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08 とある王国、と私。

あまり長くないかも、です。

どくん、とくん、どくん。


何の音だろう、止むことなく鳴り続けるこの音は何の音だろう。


自分によく似た、幼い少女の瞳と目があった、その瞬間。

カチリ、と何かが開いたような音が響いた。その途端、椎菜の中で何かが弾けた。




何だろう。


例えば、

まるで目の前にあったとても深い深い濃い霧が段々と晴れていくようなーーーーーー

曇っていたものが晴れていく感覚ーーーーーー




















その国は300という歴史のある大国だった。


どの国にも時代によって、いつかは起こりうる王位後継者争い。

いくつもの戦いといくつもの内戦が所々で起こり、国も人もボロボロで壊れかけていた。しかし、何事にも終わりはくるものである。

いつしか王位はある若者に託され、争いにとうとう終止符が打たれた。

たくさんの犠牲とひとかけらの希望を残して。

その時、その時代の国王は後に賢王と名を馳せ、称えられた。

そうして国が栄を見せるようになった。


しかし、どの時代にも無くなりはしない身分差。

 

王族は王族。

貴族は貴族。

平民は平民。

上は上、下は下。

生まれた時点で決まるその地位。

平和になったとはいえまだ身分差が色濃く残るそんな時代。


そんな時代、少女は生まれた。


少女の名はシーナ。

そう名付けられてはいるが、物心ついた頃には既に両親に覚えはなく、彼女は城の近くの通りで小さな薬屋を営むお婆さんに育てられた。薬屋を営むだけあり少しだけ学のあったお婆さんは自分の持っていた知識を少女へ教えた。その為少女の知識はすべてそのお婆さんから学んだ。少女は、不思議と悲しい、淋しいといった感情になったりする事は無く、彼女はとても前向きな少女だった。

頑張り屋で、明るくて、負けず嫌い、しかしとても前向きな少女。

もちろん自分自身をそう評価したり、そう考えたり思ったことはないが、彼女と関わった人々は決まって彼女への印象をそう語っていたから、きっとそうなのだろう。


(・・・薬屋?)

シーナにとっては家だった。消して広くはなかったが、大好きなおばあさんと暮らした温かい場所。


どこからかふわりと街並みが浮かぶ。



王が住む城や後宮をぐるりと囲むよう建っている塀。その城のちょうど裏側にある通り。ガヤガヤと所狭しと商店や露店、料理店が並ぶ賑やかな通り。

そんな賑やかさのある通りよりにも覚えがったが、その先の少し寂しさのある通りの方が覚えがある。

そこを一つ越え、赤みがある寂れたトンネルを通れば思った通り。賑やかさは無く、寂しいものに変わった。ほったて小屋のような粗末な家が立ち並び、壊れた茶碗や湯のみを置き銭が貯まるのを待つ物乞いの姿があちこちに目立つ。

(あれは・・・)

その中にひっそりと佇むようにある古びた建物がお婆さんが営む薬屋だ。

三畳ほどの狭い家に方を寄せ合い一緒に住んでいた。しかし家の半分は薬に使うお婆さんの商売道具である薬草などで大半を埋めてしまっている為に生活空間と呼べる空間はごく僅か。

真っ白な髪をひとつにまとめお団子にし、背を丸めながらちょこんと座る小柄な女性。

(お婆、ちゃん。)

シーナがそう呼ぶその人はとても優しい女性だった。

そして大変世話好きであり、困っている人は無償で助けてしまう。多少おせっかいなお婆さんの性格のせいでもあったと思うが、シーナの生活はお世辞にもお金があるとは言える生活ではなく、むしろ逆。今日食べる飯にさえ困りそうな、そんな生活であった。

そんな生活に不満がないといえば嘘になるが、まあ仕方ない、そんな心持ちだった。


世話好きなお婆さんと一緒にお店を手伝いながら、まあ、多少の不満はあれど満足はしていた。

ふと思う。そういえば。そんな生活を抜けシーナは姫様付きの侍女になったのだ。確か。

(あれ、でもそもそも何で侍女になれたんだっけーーー)

そう、なれなかった、はず。ああ、でも、確かそうだ。

(そうだ下女。・・・最初はただの召使いではなかったか?)


朧げながら見える光景があった。

まるで、水面に映っているかのように朧げなのにその光景には何故か覚えがあった。


急いで走っている。

確かまだ歳は十になったばかりの頃。

「お婆さんがまた拾い物をしたらしい」、いわゆるお得意さんである家に薬を届けた帰りに寄った店の人が教えてくれたのだ。

いつものこととため息をつき流しそうになったが、その後変なことを言う。

「今度は随分と身なりが良いな」、と。

「気をつけろ。あまり長居はさせない方がいい」、と。


身なりが良い拾い物。何だろう。誰だろう。

お城の人?貴族とか?もしかして妓女とか。

嫌な予感程、よく当たる。

誰が言ったのか、そんな言葉が脳裏に浮かんだ時、ちょうど家の前に人影が見えた。

(誰だろう。・・・何だか見覚えがある気がするんだけど。)

なぜだか懐かしさを感じながら、椎菜も一緒に目を凝らす。


(あれ?あれは・・・?)

見覚えがある。なんでだ。

どこか幼さを残してはいるが間違いはない。あの人はーーーーーー


そう思い、もう一度よく見てみようと、目を凝らしたーーーその時。


カタン



びくり、肩を上下させ驚く。それは小さな物音だったが、静かな部屋にはよく響いた。


まるで夢から急に目が覚めた時のようだ。椎菜は、焦点のうまく合わないボーとした目で周りをくるりと見渡してみる。

「「う、けほっ」」

(すごい埃だな。掃除とかしてなさそうだ)

口を抑えながらパタパタと手を振る。

しかし、何も見えない。電気がついていないせいだろうか、とても暗い。

しばらくすると、目が少し慣れてきたのか周りのものが見えてきた。さほど広くない部屋に囲むように本がたくさん積み上げられているせいで余計に狭く感じる。しかも、積み上げ方はとても乱雑でまるで倉庫のように思えた。

けれど、目を引いたのは小さなテーブル。

木で出来ていて、引き出しはない何の変哲のないただのテーブルだ。部屋の隅っこにひっそりと置かれているが、触ってみれば誇り一つない。もしかして今でも誰かが使っているのかもしれないな、など考えながら足元にほんの少し光が差し込んでいることに気づく。

しゃがみ込んで、目線を下げたその時。


足音がした。

ハタと気づく。あの男だ。椎菜の中で、彼は変態なのかとものの数分数で思わせたあの男。

今までは彼の環境やステータス的なものを見て関わりたくないと思っていたが、いや実際今も思ってはいるが。そんなもの抜きにしても面倒そうだ。彼という人間と関わるのは。

(しかも何か近づいてきてないか!?)

何だかどこかのホラー映画のようではないか!

段々と大きくなる足音にヒヤリとしながらどうしようと慌てる。慌てたその際に先ほど光が差し込んだその場所に手が当たった。

(動いた!?)

もしかしてともう一度触れてみれば確かに動く。

ギィ・・・

(あいた!)

錆びたような音をたてながらも押し上げて開いてみれば女性ひとりなら通れそうである。


椎菜は自身の身体を滑り込ませた。

ひやりと外の風が当たるその感覚に、何故だかガッツポーズをする。

(ここは・・・図書館、の裏側?)

パタパタ、手で衣服の汚れを落としながら周りを見る。

辺りは真っ暗である。


そういえば。

「「いま、何時なんだろうか・・・」」

寮の門限って何時だったけ?

嫌な予感。

嫌な予感がする。


あの心配症な友人たちの以前体験した烈火のごとく怒り狂ったような様子を浮かべた椎菜は、とりあえず帰ったほうが良さそうだと即座に思い足早にその場を後にした。



次、早めに投稿できればと思います。

椎菜が早く分かってくれれば進めやすいんですけど(*゜▽゜*)!

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