第5話 身バレ
どうもお久しぶりです!もっちー!ですよ
実はちょっと体調崩しちゃいまして、ゲームしたり遊んだりしたいのにしんどくて出来ない中、お部屋で悶々と小説の続きを妄想する1週間でした。
まぁおかげでこうやって、次話の投稿にこぎつけたんですけどね。
というわけで第5話です、気楽に読んでやって下さい。
前回のあらすじっ!
「………」
「あれっ、今日の担当は誰だ?確かサヤカだったと思うんだが…」
言いながら辺りをキョロキョロと見渡していると、
「てれれ〜れ〜れれ〜」(サヤカの声)
「なんだなんだ⁉︎」
背後から突然声が聞こえ、慌てて振り返る。
そこには…
「ででんっ!西に魔物が蔓延れば…」
(ゆったりと立ち上がるサヤカ)
「でんっ!行ってバッサバッサと斬り伏せて…」
(右に一歩跳んで腕を振り回す)
「でででんっ!東に呪いが振り撒けば…」
(左右が逆だったことに気付いて転びそうになりながら)
「でんっ!行って回復魔法を施しになる…」
(ちょこんと座って祈るようなポーズ)
「は、果たしてその正体とは⁉︎」(ファナの声)
「バッ!とうっ!」
(30cnくらい跳ぶサヤカ)
「私の〜お父さん〜、タカハシ〜ユウ勇者ぁ〜」
かっこよくポーズを決めるサヤカの周りを、ファナが紙吹雪を振り撒きながらクルクル歩く
「わ〜サヤカすごーい、かっこいい〜。」
「ふへへ、そうでしょうそうでしょう。」
「…いや何一つとしてあらすじになってないんですけど。」
それでは始まります!
*****
身バレした。
せっかくいい感じで俺の身元を誤魔化せそうだったのに、ユアが何もかもを台無しにした。
さようなら、胸躍るワクワクの冒険生活…。
こんにちは、毎日がデンジャラスな最前線生活or頭のおかしい人扱い…。
俺が膝をつきながら落胆していると、
「えっと…ユア…?別にサヤカに対抗しなくても大丈夫だよ?」
「私のお父さんの話がカッコいいのは認めますけど、アレはれっきとした事実ですからね!おとぎ話とは違うのです!」
予想とは異なる2人の反応に、俺はポカンと口を開ける。
「まぁでも、私も子どもの頃は好きだったなぁ、あの話。」
「私も大好きでしたよ!ま、まぁお父さんの話の次に、ですけど。」
「懐かしいね、子どもの頃サヤカと一緒によく聞かせてもらってた。」
和気藹々と懐かしむ2人を見て、俺はゆっくりと立ち上がる。
……好機っ!
「そ、そうだぞユア〜。昔から言ってるじゃないか、それはおとぎ話だって。俺とユアが出会ったのは、えーっと…近所の…あー…そう、さびれた洞窟で落ちてたのを拾ったんだぞ。」
言いながらユアの柄を握る。
「んなっ⁉︎何を言ってるんですかショウタ!あの時宣言してくれたじゃないですか!『わかった。俺、世界を救」
「うわー!!わー!わー!恥ずかしいこと言ってんじゃねぇー!ってか、ちょっとこっちに来い…!」
羞恥で顔が熱くなるのを感じながら、ユアを捕まえ、部屋の隅に引きずる。
「むー!むーむー!!」
どこが口か分からなかったが、剣を鞘に押し込んだら正解だったようだ。
「いいか、仮に俺達が本当に伝説の勇者だったとして、それがもし信じられたらどうする。担ぎ上げられて最前線に連れていかれるぞ?そりゃユアはスゴい剣かもしれないけど、俺は見ての通りゴブリン相手に死にかける男だ。絶対死ぬ自信がある、自慢じゃないけど。」
暴れていたユアの動きがピタリと止まる。
「んで、逆に信じてもらえなかった場合。おとぎ話に出てくる伝説の勇者は自分だと言い張るヤバい奴の完成だ。この屋敷から追い出されるくらいならまだマシで、もしこの街から追い出されたらそこで俺たちの冒険は終わりだ。外は魔物まみれらしいしな。」
ユアがガタガタと震えだす
「だから、これからは俺たちの正体はナイショ。駆け出し勇者ってことにしとこうぜ、実際は駆け出し以下だけども。」
コクコクコクとうなずくユア。
うなずくというより剣が中程から何度も折れ曲がってる。しかも鞘ごと。
なに、もしかして材質がゴムなん?
ビヨンビヨンとしなるユアと、とりあえずは話がついたので後ろを振り返ると、ファナとサヤカはまだ思い出話に花を咲かせているようだった。
俺は近づいて話しかける。
「いやぁごめんね、ユアがいきなり変なこと言って。昔からこの話が好きみたいでさぁ〜。」
我ながら胡散臭い話しかけ方である。
「あぁ、ううん大丈夫だよ。サヤカも昔はよく事実とおとぎ話をゴッチャにして話してたし。」
「どわぁぁー!なに言ってるんですかファナ!べ、別に昔の私は関係ないじゃないですか!」
サヤカは今も昔も痛い子らしかった。
とはいえ、そのおかげで怪しまれずに何とか誤魔化せたのだから、痛いサヤカに感謝しよう。
「あの、なんかそのニヤけ顔が腹立つんで殴っていいですかね、ショウタ。」
「唐突なバイオレンス!しかもニヤけてたんじゃなくて微笑んでいたんだよ!」
こんな顔に産まれたこの世界を呪う。
あいや、異世界転移したあとだから前の世界か。
「さて、お互いの自己紹介も済んだことだし、そろそろギルドに行こっか!ショウタの勇者登録と、私たちも雑事クエスト消化しなくちゃだしね。」
言いながら支度を始めようとするファナとサヤカ。
「あ、その事なんだけど…もちろん異論はなくて、俺たちもギルドに向かうんだけどさ。」
俺はそこで一旦切って、
「…その前に俺から1つ話があるんだけど…聞いてくれないか?」
ファナとサヤカは不思議そうに顔を見合わせる。
「話?なんだろ、改まって。」
「まーた変態発言でもするんじゃないですか?」
誰が変態やねん。
でもまぁ、とりあえずは聞いてくれる流れだ。
よーし、落ち着け緊張するなよ…
自分に言い聞かせながら、俺は昨日一晩かけて考えた身の振り方について、2人に提案を始める。
ーーーーー
「なるほど、それはいい考えかもしれないね…。昨今の勇者不足を解決できるかも。」
「まぁセクハラ魔人なとこを除けば、見知らぬ私たちの危機にすぐ駆けつけるような人ですからね、パーティを組む事自体に異論はないですよ。」
よーし、手応えアリだ。
って誰がセクハラ魔人やねん。
俺の話をまとめると、
まずこの街の現状について、
今この街では深刻な勇者不足に陥ってる。
魔王復活の予言と共に魔王軍の攻勢が激しくなり、手練れの勇者は軒並み最前線の城下町アストリアに向かったそうだ。
また、魔王復活に怯えた住民たちは、勇者志望の若者がパッタリと途絶えてしまい、その結果この街の領主であるファナが直々に街の周りのクエストを消化している…という状態だ。
だから俺はそれを解決するための方法として、俺とファナとサヤカでパーティを組んでクエストをこなすという手段を提案した。
その理由は至ってシンプルで、勇者になりたての少年をファナとサヤカが共にサポートしながら成長させる様子を街の人に見てもらって、勇者志望の若者を増やそう!というものだ。
まぁそんな簡単な話では無いかもしれないが、この街を守ることすら危うい現状を、まずは住民に知らせる事から始めるべきだと考えたのだ。
聞くところによると、ファナは住民達を不安にさせまいとコッソリクエストを受けて街の平和を守っているらしい。
もちろんそれ自体は領主として素晴らしい考えだが、
勇者志望しなくてもなんとかなってるなら、ますます魔王との戦闘が危惧される勇者志望なんてどこの親も許さなくなると思うし、若者だってなりたいと思わなくなるんじゃなかろうか。
それに、俺みたいな弱っちいやつでも、とりあえず街周辺のクエストはこなせるってところを見せれば、勇者に対する負のイメージも多少は緩和されるんじゃないかと思う。
魔王討伐や最前線の精鋭にはなれなくても、この街をモンスターから守ることはできるんだぞって住民達に思ってもらいたい。
そしてそれは必要不可欠な仕事なんだと分かってもらいたい。
というのが結論だ。
「いい感じですねショウタ。さすがです!」
そんな俺の話を、ユアは感心したように小声で褒めてくれた。
相変わらず声が可愛いし、褒められたから顔がニヤケそう…なのだが。
………どうもこの勇者の剣、実は戦闘以外はあまり使い物にならないんじゃないかと疑っている。
いや戦闘において何の役にも立たない俺が言えた事ではない。ないんだけど…
伝説の異世界転移勇者であることを早々にバラしそうになるし。
ゴブリンの一件でも、ゴブリンに関する情報やファナとサヤカに関する情報は教えてくれたものの、実際の作戦は俺が1人で考えたような気がするし。
サヤカのような日本人の苗字の謎とかもよく分かっていないみたいだし。
昨日だって、これからどうしようかと話し合いをしたのにほとんど『悩ましいですね…』か『なるほど!名案ですね!』しか言葉を発していなかった。
とはいえ、ポンコツな俺の身体能力を全力でカバーしてくれたおかげでなんとか生き延びてるわけだから、感謝はすれど文句なんかないんだけども。
でも、この世界を生きるためのガイド的な役割は期待できないのかなー…。
あらためて、あの洞窟での話は拒否ができない脅迫じみた詐欺だったんじゃないかという気がしてならない。
ユアが悪いわけじゃなくて、
俺を選んだ事と、そんな訳のわからない伝説を考えた神様と、謎の記憶喪失に対して恨めしく思う。
「よし分かった、それじゃ私達でパーティを組みましょう。そのためにも、まずは勇者登録からだね。もうギルドに出発しようかと思ってるけど、準備できる?」
と、ファナが立ち上がりつつ俺に声をかける。
「あぁ大丈夫だ。とは言っても、ユウくらいしか準備と呼べるようなものは持って来てないんだよね。…それでさ、ファナ。これから俺たちパーティになるんだし、もし良かったらなんだけど、クエストをこなす間はこの屋敷に俺とユアを住まわせてもらう事ってできないかな…?」
本音をいうとコレが大本命。
所持金もなければ戦闘能力もなく身元も怪しい俺は宿問題が1番大変なんだ…!
ユアは剣だから屋根さえあれば良さそうだけど!
「もちろん良いよ!むしろこっちから提案したいと思ってたくらい!この屋敷はそんなに広くないけど、私達しか住んでないからね、部屋も余ってるんだ。どこでも好きな部屋を選んでもらって大丈夫だよ?」
やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
俺は心の中でガッツポーズを決めながら、できるだけ冷静に、嬉しそうな表情は止められないまま返事をする。
「そっか!マジで助かるよ、本当にありがとうファナ!あと、サヤカもこれからよろしく!家事とかはもちろん手伝うから、ぜひ仕込んで下さい!」
急に振られたサヤカが驚きつつ返事をする。
「も、もちろんです!私の仕込みは厳しいですよー?」
「よろしくお願いします、先生!」
「せ、先生…⁉︎先生…!」
思わず口にした呼び方だったが、なんか大袈裟に喜んでるみたいだ。
人のこと変態呼ばわりするファザコン痛い子だが、屋敷を1人で管理してる自称キャリアウーマンヒーラーだ。ちゃんと真面目に教わろう。
「私も戦闘以外はからっきしだから…家のこともしてくれると助かるよ。これからよろしくね、ショウタ。早速ギルドに向かおう!急がないと日が暮れちゃうからね。」
日が暮れる?まだ9時前だけどなぁ。
それだけクエスト消化に時間がかかるということか。
などと結論付けながら、
「あぁ、よろしく頼む!」
ファナともしっかりと握手を交わして、俺たちはギルドへと向かった。
ーーーーー
「到着!ここがギルドだよ!」
ファナに連れられ歩くこと5分。
いかにもギルド!といった見た目の建物に到着した。
お酒のマークもあることから、酒場も経営してるらしい。
ワクワクした気持ちを抑えられないまま、俺は扉を勢いよく開けた!
きっと、この中には荒くれた勇者達がこぞってお酒を飲みながら騒いでるに違いない…!
扉のその先には…!
人がほとんどいない、寂しい光景だった。
席は全てが空席で、受付のお姉さんくらいしか人がいない。
掲示板にはかなりの依頼が張り出されているのだが…
「誰も…いないんだな…。」
正直言ってかなり残念だった。
俺がぽつりと呟くと、
「そうなんだよね…今この街の勇者は1人もいなくって…。腕利きの勇者が前線に行ったのは、もう半年も前の話なんだけど…。」
「まったく、少しは私のお父さんを見習って欲しいものですよ!それにここは新米勇者の集う始まりの街『ブレイブ』です、他の街から勇者志望の人がたくさん来る街だったんですけど…。魔王復活の知らせが来た翌日からパッタリと来なくなっちゃったんですよね。」
ん…?あれ、何か引っかかるような…。
魔王復活の知らせが来たからって、そんな即時に勇者志望者がいなくなるのか?
「なぁサヤカ、勇者志望者がいなくなったのって…」
「ファナさん、サヤカさん!よく来てくださいました!実は急ぎの依頼が5件ほどありまして…!っと、こちらの方は?」
俺が言い終わる前に、美人のお姉さんに話を遮られてしまった。
さっき受付にいたお姉さんがこちらに気づいて走ってきたらしい。
「彼は勇者志望の『八橋ショウタ』。この街念願の勇者志望者だよ!」
そう言って俺の紹介をしてもらう。
お姉さんの視線を受け、俺は佇まいを正した。
聞きたいこともあるがまずは第一印象が肝心だ。しっかり挨拶しないと…!
「えと、どうも八橋ショウタです。この街に勇者志望としてやってきました。よろしくお願いします。」
しっかりとお辞儀して挨拶する。
「勇者志望者…⁉︎本当ですか!ありがとうございます!さっそくですが勇者登録をしましょう!」
お姉さんはキラキラした目を俺に向けたあと、俺の左腕を組んで足早に受付へと引っ張って行く。
ちょっ、そんなくっつかれたら何やら柔らかい感触がありがとうございます!
俺がそれとなくお姉さん側に重心を傾けつつ、全集中左腕の感触の呼吸をしていると、ファナが声をかける。
「それじゃショウタは1日頑張ってね!今日のところは私たちが依頼を受けてクリアしておくから〜。」
…”1日頑張ってね”?
左腕に感じる幸せな感触を堪能していた頭が急に冷え込む。
もうなんだか嫌な予感しかしないんだが、一応お姉さんに質問してみる。
「あ、あの、お姉さん?勇者登録ってステータスの確認とかスキルポイント確認とかそんなんですよね?そういうのって機械でパパパーっとやるんですよね?ファンタジー特有の謎技術とかで」
「ふぁんたじー?というのは何かわかりませんが、そんな都合の良いものはありませんよ。実際に腕立て伏せをしてもらったり模擬戦を行ったり魔法を唱えてもらったり走ったりして確認するんです。耐久力と魔法抵抗力の確認の際はちょっと痛いかもしれないですけど…って、あ!ちょっと!暴れないで下さい!」
俺は必死に身体をもがいて脱出を試みるが、お姉さんの腕と胸はびくともしない。柔らかいのに。
ちくしょう!このお姉さん見た目によらず力が強い!俺が弱いだけか!
「ダメですよ、貴重な勇者志望者なんですから逃すわけありません。それに心配しないで下さい、限界を試すだけですから死ぬわけじゃありませんし、回復魔法も無料でかけますので1日程で全快しますよ。」
「限界ってなんすか!回復魔法かけても全快に1日かかるってなんすか!チクショー!離してくれ、助けて!助けてーー!」
ファナとサヤカに助けを求めて手を伸ばす。
「あはは…その、まぁ訓練的な意味もあるしね!クエスト中に死なないための重要なチェックだから頑張って!応援してる!」
ファナは取り付く島もなく、
「お姉さんに腕を組まれて鼻の下を伸ばしてたくせに何言ってるんですか、一度死にかけて変態を治して下さい。」
サヤカは白い目を俺に向ける。
どうやら俺を助けてくれる都合の良いヒロインはいないらしい。
こうなったら連れて行かれた先でユアを鞘から抜いて全力で抵抗してやる。
伝説の勇者の力を舐めるなよ!
などと、世界を救う伝説の勇者の剣を、我が身可愛さで公的機関に振り回す決意をしていると、
「私のマスターに手を出さないで貰おうか!」
「こ、この声は…!」
俺が驚いた声をあげると、
「私です!ショウタの相棒にして伝説の勇者の剣、ユアです!ショウタの身を危険に晒す不届き者め!私が成敗してくれよう!」
ユアだった。俺の腰のベルトから聞き慣れた可愛い声が響き渡る。
「ユア…お前…」
「皆まで言うなです、ショウタ。大丈夫、私が必ず貴方を守るとあの時約束して」
「正体は隠すって、今朝話したよな?」
「あ…」
腰にぶら下がってるおたんこなすは、どうも俺の話をちっとも聞いていないらしい。
「喋る剣…⁉︎というか、伝説って…⁉︎ショウタさん、こちらの剣を少しお借りして、ステータスの確認等行わせてもらいますね。」
スポッと腰から鞘ごと抜かれて、別の人に連れてかれるユア。
「あ、あーーー!離せー!ショウタぁー!必ず助けに向かいますからぁ〜!」
「こんのおバカ!黙ってたら俺と一緒に連れて行かれてたのに、なんでわざわざ離れ離れになるようなことするんだよ!」
やっぱりあの剣、戦闘以外はちっとも役に立たないみたいだ。
今度こそ希望が潰えたので、俺は覚悟を決めて勇者登録に臨むのだった。
つづく!
どうもお疲れ様でした。
自分としては楽しく書けたかなって感じです。
こんな感じでゆるく続けていきたいですね、なんとなく話の流れもボンヤリと出来てきたので。
あとは皆さん体調に気をつけて下さいね。作者は引っ越しを近々予定している中、所属部署が変わるわ、体調崩すわで死にそうです。
体調は無事完治したのですが、こっから荷造りやら、仕事を覚える作業が入るのでまた死にそうです。
現実がしんどくなると現実逃避に小説を書きに来ますので、その時はまた読んで下さいね。
ではまた、生きていたらお会いしましょう。
ばいばい