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王女様の人探し

お久しぶりです、ほんとに遅筆です亀足更新です

今日は文字数少ないですが二話分更新していきますー;

翌日は曇りだった。掃除をした後のバケツの水のように濁った空が広がっている。

まだ七時半だというのに随分暗いものだ。

昨日と同じ、中央塔の大広間でトーマを待っていたエリルは、天気が良くないせいかあまり元気があるようには見えなかった。

「今日は曇りかー・・・」

そう呟いたエリルの表情は不満げだ。

というのもエリルは今日、城から出て街を見に行くことを許可されていたのだ────ちなみにこれが許可された裏にはもう少し王女としての自覚が欲しいという王からの切なる希望がこめられていたりいなかったりだ。だが天気があまり良くなく、またしばらくすれば雨が降り出すことが予想されるためもしかすれば延期されることとなりそうだ。

「・・・そーだ!トーマがはやく来てくれればその分早く出られる!」

町に出たら右も左もわからなくなるので案内役が必要になる。トーマにはその役をやってもらおうと思っているのだ。だからこそ今トーマを待っているのである。

本当はユーナにトーマの家まで案内してもらい、そこからトーマに案内してもらおうと思ったのだが今朝からユーナは国王に呼び出されておりそれが出来なくなったのだ。

さて、そうときまれば行動あるのみだ。確か城にはユーナの息子が働いているといっていたはず。それならおそらく探しまわれば見つけることが出来るのではないだろうか。

そう思いつつ大広間から飛び出すように駆けたエリルは自分の本能が告げるままに城内を駆け巡りだした。

広い城内を右往左往しながら走るが、ユーナの息子らしき人物には巡り会えなかった。

そして、ここに来てはたと気付く。

「私、ユーナの子供ってトーマしか知らないや」

走るのをやめて、その場に立ち止まる。

本能のままに走っていたが、いくらそれで目当ての人物と出会っていたとしても顔を知らないのではその人物のところで止まりようがない。大切なことをすっかり忘れていたのは城の外を見ることを許されたからなのか。

「ん?姫様じゃないですか」

突然声を掛けられ驚きつつも視線を向けるとがっしりした体つきの男が立っていた。

服装はこの城で働く人間のどの服にも相当しない。がそれが貴族の服であるかと言われれば否である。

服装はどうみたってトーマのようにお金がかけられていないだろう。となると、自宅から城に出勤している城勤めである可能性が高そうだ。

そんなエリルの考えを余所に男は喋り続ける。

「こんなところでどうされたんですか?まさか迷子ではないでしょうに」

「迷子の心配をされるとは思ってなかったなー」

苦笑気味に返すと男は破願した。

「姫様は我々のような庶民にでかい顔をしないところが好ましいですね。・・・それで、実際のところこんなところにお立ちになってどうされたんですか?」

エリルは事情を話すかどうか考えたが、もしかすれば何か情報が得られえるかもしれない。そう思い話してみることにした。

「あのね、実は今人をさがしていたの」

「人・・・ですか?猫とか虫とか、そんなんではなく?」

「なんで?」

「いや・・・姫様はいつも騒ぎを起こしているのでまたそのネタになるものをお探しかと・・・」

確かにと自分で思ってしまった。いつもなら真っ先にそういった類のものを探すのに。エリルは自分が予想以上に城の外を見たかったのに気付いた。初めてみる世界が楽しみでしかたないのだった。

エリルはかぶりを振り続ける。

「いつもみたいにそういうのも探したいんだけどねぇ。今はそれよりももっと楽しみなことがあるからそんなんじゃないんだよー」

「そうですか。・・・それで一体その騒ぎのもとよりも楽しみな人物とは一体誰です?自分でよければお手伝いいたしますが?」

男が恭しく尋ねるとエリルはえとねーと話す。

「私の侍女をしてるユーナって人がいるんだけどその人の息子を探してるのー。このお城で働いてるらしんだけど・・・」

男が目を丸くした。そして言う。

「・・・姫様の侍女が何人いるかは存じませんがそのユーナさんとやらが自分の知り合いであれば姫様のお探しの人というのは自分ですが」

今度はエリルが目を丸くした。

「・・・え?」

「お初お目にかかります、姫様。自分はライ・ミュンヘル────ユーナ・ミュンヘルの息子でこの城の衛兵をさせていただいております。また、義弟のトーマがお世話になっております」

エリルは目を丸くして驚いたのも束の間で次の瞬間には満面の笑みでライの手を握る。


────やっぱり私の本能はよく当たる!!


普通勘というべきところだろうが、そんなことはさておいてエリルは満面の笑みを持続させたまま続ける。

「こんなに早く見つかるとは思ってなかったよー!あのね、ライにお願いがあるの!」

早速名前を呼び捨てにしたエリルに向かってライは嫌な顔一つしない。むしろ内心ではなんだこの姫様おもしろいなーとか思っていた。

「姫様が自分のような衛兵にお願い・・・ですか?」

「うん、そう大事なお願い!」

大事な、という単語に反応したのかライは嬉しそうになんです?と尋ねる。

「あのね、トーマのところに連れて行ってほしいの!!」

ライは面喰ったように固まる。そして引きつった表情で問い返した。

「トーマのところへ・・・ですか・・・?」

エリルが大きく頷くとライは天を仰ぎみた。そして顔を手で覆いながら小さく呟いた。

「どうか虫の居所が悪くありませんように・・・」

小さな呟きが聞こえたエリルは聞こえなかった振りを決め込みライに道案内を頼んだのだった。

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