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13 寝起き、と私。

ゆらゆら。

誰かに体を揺すられている。誰だろう、いや、おそらくアカシアかリューネだと思うんだけど。


『ほら、起きてってば。シーナ』


・・・その少し控えめな喋り方はリューネかな。

いや、でも眠い。なんだか昨日は色々あって。

まだまだ寝ていたいと手を上げて抗議すれば、まったくもう、という声がする。 


ゆらゆら

ゆらゆら

また揺らされて声がする。耳の近くで、すぅ息を吸う音が聞こえた。


(・・・嫌な予感)


反射的に目をつむってタオルケットをぎゅうっと握りしめてーーー


『シィーーーーナ!!また侍女長に怒られるよぉ!』


(いや、誰。侍女長って。)


そもそもそんな役割の人間今の時代で聞いた事ない。

ドカン、と耳に響いた大音量なセリフが意味不明過ぎて冷静に心の中で突っ込む。

椎菜自身が寝ぼけていたせいか今更名前が”シーナ”呼びであったことに気づき、うっすらと目を開けてみる。

茶色の猫みたいにくるりとした瞳に鼻から頬にかけてある愛嬌のあるそばかす。


(その顔はリューネ・・・だよね?!)

しかしその格好に見覚えはない。・・・いや、最近ではある。

こげ茶色の髪にいくつかのピンで止めてお団子を作り、薄茶のワンピースに腰元には白い大きな布がぐるりと巻きついている。


(どうなってんのかな。また眠ったら夢だったことにならないかな・・・)

悪化していないだろうか。この現象。

もう一度寝直してみようか。

カチャリ、ドアの開く音がして目を向ければいつもどおり制服を着たリューネが見えた。


「あ、起きたね。おはよう。椎菜が最後なのは珍しいね。」

「本物ですか」

「・・・何の話?」


眉を下げて困った顔をする彼女に、椎菜はとりあえず朝の挨拶を返す。

そして同じように彼女のベッドの前にいるリューネ(に似ている誰か)も彼女も同じように困った顔をして笑った。


(あーどうしよう。訳が分からない・・・)


そもそも朝である。難しい状況の判断などするには少々頭が働かず、椎菜は握っていたタオルケットの上にボフン、と頭を預けてうつ伏せになった。

そのまま、窓の外を見てみれば少し曇っているように見える。

また今日も降り出すのかもしれない。天気模様に釣られてなんだかどんよりと気分が下がったところでリューネが椎菜のそばにしゃがみこんで頭を撫でてくる。


「どうしたの?やっぱ気分わるい?」


少し心配そうな声音に慌てて返事を返そうとした時バタバタとなんだか賑やかな足音が近づいてきた。



「椎菜ちゃん、起きたって聞きました!大丈夫ですか!?椎名ちゃん!」

「今日は休ませよう!私が看病するからね」

「・・・落ち着いてね二人共。結構早朝なんだから。それにもし看病するなら私がするから。」


アリス、アカシア、リューネ。

三人とは同じ学年であり、同い年である。

・・・もし、休むなら看病は不在でひとりで休んだほうが絶対休めそうである。


「・・・大丈夫です。心配かけてすいません。具合も悪くないです。」

「本当ですか?でも昨日から様子が変ですよ、椎菜ちゃん。」

「それは・・・昨日は・・・そのお腹」

「痛いんですか?やっぱ具合でも」

「いえ!その、空いてたんです!」

「ええ?」

「空腹だったからって。何だか可愛いねえ。」

「そうね。そうだったのね。じゃあ、今すぐ朝ごはん作ってくるから!・・・それまで待てる?」


(うう・・・何だか屈辱的)

苦し紛れの言い訳でも、もっと何かあったのでは。

そして3人ともそんなにすんなり信じなくても。


ちらり。


そして思ったとおり、昨日見かけた銀髪美少年の幽霊はアカシアとアリスの横にいた。


(・・・笑ってる?)


そして何だか笑ってる、とても楽しげに。

その表情に何故だか込み上げてきた懐かしさに一人首をひねった。


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