こんにちわ、異世界
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薄暗い部屋であろうか・・・?
いや、その空間の中にイスに座っている人間を見てなにげなく部屋と感じただけであって、そこは部屋ではないのだろう。
部屋を構成している壁という物は目視できる限りでは存在しておらず。
イスに座っている女性だけが月明かりに照らされている空間であった。
女性と判断できたのは、髪の毛が長くふわふわとしているからであった。が髪から連想できるような顔はそんざいしておらず、白い仮面をつけていた。
そんな彼女のところに、先ほど健の腰を掴んでいた銀髪の少女が現れ、イスに座って居た女性がひとりでに話し出した。
「そう、みつかったのね貴方はその人にきめたのね?
・・・・
貴方が『それ』に決めたのならなら私はなにもいわないわ。
その人には少し不自由な思いをさせてもらうかもしれないけど
いってらっしゃいな」
その言葉を最後に銀髪の少女はイスの女性から視線を背け歩きだした。
銀髪の少女が暗闇へと消えるのを確認すると。
「ふふふふふ」
仮面の女性は立ち上がり声をあげて笑い出した。
「あぁ、楽しみだわ。早く、早く会いたいわ。」
暗がりから照らされてみえる表情は白い仮面をしているせいで確認はできないが、「会いたい」と口ずさむその姿は仮面越しでも伝わってくる恋焦がれる乙女のようであった。
そのために、次の言葉に対して耳を疑うのであった。
「あぁ、会いたいわ。次に会うことができる頃にはさぞおいしそうに熟してことでしょう。
ふふふふ、さぁはやく私に頂戴。貴方を頂戴。あぁ、楽しみだわ!私はここで待っているわ。貴方がさぞおいしくなってくれることを祈りながら待っているわ!」
恋焦がれる乙女である。なんて生易しいものでは決してなかった。
その女性は狂っていた。
狂おしいほどに狂っていた。
女性は、狂喜のあまりゆるんでしまう声を抑えることなく笑い続ける。
彼女は思う。
銀髪の少女があまりに滑稽であると。
銀髪の少女があまりに愉快であると。
どうあがいても彼女の運命は決してハッピーエンドにはならないのだから・・
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夢をみた、ネコ耳をモフモフする夢であった。
夢でなく現実であってほしいと切実に思った。
強く思った。
このまま目が覚めなければ良いと思った。
「もふもふ~」
あぁ、神よ。こんな幸せな夢をありがとう・・・・
昨日少女が失踪してから、健は少女の特徴などを警察に伝え、母親と合流後家に帰宅し、そのまま寝たのであった。
「むふ~、もふもふ~。ありがとうありがとう。もふも・・・・うん?
なんだ、枕硬いな・・・」
すでに夢というのを忘れてしまった健は枕に頭を埋めた状態で手を動かし枕の位置を調整しようとした。
「うん?なんか寒いんですけど布団は・・・?」
枕の位置を調整しようとした手を戻し、半身を起こし、寝ている間に蹴ってしまったであろう布団を引き戻そうと半身を起こしたときにここがベッドでないことを認識した。
「知らない天井だ・・・、いやむしろ青空だ・・・外、なのか?うん?外・・・だよね?」
健は仰向けになり、まだ気だるい体を無理やりに起こして立ちあがった。
「目が覚めるとそこは異世界だった。いや、ふざけている場合じゃない。どうゆうきっかけで僕はここにいるんだ?最悪なケースはあいつらが行き過ぎたことだとは思うが僕を拉致し、ここに捨てた・・・とか?」
背後が気になり振り返った健は特に何もいないことに安堵した。
「なにもないじゃないか。森?車の音も全くしないしどこかの田舎にある山なのか・・・」
アゴに手をあてて、どうしたものか・・と考えだしたときに。
健の背後でなにかが動くのを感じた。
ゴクリ・・・
「ま、まさか本当に・・・・?」
背後を恐る恐る振り返るとそこには昨日の銀髪の少女がいた。
「ヒュー、ヒュー・・・・」
間違えてはならない。これは口笛ではなくモンスターだった場合には叫ぶであったであろう息が少女であったことで行き場を失い奏でてしまった不可抗力の音である。
「き、きぐうだね。こ、こんにちは・・昨日のお嬢さんだよね・・・?どうして僕はこんなところにいて、君はこんなところにいるのかな・・?」
ヒューヒューという失態を誤魔化すように咳払いをいれ、気を取り直し昨日出会った少女に話しかけるのであったが・・
「・・・・」
「うん、なんとなくわかってはいたけど・・お兄さんあまり反応してくれないと悲しくなっちゃうよ・・」
「・・・・」
「さて、とりあえず・・・歩いてみますか・・・」
引き笑いを浮かべ、正直めんどうなことになったと思いつつ少女の手を握り歩き出したのであった。
「ここはどこなんだ・・・人はおろか道すらもみあたらないぞ・・・」
少女の手を引き歩くことはや1時間はたっただろうか、出発した時間を携帯で確認していなかったので正しい時間は分からないが途中で電波を確認しようと携帯をだしたときに時間をみたときからだいたいの目安であるが確認はしてあった。
木々は邪魔なほど生い茂っているが生き物にもあわないのは変なのではないか?
人の臭いをかぎつけて逃げてしまってるのかな?と疑問を抱いていると
「うん?なにかいるのかな?一応僕の後ろからでないでね。」
少女に声をかけつつ背後に回し物音がしたところから目をそらしたときであった。
その動きはあまりに平和ボケをしていた。
その動きはあまりにも遅緩であった。
もっと危機感を持つべきであった。
ここは未知の場所なのだと。
「ぐっ?!」
気付いた時には地面に転がっていた。
誰が?
なにが?
健が、自分が、である。
「な、なにが・・・・」
わけも分からず身を起こすと自分がいた場所には入れ替わるようにして少女と同じ背丈の緑の子供?がいた。
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