表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

18 雨宿り、と私。

「どうそ。」


温まるからね、そう言われて出され甘い香りが室内に広がった。

外の雨足はどんどん激しくなりよく響く。

季節的には寒くはないが暖かな飲み物はどこかホッしたのでありがたく飲もうと手を伸ばした時に隣に座ったアカシアがむすっとどこか不機嫌な声を出して話しかる。


「どうも。何故こんなところにあなたがいるんですか?」


話しかけられた相手は何故かその問に目を細めた。そしてクスリ、笑をこぼす。


「何故って。また雨宿りにくるお嬢さんがいるかなって。」


・・・ニコニコ笑いながら話すそれは椎菜に向かって言った内容だろう。

何か言おうとするも、しかしどこか緊張を含むアカシアとアキス、二人の様子に口をつぐむ。基本誰にでも同じ態度のアカシアの今の態度にも驚く。



基本どこの年代の方?みたいな喋り方のアカシア。

どんな相手でも、それが年上年下相手関係なく、態度は基本失礼。

猫のように警戒心が強い双子、それは特にアカシアの方がより強い。椎菜はそう思っている。


(敬語、初めて聞いた気がする)


・・・もしかして知り合いなのだろうか?

こくり。

出された飲み物を一口。


あ、美味しい。そう思ったのが表情に出たのだろうか、出した本人はニッコリとそれは美しく微笑んだ。


「・・・美味しいです。」


『きちんと思ったことは言わなければその方に失礼ですよ』

それは椎菜のおばにあたる人が言った言葉である。

ふんわりと朗らかに笑うのんびりとした、その人がどこか厳しく言ったその一言は椎菜はよく覚えている。だから椎菜もきちんと口に出していうようにしているのだ。


「ありがとう。椎菜ちゃんはいつも美味しそうに飲んでくれるので嬉しいね」

「美味しいです。」


まだあるからね、そう言ってのんびりと微笑む。

室内の照明は一つのみで、それもどこかぼんやりとついている程度。

けれどオレンジっぽい光はどこか和ませる。


しかし、あまり長居はできない場所だろう。

よし今だ。早速本題に入ろう。

アカシアとアキスは何か考えているような難しい顔で眉間にしわを寄せてこちらを見てはいるが、黙ってはいる。


「おじさん。実は寮の前に咲く花の事で・・・」


そう言った途端に黙ったままだった二人が驚いた顔でこちらを見てきた。

(何なんだいったい)


「おじさん?そう・・・呼んでいるのかい椎菜?」

「おじ・・・とは、この方のことですか」


他に誰がいるって言うんだ。そう思ってこくりと頷いて二人の方を向く。


「なんでおじ・・・いや、そう呼んでいるの?」

「・・・え?合った時からそう呼んでましたけどダメですか?」


おじさんはおじ・・・そういえば名前は何ていうんだろうか。

何回かおじゃましてはいるけれど、どれも雨宿り目的だったりする(あと飲み物)為、名前を聞くのをつい忘れていた。

考えていた事がアカシアには伝わってしまたのか、ぶふっと全く可愛くない笑い声が響く。


「つまり雰囲気!!」

「・・・・・・」


雰囲気でおじさんかい!そう言いながら笑い転げるアカシアと肩を震わせてるアキス。

(なにこれ)

しかも、当人のそのおじさん、なんだか怖いのですが。

笑ってるのに笑ってないような・・・

楽しそうだねぇ、その一言にびくりとしたのは私だけですか。


ごまかすように、飲み物に手を伸ばし続ける椎菜のコップをようやく笑いが治まったのかアカシアが取り上げた。


「これ椎菜。夕飯食べられなくなるよ。」

「・・・そこまで飲んでません。」


子供扱いか。と少しムスっとなると、アカシアは何故か楽しそうに笑い出す。


「心配で言ってるんだろ。ほらそろそろ帰ろうか。」


そうですね、と同意したアキスもアカシアと同じように席を立つ。

確かに外を見れば雨の音は少し静かになり、空も薄暗くなってきたようで照明が一つしかないこの部屋も先ほどよりどこか暗くなってきた。


(あまり長居しても迷惑かな・・・)


そう思って椎菜も同じように席を立つ。


「飲み物美味しかったです。ありがとうございます。」

「いいえ・・・また来てね。」


ニッコリとまた、それは美しく微笑んだ。


「飲み物全部飲めなくてすいません。また来ますね・・・おじさん?」


そう言いながら、楽しそうに目を細めたアカシアに室内の照明が先ほどより暗く重く感じたのは気のせいだと思いたい。




寮に帰る帰り道で私のさしていいる傘に見覚えがないことに気づいたアカシアに聞かれて、小屋で待ち合わせる前にあったこ事を話せば、また機嫌が悪くなった。

(なんでだ・・・)

猫の機嫌は難しい。。






ああ、おじさん名前せなかった・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ