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――太古の魔術を呼び出した張本人が一番悪いのでは?


うーん、と唸りながら、図書館の中を歩く。


そもそも、そんな太古の魔術が記されている本がそうやすやすと見つかるわけもなく、かといって人に聞けるわけもなく、しらみ潰しに本棚の本を手にとっては返していく。


(こういうとき、検索端末があったらなあ……)


現代社会の技術の偉大さを感じながら、ないものは仕方ないと、割り切ってまた本を手にとる。


(止めるわけじゃない。でも、情報が欲しい)


公式ガイドブックを買ったら、魔術のあたりはこだわりにこだわったのか、やたら細かい設定が書いてあったような気がするけど、そんな設定は覚えてない。ガイドブックは、いつか読むための鈍器となるのが、私の人生だった。


(しかし、見つからないな……)


入学して3日目、ちょっとずつ学校に慣れつつある空気の中、放課後の時間を使って図書館を歩き回るのは、1日目。すぐには探し物は見つからない――。


「あら、あなたも図書館にいらしたのですか?」


通路のほうから声をかけられ、そちらに視線を移すと、声をかけてきたのは、同じクラスのアンナ・アクランドだった。ヒロインの友達という印象を頭の片隅に、心のなかで発した(げっ……)という言葉が、音声になって口から漏れ出なくてよかったと心から思った。


「こ、こんにちは……」

「こんな時期に、図書館をうろちょろしてるなんて、私ぐらいだと思ってました」


図書館と言ったら、そう試験前のたまり場になりがちで、この時期は人がまばらだ。少なくとも、入学してそんなに日が経っていないこともあり、同学年の人たちは、図書館に足を運ぶよりも、友達作りやサークル見学に忙しい。ここにいることに不審がられても、それは、しょうがない。


「本が好きなんですか?」

「いや!……そうではなく、その、探し物を」

「こんな、入学早々?」

「まあ、そう……ですね」

「どんな探し物を?」

「れ……歴史、のような?」

「歴史……ですか。素敵ですわね」


めっちゃ問い詰めてくるな……。そもそも、アンナは情報通であり、頭がいいこともあって、ヒロインのサポート役(訂正、友人)としてはとても有能だったわけだが、なるほど、こうやって、攻略対象となる彼らのことも情報収集をしてたのか。


「気になったら、いてもたってもいられなくて」

「見つかるといいですね。」

「……ですね」


一瞬、静寂が訪れる。

アンナさんに聞くのも、積極的に話しかけるのも、なんだか憚られる。続く言葉が見つからず、じっと、見つめてくる彼女の表情から、何を読み取るべきなのか、頭の中を思考が巡る。


「では……私はこちらを借りますので、また明日」

「あ……また明日」


私が答えを出すより先に、彼女が言い放ち、本を何冊か抱えながら、貸し出しの方へとスタスタ歩いていった。

その姿を見送って、足音も遠くなると、一気に身体が脱力する。


「ふぅ……」


17歳におびえる社会人の構図なんて、みたくなかった、なりたくなかった。怖い子ではないんだけど、メガネの奥で強く刺してくる視線が、どうにも探られているような気がして、身体が緊張せずにはいられなかった。


(あいさつするような仲でさえ避けたかったのに……)


同じクラスで、避けるというのはなかなかに難しい。

いや、情報が欲しいなら、アンナと仲良くなるべきなのかもしれない。


(……それは、最終手段で)


うん、と自分の考えに頷いてから、数秒。

そびえ立つ本棚を改めて見ながら、少し考える。


(目当ての本は見つからずとも、せめて、歴史の本ぐらいは借りてみよう)


先ほど彼女に伝えた歴史という言葉を振り返りながら、しらみつぶしに見ていくよりも効率がいいような気がした。魔術に関する書籍を見てたけど、歴史のほうが分かりやすいし、冊数も少ないはずだ。


(太古という言うくらいだ、何かしら糸口が見つかったっておかしくはない。)

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