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トゥルンクス城物語  作者: 和泉キョーカ
1/1

シノブ視点・1

『焔王』シノブ:『母胎の書』の一片を用いて異形の怪物たちの頂点となった青年。太陽の焔を司る。

初出作品:あゝ憎むべき紅炎の騎士

 誰しも、木は見たことがあるだろう。そう、樹木だ。天へとその枝を伸ばす樹木だ。その根は強力で、成長を続ける枝葉を支えている。そして、無数に分岐した枝は、各々全く違う方向へと伸びていく。

 では、根と枝葉の中間にある幹は、一体何なのか。


 それは、根と葉をつなぐ、始まりと終わりを全て見守る、交錯点だ。


 異世界があるのは知っている。というか、俺自身が異世界の王たる存在なわけで、知っているどころの話じゃないんだ。でも、俺が王になるにあたって取り込んでしまった、『母胎の書』がどういうものかというのを聞いた時には、心底びっくりした。

 『母胎の書』っていうのは、遥か昔、神話よりも昔、起源よりも昔、この星を滅ぼされそうになったひとりの少女が、自身の魂を生贄に、惑星のリセットを行った、その時に使われた書物で、この地球という惑星が辿る運命の可能性が、すべて記録されているものらしい。そりゃ、そんなものの片鱗とはいえ、取り込んだら王に匹敵する能力も得るわな……。

 ――それで、俺が今見上げている、うっそうとした森の中にそびえ建つ古城は、その『母胎の書』の持ち主、すなわち、惑星のリセットを行った件の少女の招待を受けたからだ。

「バカげてるよなぁ……。」

 そう、バカげている。そもそも、普通の感性を持つ人間なら、胡散臭すぎて招待状を破り捨てているところだ。けれど、俺はそっち方面・・・・・の経験が豊富すぎる故に、ここまでやってきてしまった。


「ご機嫌よう、『焔王』シノブ様。ようこそ、枝葉交錯地点・トゥルンクス城へ。」

 城の正門を抜け、中庭を通り、ひときわ大きな居館の門の前に立つと、門が内側から開かれ、青い髪の幼い少女が、礼儀正しくお辞儀をしてきた。

「……お前が俺を招待したメイ、って娘か?」

「はい、私が皆様をお招きした、メイ、と申します。お気軽にメイとお呼びくださいませ。」

「あぁ、俺のこともシノブで構わない。」

「皆様、既にお待ちになられております。どうぞ、こちらへ。」

 どうやら招待されたのは俺だけではないらしい。まぁ、このメイという少女が行った秘術が本当なら、母胎の書に記された可能性の数だけ異世界というのは存在するのだろう。――それこそ、この森に生えている木の枝葉のように。

 そして、この城が彼女の言った通りその異世界群の時空が交錯する特異地点だとするならば、この居館の中で俺を待っている者たちは、根っこを同じくしておきながら、それぞれ全く違った道を歩んだ異世界の住人。……仲良くできると良いんだがな。


 などと考えている間に、俺はメイの先導で、大きな回廊を抜け、どうやら食堂らしい場所に通された。

 とても有名な、魔法学校の物語を知っているだろうか? あれに登場する学校の大広間のような、縦にも横にもだだっ広い……語彙が少なくて申し訳ないが、つまりあんな空間だ。あんな空間のど真ん中に、どでかい長テーブルが置かれている。そして、その長テーブルのだいたい中央くらいの場所に、ひとりの少女が座っていた。テーブルの上にこれでもかというほど大量に並べられた料理を少しずつ皿にとって、ぱくぱくと食べている。

 とても、見覚えのある少女だった。というか、俺に似ている。髪型はセミショートの黒髪で、淡い紫色の目はまるで小動物のようにくりくりしている。一言でいえば美少女だった。少女は俺に気付くと、心底仰天したような表情で、こんな言葉を放った。

「父さん!?」

 ――さぁ落ち着けシノブ。確かに似ている。俺に瓜二つだ。同じ紅が少し混じった黒髪だし、瞳が紫色というのもなんとなく覚えがある。だが俺は一応人間の年齢で言えばまだ十九歳なんだ、見たところ中学生かという少女の父親であるはずがない。彼女はいったい何者なんだ……?

「うわーすっごい、ホントにここってどんな時代の人でも来る場所なんだね!」

 どんな時代でも……? どういう意味なのか説明を求めると、少女は自己紹介をした。

「えぇっと……その年齢の父さんには『初めまして』って言ったほうがいいね! ボクの名前は『今川渡いまがわわたる』! 君の世界の未来からこのお城にやってきた、君の下の娘だよ!」

「嘘だろ!?」

「ホントだよ!?」

 そう言って、渡と名乗った自称・俺の娘は、頭の上に火で形作られた、輪状の冠を出現させた。確かにそれは、俺の頭にも意識を集中させれば顕現する異形の王の証、『鳳焔冠ほうえんかん』だった。それを持っているということは、この少女は俺の親族であることは間違いないようだ。しかし……この歳で自分の娘を見ることになるなんてな……。

「渡様、他の皆様は何処へ?」

「みんな父さんが遅すぎるって言って、お城の散策に行っちゃったよ。」

「おや……。では仕方ありませんね。シノブ様、大変恐縮ではございますが、私の案内はこれにて終了とさせていただきます。ここからはあなた様の自由です。帰るもよし、他の世界の住人と語らうもよし。

 あぁ、それと――この城へは、来ようと思えばいつでも来ることが可能ですので、またいつでもお越しください。それでは。」

 そう言い残し、メイはその場から霞のように消えてしまった。

「あ、おい……!」

「父さんも食べてけば?」

「その呑気なところ、絶対マレの血だろ!」

「あははー、かもね?」

「絶対そうだ……。まぁ、いい。ワタル……だっけか? お前は城を散策しなくて良いのか?」

「この料理、おいしそうなんだもん! これ食べたら行く~。」

 やっぱり、性格面は希から過眠症を抜いたような感じだ。やはり俺の……俺と希の娘ということか。俺は渡の隣に座り、金色に塗られたゴブレットにミルクを注ぎ、それをちびちびと飲み始めた。

「父さん。」

 物を食べる手は止めずに、渡が俺に話しかけてくる。

「何でこのお城に来ようと思ったの?」

「何で……と、言われてもな。お前にも受け継がれているその王の力、器は『母胎の書』の一片なんだ。本物の鳳焔冠の中身だけをそこに移して、新しい鳳焔冠を作ったのさ。その『母胎の書』の持ち主の招待とありゃ、まぁ行かない義理もないしな。」

「へぇ~……初めて知った。父さん、この力の使い方とかそこらへんのこと、何にも教えてくれないから。」

「……まぁ、お前が俺の娘だって言うのなら、確かに教えたくはないな。」

「なんでよ~!」

「いいか? 力ってのは誰かから譲り受けたものであっても――。」

「己の身で学んで扱うものだ、でしょ? もう、父さんは若くても父さんなんだから……。」

 どうやら、年をとっても俺は俺らしい。そして、俺の思想はちゃんと娘に刷り込まれているようで、なんとなく俺は安心してしまった。

「父さんってさ。」

「今度はなんだ?」

「いつからその三つ編みなの?」

 俺の髪は、俺にすべてを託してくれたとある幼女の髪型を模して、腰まで垂れる三つ編みになっている。どうやら、彼女が知る「俺」も、この髪型のままらしい。まぁ、当たり前か。

「いつからって……そんなこと聞いてどうするつもりだ?」

「いや、父さんって確かに優しいし最高の父親だとは思うんだけど……三つ編みのこととか、昔のこととか聞いても、いつもはぐらかして聞かせてくれないからさ。若い父さんなら教えてくれるかな、って。」

「……教えると思うか?」

「……ううん。父さんは若くても父さんなんだもんね。」


 渡が食事を終えた頃、ひとりの少年が大広間に入ってきた。目が覆い隠れるほど伸びた黒髪と、衣服はワイシャツに黒いネクタイ、黒いスラックスと、まるでサラリーマンのようであるが、身長は俺よりも低く、年齢は十代前半を思わせる背格好だ。

「やぁ、君が渡くんが言っていた『父さん』かな?」

 存外低めな声で少年にそう尋ねられたので、俺はそうだと肯定して、少年に自己紹介をした。

「俺はこの娘の世界の過去の時代からやってきた、『焔王』シノブだ。シノブと呼んでくれ。」

「えんおう……炎の王、ということかな?」

「あぁ、その解釈で構わん。厳密に言えば異次元に住まう異形の怪物たちの王だな。」

「そうなんだね。それじゃ、僕は君の治世の民草、とも言えるわけだ。」

「……どういうことだ?」

 困惑する俺と渡に、少年は世界と世界の関係について語り始めた。

「『母胎の書』を起源とする枝葉異世界群は、確かにどれもこれも全く違う歴史を辿り、それこそ枝葉のように広がっている。それでも類似点のある世界同士というのはあって、例えば君たちの世界なら、異次元に異形の怪物がいるんだろう? 僕の世界にも、人間の世界と怪物の世界がある。もし僕が君の世界の住人だったなら、僕は君の治める怪物の世界の民だった、ということさ。

 紹介が遅れて申し訳ない。僕は『黒狼』、ブレイドフェンリィル。この姿の時は『木戸零きどれい』を名乗っているよ。レイって呼んでくれ、王さま。」

 そう言って礼儀正しくお辞儀をすると、零は渡の正面の席に座り、肉を中心的に皿に取っていき、素手でそれを食べ始めた。

「……あぁ、城のあちこちに枝葉異世界群の住人たちがいるから、会ってくるといいよ。」

 その零の言葉を素直に受け取り、俺と渡は大広間を出て、まずは居館の中を探索することにした。


 大広間があの広大さだったのだから、図書館なぞ、居館の二フロアを独占するデタラメぶりだった。果たしてこの図書館に誰かいるかとあちこち探していると、『神秘』と刻まれたメタルプレートがぶら下がる書架の前に、ひとりの青年が立っていた。

 中肉中背、普段筋肉を使わない、一般人であることが見て取れる。髪は一部を金色に染めている以外は、きれいに整えられた黒髪。日本人であることはすぐにわかった。身長は俺と同じくらい。

「お? さっきまでは見なかった顔だな。メイちゃんの言う『最後の一人』って、お前か?」

「あぁ、俺の名は『焔王』シノブ。シノブって呼んでくれ。」

「ひゃあ~、王サマなのか!? ほんと、何でもありだなぁ、『母胎の書』って奴は! お前も日本人だろ? 西暦何年から来た? あ、俺は『鹿島ヒロト』。好きなように呼んでくれ!」

「俺は西暦2020年からだが……。」

「ボクは西暦2037年からだよ!」

「まーじかよ! 俺2018年からだよ! はぁ~、別の世界じゃこんなに近い年数なのに王サマなんて存在が出てくるようなことになってるのかぁ……。」

 こいつは割と信頼してもいい人間なのかもしれない。聞けば、『母胎の書』が生み出した神秘の力を身に纏って、悪しき存在と戦う、異能探偵とやらを営んでいるらしい。

 俺はヒロトと話している中で、やや気になった点を聞くことにした。

「俺に日本人かって聞いていたが、日本人以外もいるのか?」

「あぁ、日本人は俺と零さん、渡ちゃん、王サマを含めて五人だけど、それ以外は外国人みたいな外見してたぜ。あぁ、でも言語の問題は考えなくても良いらしい。実際そのうちのひとりに話しかけてみたけど、問題なく日本語で会話できたぜ。」

「あとひとりの日本人はどこにいるかわかるか?」

「アキちゃんだったら、多分最上階の客室でヒキコモってるぜ。」

「……なんか、面倒臭そうな匂いがするな……。」

「あぁ、ありゃメンドイぜ。何せオタク語しか喋らねぇ上に人見知りと来た。」

「それならまだ何とかなりそうだな……。」

「身に覚えでもあるのか?」

「「めっちゃある。」」

 俺がその言葉を口にした時、隣にいた渡までもが一言一句外さずに、同調して発言した。もしかしてこいつもアイツ・・・を知っているのだろうか。その疑問を見透かしたかのように、渡はその真相を口にした。

「三鷹台先生、言ってることの半分も理解できないんだよね……。」

 先生って。アイツ先生になったのかよ。いや割とびっくりだわ。他の奴らのその後も知りたいが、あまり知りすぎるとタイム・パラ……なんとかになりそうだからやめておくか。


 最上階は、客室のドアが廊下の両端にずらりと並ぶ、高級ホテルのような内装になっていた。そのうちの一室のドアの前に立ち、こつこつとノックする。すると、ややもあって返事があった。

「どうぞ~……。」

 なんとなく心の準備をしながら部屋に入ってみれば、果てしない既視感に襲われた。日中だというのにカーテンは閉めっぱなし、城のどこかで売っているのであろうスナック菓子の空き袋はそこら中に散乱し、部屋の灯りは奥で煌々と輝くパソコンの画面のみ。

 すなわち、俺の友人の秘密基地そっくりの光景が広がっていたのだ。

「おはこんばんちゃ……おっふイケメソ! やばいでござる目が眩みますよぉ眩む眩む。」

 言動までもがなんとなくアイツ臭い。もしかして、零が言っていた世界同士の類似点のひとつなのか、これは……!? なんとか引きつりそうな顔を平静に戻し、自己紹介をする。

「あー、王、っていう響きにはいい思い出がないのよなぁ、スマソ。あぁ、拙者名を『阿加井アキ』と申す。ただのしがないオタクにござるよ。」

「こんな所でゲームばかりやっていると体を壊すぞ?」

「よく言われるー。だが私は退かぬ、媚びぬ、顧みぬ! 反省はしたら負けかなと思っている。っつーわけで、みんなが帰るまではここでゲーム三昧でありんす。幸いこの空間、私らが普段いる世界とは隔離されてるおかげで、時間も狂ってるみたいだしー。んちゃ。」

 そう言って、アキは布団を頭から被ってしまった。俺と渡は顔を見合わせ肩をすくめ、部屋から去るのであった。


 中庭に出てみると、二人の少年少女が、絶賛決闘の最中だった。

「異国風の人たち一号と二号だね。」

 渡の言う通り、少女はくすんだ金髪、もう片方の少年は植物の茎を思わせる若葉色の髪をしており、目鼻立ちも少なくともアジア系ではなかった。

 不思議の国の主人公のような出で立ちの少女は、その服装に似合わぬ二挺拳銃で、高速移動をしながら少年に向かって発砲し続けている。連射速度が尋常じゃない。あれは本当にただの拳銃か? というかそんなものを両手で扱いこなすって、あの少女も絶対人間卒業してるよな?

 対して中世ヨーロッパ風の恰好の少年は、弾丸が当たった途端すぐに壊れるような脆い剣を次から次へと手の中に出現させ、銃弾の嵐を防ぎきっている。いや、あれも人間業じゃない。

「まったく、『母胎の書』が導き出す世界の住人はどいつもこいつも人間離れしてやがる……。」

「それ、父さんが言う?」

 俺はもう人間じゃないので問題ないのだ。まぁ、あのふたりが人間ではないという可能性もなくはないが……。

 だがやはり人間なのか、しばらくするとふたりとも肩で息をするようになり、少女が発砲をやめるのと同時に、少年も手の中に残った剣を地面に突き刺し、その場に座り込んでしまった。少女がすぐ近くにあった井戸の方へ歩いていくと、少年の方はやっと俺たちに気付いたらしく、汗まみれの笑顔で挨拶してきた。

「おぉ、いつからいたんだ? 悪いなぁ気付かなくて! えーっと、さっき大広間にはいなかったよな。お前が渡の言ってた『父さん』、てことだな? ……の割には若いな。」

「多分、俺はこいつの父親だ。『若い頃の』、が付くけどな。俺の名は『焔王』シノブ。シノブで構わない。」

「まじ? 王様なの?」

「あー、まぁ、そうだな。」

「まじか、渡はお姫さまだったってことなんだな。」

「いや、ボクは普通の学生だよ。そりゃ、あっち・・・の世界じゃお姫さまって扱いになるけどさ……。」

「俺はゼノ・レティエス。茨の女王の末裔、って肩書を持ってる。ゼノって呼んでくれよ、シノブ!」

 俺とゼノが握手をしていると、井戸から先程の少女が帰ってきた。俺が自己紹介をしようと一歩前へ出ると、少女はぐいっと肉薄し、鼻が触れ合うかという距離で、そっと囁いた。

「……はん、わたしのタイプド真ん中じゃねぇか。おいスイートフェイス。私とイイコトしてみる気はねぇか?」

「……は?」

「ちょっ、ちょちょ、ちょおぉっと待ったぁ!!?」

 困惑する俺と、なんだか残念そうな顔の少女を、赤い顔の渡が引き離す。渡は俺の前でゴールキーパーのように両腕を広げると、少女に忠告した。

「父さんには婚約者がいるんだから! その婚約者と結婚してできる予定の子供がボクなの!」

「ほぉーお。そうかい、そいつぁ……。」

 次の瞬間、やや強烈に、唇に柔らかい感触が伝わってきた。脳が処理を完了した時に目の前で行われていたのは、まさしく接吻キス。少し離れていたはずの少女が、一瞬で距離を詰め、渡が制止する暇も与えず、俺の唇を奪ったのだ。

 少女が唇を離すと、熱い吐息と共に、キラキラした三白眼で言い放った。

「ますます燃えるな。」

「アアァリイィスウゥーーーッ!!!」

 渡は心底おかんむりのようだった。耳まで真っ赤に染まった顔で、少女を追い掛け回す。少女はいたずらっぽい笑顔を俺に向けて自己紹介をすると、居館に走り去っていってしまった。

「わたしゃアリス! カラダが寂しけりゃいつでも相手してやるぜスウィートフェイス! じゃあな!」

 行ってしまった。結局俺の方から名乗ることができなかった。……あれはあれで新鮮な気分だったな。あんなキスも悪くはないかもしれん。唇に残る感触を思い出しながら、俺はそんなことを思っていた。

「父さん……。」

 そんな俺を、じっとりと睨む娘がひとり。

「あれも悪くないなとか思ってるでしょ。」

 ぎく。

「あっはっは、シノブも世の王たる素質は持ってるみたいだな! 俺の友達の王様も、なかなかのプレイボーイだぜ。」

 ゼノの言葉を否定するならば、俺は断じてプレイボーイではない。一応希一筋と明言しているし、希以外と肌を重ねたこともない。というか他の女性と夜のお付き合いをする気は毛頭ない。ただどうにも、女性の思わせぶりな態度を見ても、冷静に過ぎる感情でしか対応できないのだ。男失格だろうか。

「そんなこたないさ、んなこと言ったら俺の師匠なんてもう三十代見えてきてるのに、男と付き合ったことがないんだぜ? 何回もアプローチはされてるのに気付かないんだぜ! まったく、何が『付き合いたい』だよ、鈍感すぎるんだよ。」

「ねぇ父さん、ボクがアリスみたいになったらどうする?」

「全力ではったおす。」

「だよね……。」

「なりたいのか?」

「女性相手になら……。」

「……あまりやりすぎるなよ。」

 しかし渡はそっちの趣味だったのか。まぁ、人の趣向はそれぞれだ、何も言うまい。


 まったく、なかなか楽しい場所じゃないか、トゥルンクス城。これなら、また来てもいいかもしれないな。今度は、希や氷唯も連れてくるかな。

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