第一話 推しと転生
書いてみたくなり書きました。
いろんな感想待ってます。
面白いと言う声がおおければ続きを書いていきたいと思っています。
「……あれ」
最初に感じたのは、光だった。
視界が白に塗りつぶされていく。
音も、感覚も、少しずつ遠のいていく。
最後に残ったのは、ひとつの“願い”だった。
――彼女を、幸せにしたい。
それだけだった。
次の瞬間、世界が切り替わる。
「おい、起きろ」
誰かの声。
冷たい空気。
木の机の匂い。
目を開けると、そこは教室だった。
「……え?」
思考が追いつかない。
さっきまで確かに“光の中”にいたはずだ。
なのに今は、普通の学校の教室。
ただ一つ違うのは――
見覚えが“ありすぎる”ことだった。
黒板の配置。
窓の外の景色。
教壇の位置。
そして、クラスの空気。
全部が一致している。
まるで――
「……いや、まさか」
喉が乾く。
心臓が一段階速くなる。
ここは。
ここは――
『君が好きだ』の世界だ。
頭の中で、確信が落ちた瞬間。
背中に冷たいものが走る。
これは偶然じゃない。
夢でもない。
記憶にある。
何度も読み返した。
何度も考えた。
“あの物語”の舞台。
しかも。
「まだ、始まってない……?」
黒板の日時。
クラスメイトの会話。
空気感。
全部が“序盤”。
単行本1巻の、最初の方。
つまり――
これから“あの展開”が始まる。
そのときだった。
「おはよう」
声がした。
反射的に振り向く。
そこにいたのは――
彼女だった。
西条さな。
息が止まる。
脳が一瞬で静かになる。
漫画の中で、何度も見た顔。
報われなかったヒロイン。
負けヒロイン。
それでも、ずっと好きだったキャラ。
その本人が――目の前にいる。
「えっと……大丈夫?」
彼女は少しだけ首をかしげる。
その仕草まで、記憶通りだ。
いや。
記憶よりも、ずっと“生きている”。
立体感がある。
体温がある。
現実だ。
「あなた、転校生?」
その言葉で、ようやく理解する。
ああ、そうか。
このタイミング。
ここは“初登場シーン”だ。
原作では、この出会いがすべての始まりになる。
そして彼女は――
負ける。
「……いや」
気づいた瞬間、口が勝手に動いた。
ダメだ。
それはダメだ。
ここに来た意味は一つしかない。
「俺が変える」
小さく、しかし確かにそう言った。
彼女を負けさせない。
その未来を壊す。
そう決めたはずだった。
「え? 変えるって……何を?」
当然、意味は伝わらない。
だが、それでいい。
今はまだ“物語の外側”だ。
この違和感に気づいているのは、たぶん自分だけ。
そのときだった。
教室のドアが開く。
空気が変わる。
ざわめきが生まれる。
主人公。
蔵土たいが。
来た。
本来ならここから“物語が始まる”。
ヒロインが出揃い、関係が動き出す。
そして――西条さなは。
負ける。
だから。
「……今度こそ」
僕は立ち上がる。
予定された展開を、壊すために。
だがその瞬間。
違和感が走った。
西条さなが、こっちを見ている。
原作と同じはずの視線。
なのに――少し違う。
まるで、最初から“知っている”ような目。
「……ねぇ」
彼女が小さく言う。
「あなた、さっきから変だよ?」
心臓が跳ねる。
違う。
このセリフは、原作にない。
その瞬間、理解する。
これはただの“転移”じゃない。
物語が――ズレている。
そして、彼女は続ける。
「私のこと、どこで知ってるの?」
世界が、音を立てて軋んだ。
(第1話 終)
僕は負けヒロインを好きになる事が多いんです
だから負けヒロインを勝たせたいと思いこの話を書こうと思いました。




