こんにちわ、精神攻撃
「なんだよ」
そうダルクが告げた言葉に対して健は寄りかかるようにダルクの胸倉を掴んだ。
「見てみろよ!お前の娘を!フェリさんを見てみろよ!
なぜあんな表情をしているのか、なぜあんな顔をしているのか、お前にはわかるか?!」
「あぁん・・・?
お、おい。フェリどうして泣いてるんだよ・・・」
フェリは泣いていた、なにが悲しくて泣いているのか、何が悲しくて涙が流れてしまうのか。自分自身わかっていなかった。ただ悲しくて、悲しくて、涙が溢れてきた。
たしかにお父さんは私にとって良いお父さんであった、「良過ぎるほどに」良いお父さんであった。
こうゆうことは初めてではない。今まで気になった男性の人もいたし、行為を寄せたことがある男性の人もいた。しかし、だめだった。みんな私のお父さんが元冒険者の「ダルク」と知ると離れていった。それは異性にとどまらず友達も中々気軽にできなかった。何か粗相があってはいけない。なにかの理由で彼女を、ダルクの最愛である彼女を万が一にも悲しませたりしたら殺される。そんな爆弾とも思われる者をかかえた娘にいったいだれが好きこのんで近寄ってくれるだろうか?ゼロであるとも言わない、変わり者だけれども友達はいる。
けれども、それでも不満がなかったわけではない。初めは何度文句を言ったのかわからない。それでもお父さんは変わらなかった、変わってくれなかった。だから私に問題があるのかと思うようになった。私がしっかりしないといけないのだ、と思うようになった。それが当たり前であるのだと、今のいままで思っていた。
けど、川で拾った彼はいままでの男とは違った。お父さんをみると震えていたし、ボコボコにされていた。そこは今までと同じだった。ただ、お父さんに対してあそこまで、あそこまで本気でぶつかるような人間はかつて出会ったことが無かった。みんな相対した途端に諦めてしまっていた。無理なのだと、勝てないのだと諦めてしまっていた。しかし、彼は何度も、何度もお父さんを殴りつけていた。それは娘としては腹を立てる場面なのかもしれない。怒る場面なのかもしれない。ただ、嬉しかった。
誤解が発端だったとしても嬉しかった。私のことに、私が原因かもしれないのに、必死に立ち向かってくれる姿が嬉しかった。それでもやっぱりお父さんは強くて、本当に強くて怯むことなく彼を返り討ちにしていた。そのことに少し安心した自分もいた。あぁ、お父さんはやっぱり強いんだな。とおもった自分もいた。けれども、それでも私は気付いたら彼を応援していた。頑張って。負けないで。と応援している自分がいた。
ほら、今も立ち上がってお父さんに正面から向き合っている。私の顔を見ろ。と言っている。だから私は泣きながら、泣きながら大きな声を出して言う。
「ツヨシ君!がんばって!」
と
その言葉を聞き、ダルクは驚愕に目を見開き、健は「あぁ」と小さな声で返したのだった。
「自分の娘が泣いているのが親父であるてめぇがわからないのか!
なんで泣いている?悲しいから泣いてるに決まってるだろ!
自分の親父があまりにバカで、余りにダサいから泣いてるんだよ!」
「あんだとぉ?」
「それだよ!喧嘩腰になれば相手が引いてくれる。相手はいなくなる。
あぁ、確かにそうかもな!そうかもしれないな!
だけどよ、相手がいなくなったからってお前がバカなことは変わらないんだよ!
フェリさんの顔を見ろ!声をしっかりと聞いてみろ!
お前は今!正しいことをしているのか!
かっこいい親父であると、父親であると胸を張って言えるのかよ!」
「・・・・・」
「だせぇよ!だせぇだろそんなの!
全然かっこよくねぇだろ!
せっかく誰もが羨む、尊敬する様な風格のある親父なんだ。
その逞しい体を、背中を娘に見せてやれよ!
かっこいいところを見せてやれよ!
お前が今やることはここで俺と向き合うことじゃねぇ。
自分の娘に心の底から謝ることだ!
ダサい親父で悪かった。と謝ることなんだよ!
見せてくれよ、お願いだからそんなださい親父でいるなよ!
かっこいい親父ってやつを、でかい背中って奴を俺にもみせてくれよ・・!」
俺にはもう、自分の家族に会うことはできないかもしれないんだからな。とは口にならなかった。続けることが出来なかった。限界だった。体は既に限界なんてものは当に通り越していた。あぁ、最後しまらないな。と思いながら、自嘲的な笑みを浮かべ地面へと崩れ落ちた。
「なぁ、フェリ・・・そのなんだ・・・」
「・・・・・」
「悪かったよ。コイツが何を言っているのか、何を言われてるのかほとんどわかってねぇかもしれないけどよ。なにがいいたいのかは良く分かったつもりだ。」
「・・・うん」
「だせぇ親父で悪かった。
だからと言ってすぐに変われるつもりも、変われるとも今更おもわねぇけどよ・・
これからも迷惑かけると思うが・・・
その・・・
なんだ・・・
よろしく・・・な」
あぁ、本当にしっかりと。しっかりと彼はお父さんと向き合ってくれたんだな。こんな不器用で傲慢で、バカなお父さんと正面から向き合ってくれたんだな。ありがとう。ツヨシ君ありがとう。と私はより一掃涙を流しながら、ただそれは悲しい涙ではなく、嬉しい涙で瞳が溢れながら。
「うん、家族なんだから当たり前でしょ」と今出せる精一杯の笑顔で、精一杯の愛情をこめて元気に返したのだった。
「はい、あ~ん」
「あ、あーん」
決してこれはデジャブではない。健は昨日あのまま死んでいるように寝てしまい。いや、意識を失い。一晩空けるまで目を覚まさなかったのである。そうして、一晩空けた現在はお昼頃だろうか?健が目を覚ましたのを確認できたフェリさんはすっかり健にご執心で、おきてからというものあれやこれやと世話を焼きたがるのだった。
「ト、トイレをお借りしたいんですけど・・・」
「どうぞー」
「・・・あの、一人でできますから・・・」
「お構いなくー」
「汗かいたでしょう?体拭いて上げるからこっちに体背中向けてくれるかな?」
「あ、はい。お願いします。」
「あ、あの・・・なんだか手つきがいやらしくないですか・・?」
「え?そんなことないわよ?」
「そ、そうですか・・・」
そうして現段階の「はい、あ~ん」である。どうしてこうなった。なんだこのラブコメは、いったいどこでフラグが立った。昨日の出来事か?昨日の出来事なのか?いや、この際そんなことはどうでもいい。どうでもいいからこの状況をなんとかしてくれ・・
たしかに誰もが羨むシュチュエーションなのかもしれない。年上の、しかも美人の女性にめんどうをみてもらう。
断言できる。
誰もが羨むだろうと、断言できる。
しかし、健は素直にその幸せをかみ締めることはできなかった。正直生きている心地がしなかった。いっそ意識を失ってしまいたいと思った。そう、奴がいるからだ。ただ昨日の一軒で自分にも思うところがあったのだろうか直接的に、物理的に健になにかしてくるということはなかった。そう「直接的には」であったが。
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