一章1
初投稿で至らない点が多く見受けられると思いますが、暖かい目で見ていただけると幸いです。
また、改善案やご指摘等ありましたらコメントして下さい。どんどん修正していきます。
最後まで書き上げるのでお付き合いいだければ幸いです。
一章
1
単位のためだけに受講した興味もない講義を半ば聞き流しつつ、これからのことを考えていると同じように退屈そうにしている武臣が切り出した
。
「今日は流石にサークルでるだろ?」
「悪いな。今日もバイトでね」
たったこれだけの会話だがこいつとは何回と話したことか。
「さつき先輩がお前に会いたがってたぞ?」
「今度帳尻合わせるから、って伝えといてくれ」
「お前まだ数回しか顔だしてねーだろ?皆に誰だお前って言われちまうぞ?」
「タケがいるからそうなっても問題ないな」
言われて武臣は少し嬉しそうにしながら、手に持ったペンを弄りだした。単純だが素直でいい奴なのだ。
講義が終わり、サークルへ行く武臣に別れを告げてバイト先へ向かう。電車に揺られることおよそ15分。目的の駅で降り、人混みに流されるように歩を進める。すっかり赤みがかった繁華街を抜け、すっかり人気がなくなった頃、それは現れた。古ぼけたビルの二階、通りに面した大きな窓に貼られた"何でも屋"の文字。パッと見ただけでは見逃してしまいそうな程の大きさである。その控えめな主張に見合った錆びついた階段を登り、ドアノブに手を掛ける。古びてガタがきているのか、立て付けが悪かったのか少し重たいその扉は開け方にコツが必要なのである。スムーズに扉を開け、事務所に足を踏み入れる。
事務所の中は部屋中央に幅二メートル程の長机と、それを挟み込むような形で安物のソファーが陣取っている。窓辺には段ボールが山積みにされていて申し訳程度に夕日が差し込んでいた。その夕日を浴びながら専用のデスクでなにやら作業に集中している女性が視界にはいる。
彼女こそがこの事務所のオーナー、一色 冴である。
長い髪が赤みを帯びて揺れたかと思うと一色が顔を挙げ、
「着いたばかりで悪いけど、資料まとめておいて」
と、わざとらしく微笑んだ。
「この間のまだ片付いてないんです?」
「証拠たくさん集めて旦那さんに裁判で叩きつけてやるんだとさ」
言われてデスクに目をやると、中年の男性と若い女性のツーショット写真が辺りに散らばっていた。
「旦那さんもよくやりますねぇ」
言いながら写真を手元にまとめていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。写真を手早くまとめ、扉に向かう。扉を開けた先には一人の少女が佇んでいた。少女の大きく綺麗な黒目と目が合ったと同時に、すがるようなか細い声を聞いた。
「――人を探してもらえませんか?」