19 月に一度の全校朝礼、と私。
見てくださってありがとうございます。
この学園には月に一回、全校朝礼がある。
朝礼、と言えば普通、何人かの職員が諸注意的な感じで話をしたあと校長先生の少し長めの話で終わる。
長くても30分はかからない。
・・・そんなものだと思ったのだ。
しかし時間は約3時間。長くて5時間の時もあった。つまり半日。
それって朝礼はじゃなくないか・・・思わず突っ込みたくなる。
この学園に通うすべての生徒が集うため、なんだかとても大掛かりで大層なイベントのようで、全校朝礼、なんて少し庶民的な雰囲気の言葉を使ってはいるが椎菜の知るものとはかなりかけ離れている。
何故そこまで長いのか。まず集まるのに時間がかかる。
一応開始時刻は決まっているが言わずもがな。ほとんどの生徒はその時間には来ない。一応椎菜自身はその時刻に間に合うようにしてはいるが、全員の生徒が集まるのに1時間以上かかる。
(・・・ここの人たちには、遅刻って言葉はないんだろうなぁ)
ああ、憂鬱だ・・・
基本会場は寮から歩いて15分前後の場所に毎月設定されているのに。
時間も体力もあまり使わずに来れる場所であるのに。
始まりが遅いとその分終わりも遅くなるもので。
今日は何時間拘束されるのか・・・
全校朝礼、なんて絶対参加っぽい響きが悪い。・・・まあ、実際絶対参加のは間違いない。
しかし、会場が近づくに連れていつもと違う賑やかさが耳に入ってきた。
疑問に思い見てみれば人だかりができている。
まだ始まる5分前。
となりを歩いていたリューネがどこか感心したような声音で話しだした。
「・・・もう揃ってるなんて流石だね~」
「・・・あれは何ですか。」
「ああ。今日、参加するからじゃないかな~。」
「誰がですか?」
「あれ?知らないの?結構噂になってたのに。」
噂?
最近はそれどころじゃなかったから・・・
眉間にしわ寄せ考え始めた椎菜に苦笑しながらリューネが指をさす。その方向は人だかりで見えないがおそらく今回の会場の方で。その会場の舞台上の右側の席。
騒がしい中よく見てみれば確かに会場に集まる生徒の視線がそこに集まってるのが分かる。
いつもはほぼ空席のそこの席に座るのは・・・・・・生徒会。
「全員参加らしいよ。珍しいね。」
「・・・は」
「しかも風紀の人達も参加だってさ。一体今日は何があるんだかね。」
「え?」
「・・・椎菜。本当に知らなかったんだ・・・」
「・・・」
風紀といえば、生徒会と並ぶ権力を持っている人たちの集まりではあるが、生徒会よりも馴染み安さを感じる。話をしたことはないが、傍から見ている限りどこか所帯じみていて関わりやすそうな人達が多い、そんな雰囲気がある。
・・・いやでもそんな雰囲気はあるがしっかりとファンはついているので出来ればあまり関わりは持ちたくはないけれど。
平和主義、そんな雰囲気の風紀。
我関せず、威風堂々とした様な生徒会は仲が悪い、それは確認したわけではないが誰もが知ってる風紀と生徒会の関係である。
その二つのメンバー全員が今日集まる。
・・・どんな修羅場だ。なぜそれをみんなこぞって見たがるのか分からない。面倒そうな予感しかしないのに。
「ファンという名の野次馬だね~」
なにか起こりそうなのは確かだしね、とにっこりと笑いながらどこか楽しそうに話すリューネのその言葉は確かに他人事のはずなのに、そう、聞こえないのは何故だろう。
モヤモヤと嫌な予感が何故かする。迫ってくる。
そんな予感がするくらい関わってしまったからだろうか。
(生徒会メンバーの寮長とだってなるべく関わんないようにしてたのに。)
・・・でもあの時名前教えてないはずだし。
考え過ぎかな。第一、あの距離じゃ私なんか分かんないよ。
(こっちからだって多分米粒ほどのサイズ感にしか見えないだろうし)
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
「・・・どしたの。顔色悪いけど大丈夫?」
リューネがそう言って屈んだ時だった。
・・・地響き、ってこういう時にも起こるんだ・・・
あまりの衝撃にそんな事を考えてしまう。
悲鳴みたいに耳に響く黄色い声。
みんながみんな叫ぶように声を出すから実際は聞き取れない。
きゃーだのわーだのうぉーとしか聞こえないんですけど。だから本当に悲鳴のようだ。
声をかけてくれたリューネも流石に固まってしまったし。
しかし実際これを聞くのは2回目だ。1回目は4月。入学式の日。その時も驚いたけど今ほどではない。全員いなかったからだろうか。
でも行事では生徒会の人たちはそれ以来見てない。個別では会ってしまってるけど。
意味ないかもしれないが耳を抑えながら前を向く。
興奮している人たちの手や頭であまり見えないが生徒会と風紀の人たちが全員登場したらしい。そんな感じのアナウンスが会場に流れた。
でも興奮しすぎておそらく大半の生徒が聞いてないけれど。
(・・・会長様がお話するらしいぞ~)
なんだ。お話って。何の話だ。急に。
・・・どうしてさっきから嫌な予感しかしないんだろう。
その会長様がすっと右手を上にあげた。
一瞬して会場に静けさが戻ってくる。
(すごいな会長。アナウンスいらないじゃん)
アナウンスの人不憫。
・・・あれ?
しかしその静けさで会場が見えてきて気づく。あのスラリとした見慣れた長身。立ち姿。・・・なんであそこに?
「・・・リューネ。アカシアとアリスが見える気がします」
呆然と呟くように言う椎菜に、リューネが不思議そうに答えた。
否、当たり前のように答えた。
「・・・そりゃいるでしょ~。生徒会メンバーなんだから。」
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・・・・・・・・・・はい?
(え。どうしよう。意味がわからない)
混乱。混乱。混乱。
あの二人から椎菜らが見えるわけはないが視線が合ってる気がする。見つめられてる視線の感じる。椎菜からもサイズは米粒ほどで表情も見えないが、なんだかあのふたりは絶対笑ってる気がする。
まるで仕掛けた罠に嵌った時のように。
あのいたずらっ子そうな楽しげな笑でケラケラと。
「驚いた?」
・・・なんだかそんなことを言っている気がする。
もうすぐ2章です~(。・ ω<)ゞ
ふぅ・・・。