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妖怪不思議探偵所  作者: 白香堂の猫神
第一章 妖怪不思議探偵所 発足編
2/3

プロローグ 夏の始まり

 少女達の夏の冒険譚、最初の事件『怪異からのお使い』

 此処に開幕します!

 ジリジリとした熱気が、上からも下からも襲いかかってくる。


 見上げれば、明るく澄んだ夏の空が広がっていて、憎らしいほど太陽が輝いている。


 夏になればいつもの事だけど、熱い、凄く熱い。


「帽子、被ってくれば良かったな……」


 思わず呟いて、塀に手をついた拍子に三つ編みにした栗色の髪、その左の一房が揺れ、黄色のボンボンがキラリと光を反射した。


 Tシャツとキャミソールにキュロットスカート。全体的に可愛らしいけれど、動きやすそうな服装をしていても、汗が次々と流れて行く。


 目を伏せた拍子に茶色の瞳が赤くなった様に見えるも、それは一瞬の事だった。


 中性的な見た目をした彼女の名は、鳴星 遥香(なるほし はるか)立花(たちはな)小学校に通う小学五年生だ。


「あっつい……」


 汗を拭って、遥香はため息を吐いた。


 もう少し早い時間に家を出れば良かったと、若干、後悔しながら。


 遥香がこの炎天下に外に出ている理由。それは、夏休みの自由研究のネタを探すためだ。


 言うまでも無く立花小学校は夏休みに入っていた。そして、学生の宿命とも言えるもの、それは、いつもより多い宿題だ。


 ドリルやらポスターやら、大抵の物はコツコツやっていれば終わるけれど、自由研究だけは早めにテーマか観察対象を決めなくては、夏休み中には終わらない。


 故に遥香は夏休みが一週間ほど過ぎるまで悩んだが、これと言って思いつかず、困りに困った結果、学校の図書室にネタを探しに家を出たのだが……


 夏の暑さをなめていた。


 通学路の途中でへばってしまった、と、言うわけだ。


 深くため息を吐いたその時、遥香の目の前が陰った。


「……? どうしたんだ? 嬢ちゃん」


 声をかけられ、顔を上げると目の前に知らない男の人が立っていた。


 ポニーテールにされた黒髪は彼のうなじを隠し、健康的な肌は不思議なほど焼けていない。白いTシャツに黒い長ズボンとシンプルなコーディネートも、顔が整っているおかげなのか、違和感も無く似合っている。


 青味の強いエメラルドグリーンの瞳が不思議そうに、遥香を見ていた。


「……大丈夫、です」


「本当に?」


 訝しげな顔をした男は遥香と視線を合わせる様に、しゃがみ込んだ。


 伸びて来た手が遥香の額に触れ、首筋に移る。顔をしかめた男は、肩から下げていた鞄から保冷剤を取り出すと、遥香の首元に当てた。


 突然感じた冷たさに声を上げると、男は面白そうに笑った。


 立ち上がり、遥香の頭を撫でる。


「それ、やるよ」


「え……」


「じゃ、熱中症には気を付けろよ。嬢ちゃん」


 言うだけ言って遥香の頭をもう一撫ですると、男は立ち上がり颯爽と去って行く。


 ポカンと男の背中を見送っていた遥香の視界に一瞬、ノイズが走った。


 男と並んでもう一人、着物姿の男が歩いていた。キラキラと輝く刃物にそっくりな色の髪をショートカットにした、鼠色の羽織を肩にかけている山吹色の着物姿の。


 遥香の視線に気が付いたのか、立ち止まりこちらを振り返った。男はとても綺麗で、ひと際目を惹く紅と琥珀の瞳を細めて、形の良い唇に人差し指を当てて微笑む。


 だが、それは瞬きをした後にはきれいさっぱり消えていた。


 初めから居なかった様に。


「今の……何だ?」


 暑さにやられて幻でも見たのだろうか?


 首を傾げるも遥香に残されたのは保冷剤と、持った手にゆっくりと広がる冷たさだけだった。



 今思えば、この不思議なお兄さんとの出会いから始まっていたんだろう。


 オレが不思議なものと関わり、事件を追いかける日常が。まぁ、かなり後になってから気が付いたんだけど。


 気が付く前は、この後の『図書室での出会い』からだと思っていたんだ。

こそっと話:もうこの時点で『桜咲町防衛隊日誌』とクロスオーバーしています。

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