17 清掃用務員、と私。
たいとる、そのままだ∑(゜Д゜)
短いです。
「・・・こんなトコよく見つけたね。椎菜。」
少し呆れたような声音が隣から聞こえてきて、確かにと心の中で同意する。
目の前にあるのは質素で小さな木の小屋だった。まるでおとぎ話に出てくるようなレトロな佇まいでちょこんと建てられている。小屋の近くには切った木材がきれいに積んである
。
「・・・事務員の方達が休憩所のような形で自分達で建てられたようです。木でない所もあります。」
「・・・もしかして行ったみたのかい?」
「はい。興味本位で見てきました。」
「・・・気になる気持ちは分かるけどね」
クスリと笑いながら言うその声に少し不機嫌そうな声が重なった。
「・・・そもそも何故あんたがここに居るんだい。」
すでに機嫌が悪いアカシアがじろりと睨むように椎菜の隣の少年、アキスに声をかけた。しかし対してあまり気にしてなさそうな、どうでもよさそうな雰囲気で、たまたまですよと答えた。
(嘘っぽいなぁ・・・)
アキス自身の飄々としたその雰囲気がそう思わせるのか。
椎菜が抱いた事はアカシアも同様に感じたようだった。どこか、うろんな表情でアキスを見る。
「さっきも言ったでしょ。たまたま、偶然だって。」
「たまたま偶然にこんな所で合うわけないだろう」
「それってなんだか運命的だね。椎菜。」
「・・・」
「どこがかねぇ。ストーカーぽくないかい?」
「わあ、人聞きが悪い。」
どこから突っ込めばいいのか。
・・・いや別に突っ込む必要はないか。
ちなみに二人は終始、笑顔で会話をしている。お互いから漂うものはどこか殺伐としているが。
実は椎菜も疑問には思っていた。
アカシアとの待ち合わせ場所に急いで向かっていた、その場所に何故かアカシアとともに立っていたのである。その時もアカシアはどこかうろんな目で彼を見ていた。
「目的はここでしょ。とりあえず入らない?」
アキスが上を見上げながら言う。雨はまだ止みそうにない。
それどころか雨足がだんだん強くなってきたような。
確かに室内に避難し入ったほうがよさそうだ。アカシアもそれには同意のようで無言で了承の意を表す。
椎菜も同意見である。
じゃあ、とノックしようと手を出した時である。
「やっぱり椎菜ちゃんだ。」
のんびりとした声が声が背後から聞こえたのは。
・・・朗らかで暖かなこの声が椎菜はなんだか好きで何回かここに足を運んだのはまた別の話であろう。
「・・・また雨宿り?」
「あ、はい。すいませんがお願い致します。」
「・・・あはは。ご丁寧に。えっと・・・お友達?イケメンだね。」
「ありがとうございます?」
「いえいえ。・・・お友達も良かったらどうぞ。」
ニコニコ笑いながら傘をたたみ小屋へと入っていく。
ちらりと確認すれば二人にしては珍しくポカンと呆気に取られた顔をしている。イケメンだね、と言った彼こそイケメンである。いや美丈夫といっても良い。
黄金の髪にアイスブルーの瞳。
長身でがっしりとしてはいるがけして筋肉質ではなく意外と細身な体型。さらりと流れる黄金の髪をひとつに結び横に流し、彼はアイスブルーの瞳を優しげに細めニッコリと微笑んでいた。
・・・青色のどこにでもありそうな変哲のないつなぎがどこか色っぽく見えるのは、やはりおかしい。
(なんだか色っぽいんだよね。気品があるっていうか。)
いやフェロモンなのか。
・・・いつ見てもやっぱり掃除のおじさん。・・・いや清掃用務員という仕事についているようには見えないんだけど。
何回かあって慣れたが気安さの中に優雅さが見えるこのどこか謎の美丈夫用務員に初めて会った時は椎菜も同じく呆気にとられたのだ。
「風邪を引いてしまうから早く入りなさい。」
ニッコリと笑いながらどこか楽しそうにホラホラと手招きする様子に、慌てて中に入った椎菜たちであった。