんは既に中央付近で俺が来るのを待っていたらしい。それと、少し離れたところに審判らしき人もいた。近づく程騎士の姿ははっきりとわかってきた。騎士は騎士らしく全身を鎧を装備しており両手剣を持っていた。鎧の色は全身的に白と水色で、高貴な見た目なだけに両手剣がより恐怖心を仰いでくる。


「どうも、昨日ぶりですね転移者様」

 どうやら昨日会った騎士は、この国最強の騎士だったらしい。それより、この騎士アニメに出てくるような爽やかイケメンなのだが? 転移者が女だったらこの騎士はもしかしたらカリナさんの立場だったのかもしれない。

「ええ、昨日ぶりですね。僕の名前は咲弥真那と言います。騎士様のお名前を聞いてもよろしいですか?」

「私の名前はリーブ・ハルナシといいます」


「両者、準備は宜しいでしょうか」


 俺はリーブと目を見た。リーブも同じく俺の目を見ていた。

 俺達は言葉を発しなかったが、審判は俺達の決意を感じとったのか右手を上げた。


「はじめ!」


 審判が右手を下ろした瞬間、リーブは俺の視界から消えた。俺がリーブを探そうする暇もなく俺の視界は真っ白い炎に覆われた。あまりの非現実的現象に俺は言葉を失った。


 死ぬかと思ったが、俺の能力はホーリーフレイムだった事を今思い出した。


 俺がこれからどう戦おうと考えようと思ったその時、白炎が物凄い勢いで何かを飛ばして消えた。と思ったら奥の壁に恐らくリーブが当たり衝撃音が辺りに響いた。全くもってついていけそうにない。


 電気のような光が奥で光ったかと思えば、俺の左右で白炎の壁が出現した。この壁の向こう側にリーブがいると予想した俺は左右の壁に向かって両手を伸ばし、炎の渦を出すイメージをした。今までなら何も起きなかったが今はもう違う。予想通り俺の両手から白炎の渦が放出された。


 喜ぶ暇もなく目の前にリーブが現れた。体に電気を纏っているのが見てわかった。リーブは電気じゃあかっこ悪いから雷使い!? 属性魔法的なものの中で光と闇の次に個人的に強いと思っている属性なんだが・・・いや、確かに目で追えない訳だ。

 だが、いくら目で追えない光速でも俺のホーリーフレイムで何とかガード出来てる。つまり、俺が考えるべきなのはどうやってこの蚊よりも面倒臭いやつを捕らえるかということだ。


 前後左右、白炎の壁が俺を覆った。しかし、1人しかいないはずなのになぜ、全体的に今ホーリーフレイムはガードしているのだろう。まさか、俺は上を見た。そこには恐らく5人目のリーブがいたのを確認するかしないか曖昧なところで白炎の壁が上も塞いだ。


 目で追えないし、普通に攻撃も当たらない。つまり、俺は全体的に攻撃するしかないということだ。


 俺は下に手を手をかざし、天まで届く炎の渦をイメージした。先程の渦と同じく白炎の竜巻が発生した。後はこれを全体に広げていけば俺の勝ちだと思う。


「そこまでー! 勝者、咲弥真那ぁぁ!!!」


 脳に直接声が響いたようだった。というか、多分テレパシーではないだろうか。勝敗が決まったため、俺は竜巻を止めた。竜巻を止めた後足音が後方から近づいて来たため、俺は後ろ側を振り返った。


「流石ですね、真那様。手も足も出ませんでした」


 そう言ってリーブは両手剣を持っている方ではない右手を差し出してきた。俺も右手を出し、俺達は握手をした。



 その後は特に変わった事は起きなかった。ただ、風呂と眠る時だけは中々に精神を削られた。

 因みに明日はいきなりだが、魔王軍と戦ってほしいとのことだった。

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