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子連れ狼 ~異世界HARD MODE~  作者: YesドM
第一章 終わりの始まり
5/11

こんにちわ、モンスター

「ちょっとさすがにそれはないだろ?」


 イテテと声を上げながら相手を注意しようとしたときであった。

その緑の子供が此方を向いた

その身形は異様であった。

こんな生物は地球上にはいないであろうことはすぐに分かった。

現実社会で目にすることは決してなかった。

全身が濃い緑色。髪の毛はほとんど無く。着ている物は布を巻いてあるだけ。

瞳には白目はなく、口は大きく裂け、サメの歯を思い浮かべる歯並び

そう、それはゲームなどでよく目にする

「ゴブリン・・・・?」

そう口にするが早いかゴブリンは少女に食らい付こうとした。

「っ!」

本能だろうか。思わずだろうか。

それを認識したとたん健はゴブリンに殴りかかっていた。


ゴッ


何かをを殴ったときの骨同士のぶつかり合いを認識し、嫌でも今自分が殴ったのは何か、つまりは現実であると認識し、言い様のない不安感を露にしながらゴブリンに目を向けた。

「うそだろ・・・」

 たしかに健の攻撃。左ストレートは綺麗に相手の頬を捉えた。

健の身長は175cm。対してゴブリンの身長は130cmほどであろうか?

この身長差では少なくともゴブリンは倒れなければおかしい。踏鞴を踏まなければおかしい。

「効いてない・・・のか・・?」

 ゴブリンは少女に噛み付くことはやめたが、反応はそれだけだった。

そして健に顔を向けた。


 その顔をみて健は確信した。健は今逆鱗に触れたのだと。

食事を邪魔された動物は怒る。そんな単純なことは健にだってわかっていた。

「ウガァァァァァァ!」

ゴブリンが唸りながら突進してきたのを見て

「クソが・・」

と思わずこぼしてしまうのだった。


 ゴブリンの攻撃は引っ掻く、噛み付くといったパターンが主だと思われることから

避けることはそれほど難しいことではなかった。ましてや130cmともなれば届く距離も短い。

 しかし、掴まれた場合にはあの口に噛み付かれる。という恐怖からなかなか攻めることもままならない。そして高校1年生の健はまだその体は発育途中である。特別な訓練もしていないその年代の男性が緊迫状態の中でどのぐらい殴り合いをすることができるか?

 もちろんペースにもよるがどんな攻撃も素人が避けなければならない。となれば必然的に大げさになってしまう。このままでは10分後にはかみ疲れている未来を想像するのは容易かった。

「ハッ・・・ハッ・・・クソ・・・」

肩で息をし始めた健はどうすればいいか必死に頭を働かせていた。

「逃げる・・・?だめだ、少女を担いで逃げるなんて現実的じゃない。

攻撃する?何処をだ・・・」



すると健は閃いた。ゴブリン、つまりは人体に大きく類似している。急所も同じな

のではないか?と。目、喉、生殖器。健が思いつくのはこれぐらいだが、このゴブリンが雄かどうか分からないので最後のは実践できない。では目か喉だ。


ただしそれは喧嘩のための攻撃ではない。


間違いなく致死性のある、殺人的な攻撃である。


喧嘩の最中に、始まる前に相手に対して「ぶっころしてやる」「殺してやる」と口にはする場合があるが、それは相手に対しての威嚇。又は自分に対しての意気込みを表現する手段である。大抵は「本当に殺すぐらい本気でやる」のであって「本気で殺す」わけではないのである。ましてや喧嘩に慣れている人であると、うまく加減をしてしまうのである。


そう、人は勝手に人を殺すことに戸惑ってしまう。


それは人に対してだけではなく、生き物にもあてはまる。子供の頃はよく虫を殺したりしてしまった経験のある人が多いであろう。

しかし、時が経ち道徳を学ぶことにより、自然と生きている物に対して思いつきで命を奪ってやろう。とは思わなくなっていくのである。


だから健は不安が拭えなかった。喧嘩は幾度となくしてきている。


ただそれは「殺すぐらい本気」であって「本当に殺すつもり」ではなく、急にこのような状況に陥り、意図せず命のやり取りをする状況になってしまって戸惑う気持ちもあった。

「人を殺す・・・?いや、人ではないか・・・

いやけど、少なくもと生きてはいる」


意識する前に行動してしまえば良かった。といまさらになって思う。

そしてなにより目と喉は急所である可能性はあるが急所であると同時にゴブリンの武器である口にもっとも近い。正確に当てる方法は限られてくる。


「あぁくそ!やらなきゃやられるんだ!後のことは後で考えよう!」

健は大きく後退し、自分に渇をいれるように息を大きく吸い。

寝着を脱ぐと右腕にまきつけた。

これから来るであろう痛みをかき消すように大きく息を吸い

「こいよ!」

声を上げ右腕を盾とし掲げたのであった。


 案の定ゴブリンは健の目論むとうり右腕に食らい付いた。1枚服を巻いただけではゴブリンの歯をとめることは出来ずに、自分の皮膚がさける感触と同時に激痛が走った。


その牙は余りに無慈悲で殺意に満ち溢れていた。


「お前を殺してやる」という意気込みが伝わり、思わず気持ちが揺れるが

「いてっぇぇぇぇぇ・・・・なっ」

自分を奮い立たせるように大声を上げ

「オラァ!」

痛みに体と気持ちが怯んでしまう前に地面に自分の腕ごと叩きつけ、ただひたすらにゴブリンの喉を殴り続けた。


殴っている間にゴブリンは頭を引き抜こうと暴れ周り。足の裏で健の顔、体を蹴り

足の爪が異様にのびていることもあり。上半身に服を着ていない健は傷ついていった。


それでも健は殴り続けた。


時折暴れるゴブリンの喉を捉えることが出来ずに地面を殴りつけてしまうが。腕が上がらなくなるまでひたすらに


執拗に、必要以上に必死に


ただひたすらに殴り続けた。


「はぁ・・・・はぁ・・・・」

 このゴブリンはいつから動かなくなっていただろうか。そんなことを見ている余裕も、考えている余裕もなかった。涎と血だらけの右腕をゴブリンの口から引き抜くと

「あー、いってぇ・・・」

ズキンズキンと腕が脈打っているのがわかり、あまりの痛み腕が熱をもち脳の奥がが重くなっていることを感じながら少女へと近寄った。

「大丈夫か・・・?」

「・・・・」

健は苦笑いを浮かべながら行こうか。と声をかけ歩みを進めようとしたのであった。

「ん?どうした?」

 しかし、少女は一点を見つめて動こうとはしなかった。

その先に視線を送ると・・


「うそ・・・だろ・・・・」

気付くべきだった。考えるべきであった。

 よくゲームの設定などではゴブリンは『集団』で行動するものだと。今まで1匹と戦っている間に他のが割りこんでこなかったことが幸運であり。決して1匹で行動はしていないのだと。

「少なくとも5匹はいるな・・・」


絶望した。


今の状態で5匹を相手にできるか?


無理だ、と健は戦う選択肢を即座に排除し、逃げるという行動を選択した。

「ぐっ・・」

 痛みに顔を歪めながら少女を左肩に背負い


フゥーっと息を吐き、全力で走り出した。


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