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01 前世侍女、の私

また手直しすると思いますけど、とりあえず投稿します。

やっと書けたー(´Д` )

季節は春。

とある少女が長い廊下を何冊かの本を手に歩いていた。低い身長をピンと伸ばし姿勢正しく歩いているが、華奢な体つきをしているからか、少し頼りなく見える。肩まである黒髪が動きに合わせて揺れて、前髪を止めている紫色の小さな花のピン止めが見える。



少女ーーー蒼多椎菜アオタシイナは思っていた。


否、叫んでいた、心の中で。

(危なかった!!もう少しで会ってしまうとこだったんじゃないか?)

廊下でなかったら叫んでいる所だ。


(来るんじゃなかった、こんな学園)

面倒臭い。非常に面倒臭い。


この全寮制の学園に通う大半の生徒達の殆どが上流階級の「やんごとなき」身分の家庭を持っている。女優、俳優、画家、有名メーカ店などの著名人を親に持っているのは当たり前で、中にはどこぞの御曹司や、正真正銘のお貴族様までもが通う、いわゆる「超」お金持ち学園である。

特に生徒会メンバーや風紀のメンバーなどの学園の中心的な役割を持った生徒達は、その中でもトップクラスであり、学園の教師までも逆らえない家柄を持っていたりする。

ついでに言うと、椎菜の親は一応著名人ではあるが家柄・財力を誇るこの学園からすれば、一般市民とそう変わらない。父親は少し名の売れた小説家であり、母親は母親曰く「ちょっとした名家だけど、離縁されたから関係ないわ」と言っていた。この学園に入学したのだって、彼らとお近づきになる為ではなく、とある教授の興味深い講義を受けてみたかったからである。その為、コネで入学したわけではなく正真正銘の努力の賜物である。



(正直、面倒そうだ。関わりたくない。)

どこまでも高いプライドを持ってそう。

ファンクラブまで存在するような彼らを見た時のあくまでも印象ではあるが、普通に生活していて関わることもないだろうと高を括ってたのが悪かった。


今日だってその教授の講義資料の調べ物をしたくて、図書館まで足を運んだ。

ただ、普段使う第一図書館でなく第三図書館にまで足を運んだのが悪かった。

見つけたのだ。最も関わりたくない彼を。


古びた本が並ぶ隙間から見えた、黄金色に輝く髪にアイスブルーの瞳。

その整った顔立ちには非の打ち所が無く、どこか気品を感じる。長身な体を窓辺にゆったり寄りかけて本を読む様はどこかの王子様かと思ったほど。

(そりゃそうか。本物のお貴族様だもんな。かっこいい、かっこい。)

アルベリク・フェシリーノ・ヴァン・スイシェトリア、なんて長ったらしい名前を持つ椎菜より歳が二つ離れた彼は、正真正銘のお貴族様の跡取り息子であり、この学園の生徒会長様でもある。

(ただ、眺めてるだけに限るね。)

そんな面倒そうな背景を持った奴になんて、間違ってもお近づきになんてなりたくない。

ーーー椎菜は常々そう思っていた為、残りの資料は明日にでも探そうと思いその場を離れようとして足を動かした時だった。

『姫様』


唐突に声が聞こえ、足を止める。

明るく楽しげな様子の若い女の子の声だった。

聞き覚えのあるような声だと思って、声のした方を向かなければ良かった。

(聞き覚えがあるはずだ。)

そこにいたのは自分。否、今の自分よりも少しだけ幼い椎菜の姿だった。

しかし、格好がおかしい。漆黒のロングスカートに質素な黄色がかった白い布を腰に巻きつけ、髪は白く細長い布を使って束ねていた。生まれてから一度もこんな可笑しな格好した事がない。

しかし、訳が分からくて首を捻ったのは一瞬だった。

『そんな所で何しているの、シーナ。』


凛とした優しげな声が聞こえた瞬間、椎菜の中に見えた映像があったからだ。

黄金色の髪をふわりと靡かせ、アイスブルーの瞳で優しげに微笑み佇む人。確か、自分はその女性に〝シーナ”と呼ばれ、身の回りの世話をしていたような。

まるで、どこか外国のお貴族風のドラマのワンシーンのようだったが、画面越しよりも、より鮮明に身近に見えたそれは、まるで記憶の一部のように思え混乱する。

(・・・生まれる前の記憶とか?いやいやいや、まさか!ないないない!)

そんな非日常的な事が起こった為、私は目の前の存在をすっかり忘れていた。


「・・・誰だか知らないけど、そんな所で何しているのかな。」

(あ、やば。完全に忘れてた。)

パタンと本が閉じられた音がして、記憶の声と混ざり合うような凛としているけど冷たい声がした瞬間、私は止まっていた足を急いで動かした。

(何だか分からんが、やっぱり面倒そう!関わりたくはない!)

図書館から出た瞬間走り出し、もうすぐ5限目が始まる教室に向かう。


目立たずに静かに過ごしたいと思って一心不乱に振り向かずに私は走っていた。

だから、気づかなかった。窓からそんな私の姿を嬉しそうに愛しそうに見るアイスブルーの瞳に。


「・・・やっと、見つけた。」

そんな呟きをこぼした事も。

この出来事が私の学園生活を非日常へ変えたきっかけだった事さえもーーーーーー





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