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子連れ狼 ~異世界HARD MODE~  作者: YesドM
第一章 終わりの始まり
9/11

こんにちわ、走馬灯

その瞳には落胆の色が濃く写っていた。


「この程度か?」と。


「もう終わりか?」と色濃く写っていた。


そんな表情をした悪魔がそっと、静かに口を開いた。



「そんなんじゃうちの娘はやれねぇな」と、それを聞いた瞬間健は思った。


「いえ、別にいりません」と思った。口にはだせないが思った。

まだお互いに知り合っても間もないのに、結婚云々なんてことはまだ分かりません。と思った。

 たしかに「はい、あ~ん」はしてもらった。もちろん嬉しかったし、感動もしていた。

 しかし、それをこの先続けていくということは、間違いなくこの壁にぶちあたることになる。それはとても正気の沙汰だとは思えない。

 フェリさんというキレイな女性がこの小さな村でもてないわけがない。彼氏がいないわけが無い。しかし、現実は近寄ることができないのであろう。


この悪魔がいるから・・・・



「おい、最後に言い残すことはあるか?」

「あの、遠くにいる母親に言伝を頼みたいのですけどいいですか?」


「・・・・言ってみろ。」

「僕は筋肉の悪魔を討ち取ることができませんでした。こんな親不孝な息子をどうか許してください。とお伝えできますか?」

健はせめてもの悪あがきとしてさらっと悪口を言うことにした。そんなことは全く意味はなさない、むしろ状態は悪化するかもしれないが。言ってしまった。


「そうか・・・・」

「はい、お願いします。」


「歯ぁ、食いしばれよ・・・」

「はい、優しくお願いします。」


まず、頭を掴まれた。


そして、右ストレートが頬を捉えた。


最初はなにをされたのか分からなかった。ただ一瞬で意識が持っていかれそうになった。


そこへ、たたき起こすようにボディへ深々と拳が突き刺さった。


先ほど飲んだスープが喉まで上がってきて、胃液のすっぱい臭いが口内を埋めた。


またボディへと拳が飛んできた。吐いた。女神が食べさせてくれたスープを吐いた。


あぁ、もったいない。声に出そうと思ったが出すことはかなわなかった。


そこからはなにがおこっているのか、なにをされていたのかは分からなかった。

意識が朦朧とする中で、どうしてこうなったのか。ということを思い返していた。






「フェリーーー!帰ったぞーーーー!」

その言葉を聴き、天国だった世界はとても凶悪なものへと姿を変え、今このとき、今この状態をこれほど憎んだことは無かった。


「てめぇ、覚悟はできてんだろうな?」

「できていません。話をきいてください。」

と健は冷静に、機械のように即座に口を動かした。

「娘をやるには条件がある。」

「心の底から聞きたくないので言わないでください。」


「俺より強い男だ。それを証明してみろ」

聞かなければよかったと切実に思った。


心の底から思った。


この筋肉よりも強い男?

AHAHAHAHA

聞いてくれよ、ジェニファー!この筋肉なんか狂ったこといってるんだぜ?

あら、どんなことをいっているの?

「娘がほしかったら俺を倒せ」っていってるんだ!

あら、ロマンチックじゃないの。女の子はそうゆうの好きよ?

たしかにロマンチックかもしれないな!ただ、俺は見たことが無いぜ!こんな筋肉の塊を!しかも、ただ見せるためにある筋肉じゃない。闘うための筋肉だってことはもうすでに体で体験してるんだぜ!


あらぁ、それは大変ねぇ・・


 思わず脳裏にこんなやり取りが過ぎっていった。ありえない。ありえるわけがない。

この悪魔と殴りあう?たとえ万全の状態であったとしても勝てる気なんて微塵もしない。そもそも、この人は誤解をしている。そうだ、それを言えばいいんだ。

誤解なんです。といえばいいんだ。この人は筋肉じゃない、人間だ。言葉というかけがえの無いコミュニケーションが取れるはずだ。あれ、そういえばここは多分異世界なのに言葉通じてるな・・・

 いや、今の問題はそこじゃない。まずは誤解を解こう。そうすればなんとかなるはずだ。


「まず、話を聞いてくれませんか。誤解なんです。」


「表へでろ」


 どうやらこの筋肉は人間ではなく、筋肉だったようです。

言葉というコミュニケーションを僕と取り合う気なんてさらさらなかったのでしょう。


「あの・・・話を・・・」

「表へでろ」

「・・・・・・」

「お、お父さんあのね・・・?」

「てめぇは黙ってろ、これは男の問題だ」

途中でフェリさんがなんとか仲裁に入ろうとしれくれたが、一脚されてしまった。


「早く、表へでろ」

とまたもやいわれたので

「じょ、上等だこらぁ!」

とタンカを切ってしまったのだった・・・・・・







 あぁ、そうだ。これがこの嵐の始まりだった。

健は筋肉の悪魔から繰り出される暴力をその身でうけながら、思い返した。


その筋肉は衰えることを知らない。止まることを知らない。


一度走り出したらとまることはめったな理由が無い限りありえないのだろう。


相当なイレギュラー、予期せぬことが無い限りは止まることは無いのだろう。


 フェリさんも口を両手で押さえ、泣きそうな顔をしているであろうことはなんとなくわかった。しかし、彼女もまたこの悪魔を止めるすべを持たないのだろう。そのことに対して怒りの感情は沸いてこなかった。なぜなら彼女は「善意」で僕に食べさせるという方法をとったのであって、悪意からではないということはもちろんわかっていたからだ。それを確認してはいないし、確認したいとも思わない。

現実を知るのが怖いから?いいや、違う。


俺は視界が半分塞がっている瞳を上げ、フェリさんを見た。


ほら、聞かなくてもわかる。その表情を見ればわかる。フェリさんはたとえ悪気が無かったとしても負い目を感じてしまっているのだろう。口元は見えないがその瞳にうつしているのは無力な僕を笑うものではなく、貶すものではなく。ただ心配をしている自愛であふれている。今にも泣き出しそうな悲しみに溢れている。


あぁ、俺が彼女の顔を悲しみにそめてしまったのか。俺が不甲斐無いからそんな今にも泣き出しそうな顔をするのか。


このままでいいのか?このまま負けっぱなしでいいのか?たしかに、この筋肉は人の話をきかないし、川からあがってきた時もあまりに理不尽に殴られたのかもしれない。そんなことはどうでもいい、俺が殴られるだけであったのならどうでもいい。

そうじゃない、そうじゃないんだ。お前が大切にしているであろう娘をこんな表情にしてなにが男だ。なにが父親だと声を荒げてやりたい。お前の逞しい背中はこんなことのためにあるんじゃないだろ。守るためにあるんだろう。と声を大にして言ってやりたい。

そんな俺の意思に突き動かされることは無く、体は動いてはくれない。この体は動くことを忘れてしまったのかのように、動いてはくれない。





「あん?」


嵐が止んだ。


俺の意思を汲み取ってくれたのだろうか、俺の気持ちが伝わったのだろうか。いや、そんなはずは無い。ならなぜ?なぜ止まった。

疑問を覚えながら視線を向けると

「なんで・・・どうして・・・」

銀髪の少女の姿が見えた。悪魔と並ぶとより一掃に小さく見えるその姿で、悪魔の逞しい体とは比較にならないほどに華奢な体で、悪魔の服を小さい手で、小さくつまんでいたのだった。



「なんだよ?お前も聞いただろ?これは男の問題だ、と」

ダルクもさすがに小さな少女に拳を振り下ろすことは無いのだろう。攻撃を止め、掴んでいた手を離し、地面に崩れる健を横目でみながら少女に話しかけたのだった。


「・・・・・」

「なんだよ、なにかいいやがれ」

しかし、何も言わない少女に対して腹が立ったのか、眉間にシワを寄せながら怒りを露にし、問い詰めるように近寄った。

まさに人と巨人。そう例えることができるような背景であった。映像であった。現実感が無い。ダルクの身長から見下ろされる恐怖は健も身をもってしっている。そんな状況になることは分かっていたのに、分かりきっていたのにどうして彼女は割り込んできたのか?今の状況を理解はしていないのか?なぜ?どうして?と疑問ガ頭を埋め尽くさんとしていたときであった。



 銀髪の小さな少女は健をみた。

その小さな顔にある宝石のようなスカイブルーの瞳で健をみた。


 その瞬間健は体に電流が走ったような衝撃をうけた。納得した、納得せざるをえなかった。


その小さな体には不釣合いなほどに力図良く、深く、澄み渡った瞳を見て健は納得した。俺のために動いたのだと感じ取った。


 まるで感情の無い人形のような少女であると思っていた。もしかしたらなに重大な問題を抱えているのだと思っていた。しかし、今はそれについては考えなくて良い。


今はとりあえず


応えなければならない。


応じなければならない。


 その小さな体を危険に晒してまで作ってくれたチャンスに対して健は応えなければならない。



「があぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁ!」

腹の底から声を出した、乱暴に声を出した。動け、立ち上がれ、と声を上げた。今はこんなところで寝ている場面ではない。寝ている場合ではない。


動け、起き上がれ


健は叫びながら、雄たけびを上げながら身を起こす。


足に手をやり、支えながらながら立ち上がった。




 体が重い、今にも足が折れ、崩れてしまいそうだ。と健は立ち上がりながらも今にも崩れ落ちそうな体を


一歩


一歩


づつ動かしながらダルクへと近寄っていく。その動きは余りに鈍く、 愚鈍であったが、たしかに、しっかりと歩んでいた。


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