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この学校でのお昼は、購買か、カフェテリアか、もしくはランチバケットをもってくるかのいずれかだった。西洋の宮殿を思わせる広い校舎には、広い中庭や、ベンチも多く、お昼を仲のいい人と食べるなんてのは、当たり前の光景だ。
そして入学したての生徒は、例に漏れず、できたばかりの友達グループで、お昼を食べることがほとんどだ。
(いやぁ……友達作り損ねたな……)
声をかけられることはあっても、お昼を一緒に行動するというほどの友達はできていなかった。
確かに困った時に助け合える関係は、あるに越したことはないが、だからといって移動やお昼を一緒に食べるということに必要性を感じなかった私も悪い。
まだ、子供にはなりきれず、大人なままの精神が少し憎い。
(まあ、いっか)
そう思いながら、授業で使ったノートやテキストをカバンにしまって、食堂へと向かった。
***
購買のおいしそうなサンドウィッチを横目に、カフェテリアを積極的に使うようにしているのは、理由があるからだ。
(『マジカルハートラブリーライフ』のキャラクターもカフェテリアは使ってた気がするんだよね)
ゲームでは、ヒロイン視点で進むこともあって、どこでお昼食べる?みたいな展開に、"〇〇で食べたい"と、選択肢で選んでいた。だから、ヒロインとご飯を食べるようになる前からという視点では正直判断しがたいところではあるけど、よくこのセット頼む〜といったくだりがあった気がするので、カフェテリアにいてもおかしくはないはずなのだ。
(直接会うわけにはいかないけど、様子は見たい……)
そもそも面識もないのに会えるわけもない。と、そんな中思いついたのがカフェテリア作戦だった。
「ご注文は、いかがいたしますか?」
「ランチメニューAで」
「かしこまりました。おまちください」
はいよ!なんていうおばちゃんは、この世界の食堂には存在しない。さすがは国立魔法学校のカフェテリアといったところか。待っている間に、広いカフェテリアの中を見渡す。すでに食べたはじめている生徒グループも多く、がやがやとあらゆる会話が混ざり合っていた。
(やっぱり、見つけるのは……大変そうだな)
数千人規模の学校が保有するカフェテリアということもあり、広々としたスペース。ただ広いホールという感じでなく、植栽があったりと内装も凝った造りになっており、見通しもさほど良くはない。
唯一、カフェテリアの端がスキップフロアになっていて、ほかの席よりかは見やすいぐらいなもので、ここ数日は、そこに腰を据えて、黙々と観察しているが誰一人見かけることができていない。
(時間が悪いかもしれないし、場所が悪いかもしれないし、カフェテリアを使ってないのかもしれない……)
何が正しいかわからないなら、教室に突撃をかますべき……なのかもしれないが、そんな危険なことはしたくない。
よくあるフィクションでは、学校のヒーロー的存在って、キャーキャーいわれてわかりやすい気がするんだけど、どうやら、かなり密かに行われているようで、この学校の女子、いかにも淑女をきわめてて、声に出してきゃーとは言わないのも、その存在に気づけない要因となっている。
(なんて、非協力的なんだ)
そもそも協力してとも言ってないけど。
「お待たせしました」
そう言われて、ランチメニューAがクラシカルメイド服の綺麗なお姉さんから、どうぞ、と渡される。渡されたトレーを一度置いて、『マジカルカード』をかざして、支払いを済ませて、目的の席まで向かう。
『マジカルカード』は、要は交通系ICだ。中身の技術は魔法で構成されているらしいが、実際に使ってみると魔法感がなくて笑ってしまう。
ゲームのなかでは、ミニゲームでお金を集めて、何かしらのアイテムを手に入れることで、相手の好感度を上げるとかそんな物もあったので、マジカルカードに全財産が保持されていた。
(今は私のおこづかいだけだけど)
お昼と出歩くのに困らないぐらいの所持金。とはいえ、この世界ではお金持ちの部類にはいることもあって、日本国内の一般的お小遣いの額とは異なっているが、ありがたく使わせてもらっている。
(あれ……)
様子をうかがうためにキョロキョロしながらも、迷わず目的の席まで歩いてきた。カフェテリアの奥の、その奥、数席あるうちの一つ、座っている人物に見覚えがある。
(あれって……確か……)
古代魔術が好きで、ヒロインが魔術を使ったことを機に興味を持って近づく人だ……。
この世界では珍しい髪色の目立つ銀髪を、目立ちたくないからという理由で、魔法で黒髪に染めている……はず。
(こんなところで見つけるとは)
思わず、その光景に立ち尽くしてしまった。だって彼は、カフェテリアに来るような人物ではなかったはずだからだ。




