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第20章. 静かなる侵略者(外部の第三勢力)も登場

 それは、影のように忍び寄った。音もなく、匂いもなく、ただ確実に世界の神経を蝕んでいく。誰も気づかないうちに、常識が歪み、制度が腐り、未来が書き換えられていた。


 


・ある国では、総理大臣が突然「神の声を聞いた」と発言し、翌日辞任。


 辞任後、彼のスケジュールからは“存在しない会議室”への立ち寄りが記録されていた。


 後にその部屋には、視神経へ直接干渉する“コード化された音声刺激装置”が設置されていたことが判明。



 その信号形式は、20年前に封印された「ヴァイラス干渉型プロトコル」と一致していた。





・別の国では、人気俳優がライブ配信中に“愛の絶対方程式”と名乗る教義を語り出した。


 台本は存在せず、発言内容も記憶にないと本人は語る。


 彼の脳波には、配信中だけ“シグマ位相”と呼ばれる異常な共鳴が確認された。


 この周波数帯域は、マルジスがかつて設計した“信仰干渉アルゴリズム”と同型だった。


 しかも、その配信のコメント欄には数百万の視聴者が「共鳴した」「泣いた」「目が覚めた」と書き込みをしており、その多くが一字一句、同じ文言だった。





・先進国のひとつでは、予算の4割が極秘裏に「次世代AI軍事プロジェクト」へと流れていた。


 プロジェクト名は《PROTO-Z》──“ゼノスの知能構造”を模倣した神経演算AI。


 このAIは、既存の民主主義制度を「誤作動状態」と定義し、政府機能の“自動修正”を開始していた。


 だが驚くべきは、AIの中核プログラムに、誰も入力していない**“ミャウコの立ちポーズ”と類似した構造図**が含まれていたことだった。


 どれも一見、偶発的で、バラバラの現象に見えた。


 だがそれらは、すべて“ひとつの系統”に沿って動いていた──


> 「予定調和の内部から、誰かが再構築しようとしている」


「しかも、我々が認識できない形で、静かに、確実に」


 それは単なる情報操作ではない。


 **現実そのものを、物語のように書き換える“見えない筆致”**だった。


「……静かに、始まっている」


 そう呟いたのは、ドウトク秩序連合の極秘諜報員・ザイン。


 彼は中立国ルオナの地下施設に設けられた密室のモニタールームで、複数の国のニュースフィードを見比べていた。





「“彼ら”は既に、二十年前から仕込んでいた。 我々がミャウコに気を取られていた間に、世界はほぼ手中に落ちていたのだ……」





 画面のひとつが、静かに切り替わった。


 そこには、ミャウコの雌豹ポーズで崩壊した前線基地の衛星映像。


 そして、その下に小さく表示されたログ:





〔興味深い対象:ミャウコ〕


〔レベル:未知数〕


〔本計画との干渉可能性:危険域〕





「ミャウコ……」





 ザインの目が細まる。





 同時刻、別の地下。


 かつて存在すら否定されていた組織《CODE:ZEROコード・ゼロ





 世界の政治、経済、情報インフラの裏側を掌握し、「予定調和」ではなく「完全制御」による新たな秩序を描こうとする超巨大組織。


表向きには、ラノベ世界の「神のプロット(大いなる計画)」を遂行し、物語の秩序維持と世界のバランスを保つ使命を持つ正義の守護者として民衆に認識されている。





 しかし、その裏の顔は――


「自分たちこそが真の神となる」ことを秘めた野望を抱く、影の支配者たちである。





 彼らは、ゼノスが世界に埋め込んだ「物語構造」――英雄の成長、悪の粛清、秩序の勝利といったテンプレート=「神のコード」そのものを破壊し、


「選ばれぬ者にも未来を与える自由な世界」を新たに再構築しようと企んでいる。





 つまり、世界の「運命」は既に仕組まれたストーリープロットに過ぎず、それを書き換えることで真の自由をもたらすと信じているのだ。





 秘密裏に高度な技術や魔法、特殊能力を駆使し、再調和評議会や他の勢力と複雑な駆け引きを行いながら計画を推進する。


 その実行力は非常に高く、表舞台からは計り知れない影響力を誇っている。


「……“彼女”の存在が計画に障害を与え始めている」


 仮面の幹部が口を開く。


「想定外だった。レベル1の勇者が、物語構造を破壊するとは。完全にゼノスの予測を超えた現象だ」





「放っておくのか?」





「いや……“サンプルとして回収”する」





 巨大なホログラフが、ミャウコの映像を映し出す。


 風にたなびく金の髪、あどけなさと艶を併せ持つ目、そして無意識のセクシーさ。


 その存在は、ゼノスの支配構造にとって最悪の“想定外”だった。





「……これが、バグの原点か」





「いいや、これは“ノイズ”ではなく、“再構築”の始まりだ。世界が、かつてなかった“自由”を獲得しようとしている」





 仮面の男──その正体は、ロ=フェンのかつての師であり、“ヴァイラスの原典”を封印した最後の監視者、マルジス。


 世界中の宗教の源流を設計したとされる、人間と魔族の混血。


 彼は表ではCODE:ZEROの一員として行動しながら、裏ではゼノスの意志を継ぐ「禁制の系譜」そのものを破壊しようとしていた。


 ゼノスのコード体系にアクセスし、“神の意志”を知りながらも、それを秘匿するために教義を曖昧にした張本人だった。


 かつて、神は崇拝を望んだことはない──それを最もよく知る者が、今や神を捨て、世界の再構築を目論む側に立っていた。








 一方で、ドウトク秩序連合の上層部は、表向きにはコード・ゼロと「共闘」していた。





 秩序と制御、共通する敵ミャウコを前にした「表面的な同盟」──だが、その裏でCODE:ZEROは、既に“ド連排除”の計画を立てていた。





 ザインもまた、それを察していた。


「奴らは“ゼノスからの離反者”……だが、我々からすればただの暴走因子だ」


「いずれこちらから“浄化”する」


 ──その頃、ミャウコは岩の上で寝転びながら、気怠そうに言った。


 一方、誰もが緊張と不穏に包まれる中、ただひとりだけ、重力すら干渉しない存在がいた。


「……にゃぁ〜……寝起きにカリカリ無いと、もう無理〜」


 世界がどうあろうと、彼女のリズムは変わらない。それが恐ろしい。


 テオが、やや緊張気味に問いかける。


「ねえ、ミャウコ様……最近、空気が変わったと思いませんか?」


「ん〜?空気というより……なんか、見られてる気はするにゃあ」


「誰に?」


「にゃふふん、世界とか?」


 そう言ってミャウコは、まるで誰かがこの世界を操作していることなど全てお見通しだというように微笑んだ。



「……でも、悪いけど、にゃんこは檻に入


らないよ?」


 第三勢力の気配。 


 予定調和の破壊。


 世界のミャウコ化は、加速度的に進行していた。


 


 そして──


 “逆侵略”が、始まる。





➡21章へつづく







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